カーゴニュース 2025年4月22日 第5333号
全日本トラック協会(坂本克己会長)を中心に議員立法により今国会での成立を目指す貨物自動車運送事業法の一部改正案の概要が判明した。5年ごとの事業許可更新制の導入により悪質な事業者を排除するとともに、運賃・料金水準を向上させるため、「標準的な運賃」制度に代わるものとして「適正原価」の告示制度を創設し、義務化する案を提示。改正法案の概要は労組側も賛同していることから、全会一致の可決・成立を目指す。
「適正原価」を国が定め「標準的運賃」は廃止へ
16日に開催された立憲民主党の国土交通部門会議に全ト協の坂本会長ら幹部が出席し、改正法の要綱案を説明した。
坂本会長は、これまでの貨物自動車運送事業法の改正を振り返り「2018年に議員立法で改正し、荷主対策の強化や標準的運賃制度が実現した。昨年は内閣法による改正で多重下請構造を是正する施策が盛り込まれた。今回、再び議員立法により、事業者自らが進んで適正な事業環境をつくるための法改正を行うことになる。業界をより良くし、ドライバーの賃金を引き上げるため、適切な国会審議を行っていただきたい」と要望した。
主要な改正点は、①事業許可の更新制導入②「適正原価」を下回る運賃・料金の制限③委託次数の制限④ドライバーの適切な処遇の確保⑤違法な「白トラ」を利用する荷主などの取り締まり――の5項目〈表〉。併せて、改正法の実施体制の整備に向け、政府主催による「物流政策推進会議」を設置し、更新実務や事業適正化を実施する体制を整備することを検討する。実施団体のあり方は、同会議の議論によるが、一案として独立行政法人の設立を想定している。
全ト協が3月に提示した改正法案の骨子では、取引環境改善策として「トラック事業者が標準的運賃を収受できる法的根拠の付与」を検討していた。検討の過程で現行の「標準的運賃」は適正な運賃収受のための基準となる額であり、一定の強制力を持たせることは法制的に困難との結論に至った。そこで、建設業では法令により建設工事を請け負う際には通常必要と認められる原価に満たない金額の請負契約を締結することを禁止していることを参考にして、トラック運送に適用することとし、今回発表された要綱案では修正を施した。事業継続を担保する「適正原価」を国が定め、告示する制度を創設し、「標準的運賃」は廃止する方向性が示された。
適正運賃収受へ「標準的運賃」より高い実効性
貨物自動車運送事業法に基づく「標準的運賃」制度の趣旨は、トラック事業者が荷主との交渉を行う場合、国が告示した適正運賃を目安として活用し、運賃・料金の引き上げを図ることだった。これについて坂本会長は「実勢運賃と標準的運賃との間には非常に大きな落差がある。これを埋めて適正運賃収受を推進するためには、むしろ適正原価を示し、これ以下にはならないように運賃を決めていく方が実効性が高いと考えた」と説明した。
「適正原価」の内容は「運行費、全産業平均の賃金を踏まえた人件費、車両などの減価償却費、輸送の安全確保に必要となる諸経費、委託手数料、事業継続に必要な投資の原資、公租公課など通常必要となる費用に基づき、国が定めて告示していただくもの」だと述べた。
なお、「標準的運賃」はトラック事業者と荷主・元請けとの運賃交渉の場で一定の目安として活用が進んでいるが、強制力は持っていない。また、標準的な運賃の満額レベルの水準に達している企業は多くはない。これに対し、国が告示した「適正原価」を下回る運賃は法令違反とすることで、より適切な取引環境が実現するとの考えがある。
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