西日本医薬品センター

カーゴニュース 2024年7月11日 第5258号

日本通運
バイオ製剤など医薬品製造への進出加速

バイオ製剤など医薬品製造への進出加速

2024/07/11 13:23
総合物流・3PL

 NIPPON EXPRESSホールディングス傘下の日本通運(本社・東京都千代田区、竹添進二郎社長)は、重点産業に位置づけている医薬品物流の事業拡大に向けて、製造・開発領域への進出を強化している。5月に主要拠点のひとつである「西日本医薬品センター」(大阪府寝屋川市)で、ワクチンなどバイオ製剤の製造工程に必要となる医薬品製造業許可1号区分「生物学的製剤等(製造工程の全部または一部)」のライセンスを取得。製薬メーカーに代わりワクチン製剤などの検査や出荷判定など製造業務の一部を行うことができるようになった。今月から1社の案件受託がスタートしており、今後は同センターでの受託拡大に加え、東日本(埼玉県久喜市)や九州(北九州市)など他の医薬品センターへの水平展開もにらむ。

 

 日通は2020年から21年にかけて東日本、西日本、九州、富山の4ヵ所に医薬品物流の専用センターを開設するとともに、成田と関空の2空港に輸出入医薬品のゲートウェイとなる「メディカルハブ」を置き、医薬品物流のネットワークを構築している。

 

 これまで、各拠点でGDP(医薬品の適正流通基準)認証を取得するなど、主に卸向けの配送など流通や販売領域における物流業務を手がけてきたが、今後は上流工程にあたる製造・開発などGMP(医薬品の適正製造基準)に該当する領域での事業を強化していく。

 
 その背景には、コロナを契機にワクチンに代表されるバイオ製剤などの開発や治験、市場流通までのライフサイクルが早まり、各工程でのアウトソーシング需要が高まっていることがあるという。医薬品事業部長の大岩裕幸氏は「今後はバイオ製剤が製薬メーカーの中心になってくる。他の医薬品3PLは、流通や販売など(川下)領域の拡大に力を入れているが、当社は逆に製造・開発などの(上流)工程に進んでいる」と競合との戦略の違いを強調する。日通はグローバルネットワークを武器に、海外から輸入された医薬品原材料を製薬工場まで輸送する調達物流を幅広く手がけていることから、製造領域で受託を拡大していくメリットが大きいと見られる。


 今回、西日本医薬品センターで開始した業務は、関空から輸入されたバイオ製剤を同センターに持ち込み、検査などの製造工程と販売工程を同一拠点内で完了させ、卸向けに出荷する。同業務を開始するにあたり、バイオ製剤の取り扱い資格を持つ「生物由来製品製造管理者」を1人雇用した。「顧客である製薬メーカーにとっては、当社が独自に製造ライセンスを持っているため、担当者を常駐させる必要がないなど、業務を簡略化してコア事業に集中できるメリットがある」(大岩氏)として、今後の業務拡大に意欲を見せる。

大岩氏

年度内にも全量を内航RORO船にシフト
東京発・北海道向け医薬品輸送

 

 日本通運は東京発・北海道向けの医薬品の国内輸送について、今年度中にも全量を海上輸送にシフトする方針だ。6月28日納品分から、全物量の3分の1を陸送を中心としたルートから東京港発の内航RORO船を中心としたルートに切り替えたが、今後は海上輸送の安定性の検証や荷主である製薬メーカーとの調整を図った上で、全量を切り替えることでドライバー不足への対応やCO2排出量削減を進める。

 

 東京発・北海道向けの医薬品は従来、「東日本医薬品センター」(埼玉県加須市)から八戸港や青森港までトラックで陸送し、フェリーで苫小牧港や函館港に到着後、再び札幌市内の卸向けにトラックで陸送するスキームで、週3便(火・木・金曜日の納品)体制で運行していた。しかし、この体制ではドライバーが往復の運転を担うなど拘束時間が長時間化するため、持続可能性の面で課題が生じつつあった。


 そこで同社は、週3便のうち金曜日納品の1便について、6月28日納品分から海上輸送を中心にしたルートにシフト。東日本医薬品センターから東京港まで陸送し、NXグループの自社船「ひまわり8」に車両のみを載せる。苫小牧港に到着後は、日通の苫小牧支店のドライバーが車両を引き取って札幌市内に納品する。リードタイムは陸送中心の場合と変わらず、ドライバーの拘束時間を大幅に減らすことができるほか、CO2排出量も従来比で6割減らすことができる。医薬品事業部の今村英史専任部長は「『2024年問題』への対応に加え、輸送手段の選択肢を多様化するBCP対応にもつながる」と説明する。輸送品質面でも、自社RORO船を使うことで一貫したオペレーションが可能になり、温度管理や輸送中の電源確保などの課題をクリアしている。

自社RORO船「ひまわり8」

 今後は、海上ルートのサービス品質を検証しながら、残る2便の海上シフトに取り組んでいく。課題はRORO船のスケジュールに合わせるため、センターの出発時間がやや前倒しになることに加えて、納品日が水・木・金曜日に変更になること。「まだ一部のお客様との調整が済んでいないが、(陸送を中心とした)現行サービスのままでは運賃改定に踏み込まざるを得ない。外資系製薬メーカーを中心にCO2排出量削減に意欲的であることに加えて、多少のリードタイム延長も理解が得られつつある。今後も丁寧に話し合っていきたい」と語る。  

今村氏
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