カーゴニュース 2024年5月23日 第5244号
日本ロジスティクスシステム協会(JILS、大橋徹二会長)はこのほど、2023年度の物流コストの調査結果を公表した。それによると、23年度調査(実績は主に22年度)の荷主企業の売上高物流コスト比率(全業種平均)は5・00%となり、前年度(5・31%)から0・31 pt減少。2年連続で減少したものの、4年連続で5%台を維持した〈図①〉。JILSでは減少の要因を「物流単価は上昇傾向にあるものの、それ以上に物流量に対する売上高の伸びが大きい」と指摘。物価上昇の速度と比較して、物流事業者から荷主企業への価格転嫁が追いついていない可能性があると分析している。
同調査は、昨年6~10月にかけてアンケートを実施し、計208社から有効回答を得た。同一サンプルによる比較が可能な2年連続回答企業(141社)の売上高物流コスト比率は5・28%で、前年度比0・15 ptの減少となった。
業種別物流コストは小売業以外で減少
売上高物流コストを業種別で見ると、製造業は5・16%(前年度比0・18pt減)で微減。非製造業では小売業が5・32%(1・81 pt増)と増加したものの、卸売業が4・13%(1・58 pt減)と減少に転じ、その他非製造業も5・42%(0・29 pt減)に減少した。
全業種の物流コストの物流機能別構成比は、輸送費が57・6%、保管費が16・4%、その他(包装費、荷役費、物流管理費)が26・0%。このうち、輸送費の割合を業種大分類別で見ると、製造業で62・1%、卸売業で43・2%、小売業で49・7%だった。
また、全業種の物流コストの支払形態別構成比は支払物流費(自家物流費以外の合計)が86・2%、自家物流費が13・8%。支払物流費の占める割合を業種別で見ると、製造業では89・4%、卸売業では73・1%、小売業では88・1%だった。
物流施策の実施状況における「物流コスト適正化への効果が大きかった施策」では、「輸配送改善(積載率向上、混載化、帰り便の利用、コンテナラウンドユース、エコドライブなど)」が最多で、「在庫削減」「保管改善(保管の効率化、ロケーションの見直しなど)」「輸配送経路の見直し」「配送頻度の見直し」「物流の共同化」の順に続いた。
荷主の9割が値上げ要請に「応じた」
物流事業者からの値上げ要請の有無では、回答企業166社のうち、144社(86・7%)が「要請を受けた」と回答。値上げを要請された主なコストの種類では、「輸送費」が134社で最多となり、「荷役費」(68社)、「保管費」(66社)、「包装費」(60社)と続いた。要請を受けた企業の比率は22年度調査時と比べて10・5pt増加しており、「2024年問題」を背景に値上げ要請の動きがますます進んでいる。
また、値上げ要請を受けた企業のうち、133社(92・4%)が「応じた」と回答〈図②〉。22年度調査と比較して2・8 pt減少した。要請に応じたコストの種類では「輸送費」が122社で最多。次いで、「荷役費」(59社)、「包装費」(58社)、「保管費」(53社)の順となった。
このほか、アンケートでは外部環境変化に関連した課題への対応状況についても調査した。「物流コスト上昇分の価格転嫁」については、回答した159社のうち、「少し対応できた」が51・5%と半数を占め、「対応できた」(25・2%)と合わせて7割強の企業が価格転嫁に踏み切っている。また、「労働力不足対応のためのDX等の推進」については、回答した161社のうち、「少し対応できた」が46・6%で最も多かったものの、「未対応」も44・7%でほぼ同率となった。
さらに、「アフターコロナに向けたビジネスモデルの転換」では、回答した143社中、「未対応」が53・1%で過半数を占めた。このほか、「混乱するグローバルサプライチェーンへの対応」については、回答した137社のうち、「未対応」が41・6%で最多。「少し対応できた」が35・8%だった。
8割強の荷主が「24年問題」の対応進める
併せて、物流危機に関わる取り組みについても調査を実施。トラック輸送の生産性向上や働きやすい労働環境の実現に取り組む「ホワイト物流」推進運動を「知っている」と答えた企業は回答企業195社中182社(93・3%)となり関心の高さがうかがえた。参加予定の有無では「参加済」が88社(45・8%)で最も多く、次いで「検討中」が54社(28・1%)だった。
さらに、「2024年問題」を知っているかという質問では、回答した194社の全社が「知っている」と回答。対応状況については168社(87・0%)が「進められている」と答えており、多くの荷主企業から物流改善への積極的な姿勢がうかがえた。
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