立替払いを巡る近年の動き

カーゴニュース 2024年12月12日 第5300号

財務省
通関業者の関税立替払いで配慮要請

荷主と物流事業者の公正取引へ協力求む

2024/12/11 16:00
行政 グローバル物流

 財務省関税局が、通関業者による関税・消費税の立替払いに関し、通関業者への配慮を求める文書を荷主団体に発出していたことがわかった。荷主と物流事業者の公正な取引の観点から、公正取引委員会は関税等の立替払いを「独占禁止法上の問題につながるおそれのある事例」とみなしており、財務省関税局では通関業者も物流事業者と位置づけたうえで、荷主団体に委託先の通関業者との取引に対する一層の配慮を求めた。

 

優越的な地位利用した不公正な取引のおそれ

 

 「荷主と物流業者との取引の公正化に向けた 通関業者との取引に関する一層の配慮等について(依頼)」と題する文書は5日付で関税局の藤中康生業務課長から日本貿易会宛てに発出された。

 

 関税局は2021年2月9日付で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等により、その影響を受ける貨物の輸入通関手続きを代行する通関業者と輸入者との間の取引に関し、委託先の通関業者との取引に対する一層の配慮を依頼する旨の依頼文を発出。その後、通関業者からは輸入貨物の関税等の立替払いに関する負担が軽減し、一定の改善があったとの声が寄せられているとした一方で、「事業者団体が行ったアンケート調査や報道等においては、立替払いが通関業者の負担となっている旨の声が引き続き寄せられている」とした。

 

 さらに、公正取引委員会が継続的に実施している荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた調査では、独占禁止法上の問題につながるおそれのある事例として、荷主が物流事業者に対し、関税・内国消費税の納付を立替えさせる事例が3年連続で取り上げられていることに言及。「このような立替払いは、輸入者と委託先の通関業者との間の関係や取引方法によっては、優越的な地位を利用した不公正な取引となる場合がある」と指摘した。

 

「通関業者の労務費の転嫁が進んでいない」とも

 

 また、「中小企業・小規模事業者が賃上げの原資を確保できるよう、政府一体となって労務費の適切な転嫁対策に取り組んでいるが、労務費の転嫁が進んでいないとの相談が通関業者から寄せられている」とし、「コスト上昇分の取引価格への反映の必要性について協議することなく取引価格を据え置く行為等、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会による調査などの対応が行われている」と注意喚起。

 

 そのうえで、「物流は国民生活や経済を支える社会インフラであり、通関業者も国際物流の一部を担っている」とし、その役割への理解を求め、通関委託先の通関業者との取引に対する一層の配慮、財務省関税局で提供している輸入者自らが関税等を納付しやすくするためのリアルタイム口座振替方式などの周知を求めた。

 

立替払いの商慣習見直しに期待、9割が「負担」

 

 関税等の立替払いを巡っては、今年3月13日に開かれた衆議院財務金融委員会で議員との質疑応答の中で、公正取引委員会から独禁法上の問題となるおそれがあるとの見解が示されるともに、当時の鈴木俊一財務大臣も公取委の指摘を受け、「指摘に沿った形で是正される必要がある」と述べていた。

 

 東京通関業会が今年実施したアンケートでは、関税・消費税の立替払いについて95%が行っており、荷主からの要請に基づき行っている割合が84%にのぼった。大阪通関業会のアンケート調査でも、約9割が関税・消費税の立替払いを行っており、約9割が負担を認識し、約5割が「非常に負担が大きい」、約3割が業務に与える影響が「極めて大きい」と回答している実態がある。

 

 23年6月に政府が策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」では商慣行の見直しがクローズアップされており、荷主と物流会社の商慣習のひとつである立替払いについても、見直しへの期待が高まっている。また、通関業務料金はすでに自由化されているが、EPA(経済連携協定)利用などで手続きが複雑化し、人件費も上昇しているにもかかわらず、価格転嫁が進んでいないとの声もある。

立替払いの負担感(大阪通関業会アンケートより)
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