パレットは標準化のトップランナーになるか

カーゴニュース 2024年9月26日 第5278号

行政レポート
標準パレット普及へ、国は補助事業推進

レンタル5社が補助事業に参画

2024/09/25 16:00
行政 パレット

 国土交通省は6月27日、官民物流標準化懇談会・パレット標準化推進分科会の最終報告を公表した。標準パレットの規格を平面サイズ1100×1100㎜の「11型」に定めた。標準規格については例外的なケースがあることも認めた。製品の特性により標準仕様パレットを活用できない場合や、業界標準のパレットを運用しており、相当程度の物量で一貫パレチゼーションを実現できている業界、またガイドラインやアクションプランにより「11型」以外の規格も推奨している業界については「標準仕様パレットの導入が当分の間困難な場合」と特記し、「将来的には『11型』に切り替えて一貫パレチゼーションを実現すべき」と結論付けることで含みを持たせた。利用方法はレンタル方式を推進するとし、将来的には複数のレンタルパレット事業者が連携した共同プラットフォームが主体となり、パレットの共同配送・回収や管理システムの運営を目指すべきとした。


「11型」提言に賛同と反発の声


 標準仕様パレットの規格は、平面サイズ1100×1100㎜の「11型」で、高さは144~150㎜、最大積載量は1tとした。二方差しと四方差しの両方を認め、電子タグなどを用いた貨物やパレットの追跡を可能とするため、タグ・バーコードを装着できる設計とする。材質はプラスチックと木製の両方を標準とした。


 国交省の提言に対し、「労働力不足の今こそ一貫パレチゼーションの実現を図るべきで、そのために標準仕様パレットがある」「『11型』という理想形を掲げることが標準化のメッセージとして伝わりやすい」「貨物のモジュール化が当面難しいならば、パレットを標準化することは大きな意味がある」と評価する声や、「標準仕様パレットが普及すれば荷役の機械化・自動化が促進され物流の効率化に有効。マテハン機器の需要増も見込まれる」と期待する見方もあった。一方、複数の荷主業界からは「出荷からパレット回収まで、『11型』ではないパレットを利用するシステムが業界内で普及している」「『11 型』に切り替えるには多額の設備投資が必要。現状では踏み切れない」「アジア圏では『12型』が主流。アジアのシームレス物流の観点から『12型』も重要だ」などサプライチェーン全体の観点から標準化の重要性を認めた上で完全に賛同しないという意見もあった。「11型」の利用は義務的措置ではないことから、提言の理念を尊重しつつ、業界特性に合わせたパレット化が進んでいくことになりそうだ。

 

自社パレを使用するより共同運用のレンタルを


 国交省の提言はパレットの利用方法としてレンタル方式を推奨した。国の調査によれば、パレット利用の阻害要因には、自社パレットの流出・紛失リスクや、パレット回収に要する負担の大きさがあったため、管理と回収を受け持つレンタルパレット事業者からレンタルすることが、利用者のメリットは大きいとの考えによるもの。


 発展的な形態として、複数のレンタル事業者が共同でパレットの出荷・回収を一括運用できるシステムが普及し、荷主が共同運用システムを利用すれば、さらなるコスト削減が可能になると方向性を示した。関連して、コスト負担を明確化するため、パレットを使用した運送・保管を伴う売買契約や、荷主がレンタル事業者とのレンタル契約を結ぶ際は、パレットの仕分け・回収を行う主体や費用負担を明記すべきとした。この方針はレンタル方式のメリットとコストを可視化し、利用機会の拡大を図るとともに、共同運用システムが普及した際の複数事業者間での費用分担を明確化する狙いがある。


レンタルパレットの利用者のみに補助


 国交省は提言に対する多様な受け止めがあることを認識しつつ、標準仕様パレットを導入する荷主や物流事業者への費用補助事業を実施することで、普及促進を図っていく。今年度はレンタルパレット事業者から標準仕様パレットをレンタルする荷主・物流事業者に対し、パレタイザー、ラック、フォークリフトの導入・増備や入れ替えなどに要する費用を最大2分の1まで補助する事業を実施中。10月31日まで補助申請を公募している。


 注意すべきは、費用補助を受けられるのは自社パレットの購入ではなく、国が認定したレンタル事業者からパレットをレンタルする場合に限られていることだ。具体的には、日本レンタルパレット(JPR)、ユーピーアール(upr)、日本パレットプール(NPP)、三甲パレットレンタル、ワコーパレットの5社からレンタルすることになる。


 5社のうち、JPR、upr、NPPの3社が連携した「レンタルパレット協働運用事務局」と、三甲パレットレンタル、ワコーパレットの2社が連携した「TRAX_OPF」の2つの共同管理主体が、新たにパレットを導入する荷主・物流事業者に標準仕様パレットを提供することとしている。国交省は26年度にパレット運用の共同プラットフォームの社会実装を目指しており、レンタルパレットの普及を加速させたい考えだ。 

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