トラックとの結節を担うがゆえの難しさも…

カーゴニュース 2024年11月28日 第5296号

レポート
倉庫側から見た「2024年問題」

求められる倉庫側の〝事情〟への理解

2024/11/28 07:00
倉庫・物流施設 2024年問題

 トラックドライバーの労働時間規制が強化される「2024年問題」――。今年4月に本番を迎えて8ヵ月が経過したが、現在まで大きな混乱は生じていない。だが、トラックドライバーの時短など労務負担の軽減に主眼が置かれれているため、その影響が〝周辺〟におよぶ懸念は払しょくできない。その筆頭に挙げられるのが「倉庫」だ。ドライバーなど運送サイドから見た場合、倉庫は荷待ちによる待機や付帯業務が起きる〝現場〟でもあるため、ドライバーの負担軽減を優先するあまり、しわ寄せが倉庫側におよぶ可能性もあり、公平かつきめ細かいチェックが必要だ。

 

ドライバー負担軽減で倉庫に負担増すリスク

 

 「2024年問題」に対する倉庫業界のスタンスをひと言で表現すると、「解決のために倉庫業界も協力は惜しまない、だが、しわ寄せは避けたい」ということに尽きる。実際、「2024年問題」の現時点における解決策は、荷待ちや荷役時間の短縮、積載率改善による物流生産性の向上が中心で、いずれも貨物の発着場所である倉庫が関係する取り組みだ。

 

 仮にドライバーによる荷役作業を廃止した場合、その作業は倉庫側が代替しなければならず、そのために要員を増やす負担が生じかねない。その際、荷役作業料を荷主に負担してもらえれば問題はないものの、荷主に応じてもらえなければ、倉庫がしわ寄せ分を抱え込むことになってしまう。ある倉庫業界関係者は「サプライチェーンの結節点の役割を担う倉庫は、トラックなど運送機能とつながる存在であり、当然、『24年問題』と無関係でいられない。そのため、ドライバーの負担軽減を優先するあまり、倉庫側の負担が増すリスクが避けられず、丁寧に状況を見ていく必要がある」と指摘する。

 

 こうした懸念もあり、日本倉庫協会は今年3月に国土交通省に要望書を提出し、トラックドライバーが行っていた荷役作業などを、ドライバーに代わり倉庫事業者が委託を受ける場合には、適正な対価を荷主が支払うよう指導することなどを求めた。

 

トラックGメン改組で物流全体の適正化へ

 

 こうした倉庫側からの要望の成果もあり、国交省は今年11月、「トラックGメン」制度を「トラック・物流Gメン」に改組し、倉庫を含めた物流全体の適正化を図る体制にした。昨年7月にスタートしたトラックGメン制度だが、当初は「あの倉庫で荷待ちが長時間化している」といったトラック事業者からの指摘を受ける形で、倉庫会社に対して調査が及ぶケースもあったという。しかし、こうした事例は、荷主の出荷指示の都合などによって待機が長時間化していることも少なからずあり、倉庫単独では解決できないことも多い。倉庫会社は中小企業が多く、荷主に対して弱い立場にあることはトラック運送事業者と同じ。今回の改組は、このような倉庫側が抱える事情などを汲み、行政が一定の〝軌道修正〟を行ったといえる。

 

 また、行政の動きに呼応して、日本倉庫協会も協会ホームページに開設していた「2024年問題に関する相談窓口」を「トラック・物流Gメンよろず相談室」に改め、情報収集に努めていく。

 

価格転嫁に一定の理解も、求める水準に届かず

 

 いずれにせよ、倉庫業界が「24年問題」の解決に貢献していくためには、荷主から適正な対価を収受できるかどうかにかかっている。

 

 日本倉庫協会が今年8月に公表した「価格転嫁(値上げ)の状況に関する実態調査」の結果によると、回答した倉庫会社の9割が荷主に値上げを求め、このうち97%が「交渉テーブルにつけた」と答えるなど、荷主側に一定の理解が進んでいることが分かった。

 

 ただ、実際の転嫁状況については、保管料で「転嫁できた」のは65%、荷役料については73%にとどまったほか、値上げ率も「2割アップ」までで9割以上を占めるなど、倉庫会社側が求める水準には届いていないことが明らかになった。倉庫業界関係者からは「以前より荷主の理解が進んでいることは確かだが、まずは運賃アップが最優先で、保管料などは後回しになる傾向がある」との声が聞かれる。倉庫業界ではいま、人件費や電気代の高騰が続いており、省力機器をはじめとするDX投資によるコスト増も避けられない。今後、さらなる転嫁に向けて、荷主の理解がどこまで深まるかがカギを握っている。

 

導入進むトラック予約システム、一方で課題も

 

 ドライバー時短に効果を発揮するツールのひとつがトラック予約システムだが、現在、倉庫現場への導入が順調に進んでいる。しかし、すでにトラック待機時間の短縮で成果をあげている拠点があるものの、倉庫に出入りするドライバーへの周知が思うように進んでいないケースもある。ある倉庫会社では「ドライバーにチラシを配布してアプリの導入を呼びかけているが、なかなか利用率が上がらない」と語る。一方、トラック予約システムを導入したことによって、入出庫の時間帯が1日の間に満遍なく分散され、倉庫作業員の休憩が取りにくくなっているとの声があるなど、今後に向けて改善すべき課題もあるようだ。

 

在庫証明書の発行、〝有料化〟求める声も

 

 このほか、トラックドライバーが「サービス」として行っていた附帯作業の費用化の動きがある中で、倉庫業界からも“無償”のサービスについて見直しを求める声も一部にある。

 

 たとえば、「在庫証明書」の発行は、棚卸や現物チェック、上司の承認など手間がかかっており、「銀行の残高証明書の発行には手数料がかかっているのに、倉庫の在庫証明書は保管料に含まれてしまっている」とし、〝有料化〟すべきとの意見もある。同様に、倉庫内での名義変更についても、「AからBに名義変更すると、いったん出庫し、入庫を行うという処理が必要。名義変更は頻繁に発生し、上司の確認が必要で、結構手間がかかっているのに手数料をとれていない」との状況もあるようだ。

続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。