ANA最大の上屋「ANA Cargo Base+」

カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号

レポート/ANA
「ANA Cargo Base+」が稼働

トランジット貨物の取り扱いを効率化

2025/03/13 07:00
航空 グローバル物流

 全日本空輸(ANA、本社・東京都港区、井上慎一社長)は成田空港の北部貨物地区で供用開始された上屋施設「第8貨物ビル」と、隣接する「第7貨物ビル」を利用し、新たな航空貨物上屋「ANA Cargo Base+」(エーエヌエーカーゴベースプラス)を昨年10月に開設した。ANAにとって最大規模となる同上屋に、貨物地区内に分散していた上屋機能を集約するとともに、自動搬送設備の導入、温度管理施設の拡張などにより、業務効率化と品質向上を実現。第三国貨物(トランジット貨物)などの需要取り込み強化につなげる狙いだ。

 

トランジット貨物の接続時間を最大4割短縮

 

 「ANA Cargo Base+」の「+」には、広いスペースを活かした上屋機能の拡充や顧客利便性向上など、時代の変化に応じて新たな付加価値を次々と生み出していくという理念が込められている。

 

 「第8貨物ビル」は延床面積約6万1000㎡の2階建て。このうち、上屋面積は約3万8000㎡となる。新施設の稼働により、ANAグループの航空貨物事業会社であるANA Cargo(本社・東京都港区、脇谷謙一社長)の成田空港における貨物取扱能力は、従来比で25%増強。以前から運用していた「第7貨物ビル」に隣接し、両施設と合わせた上屋面積は約4万8000㎡まで拡張された。「第8貨物ビル」では輸出・輸入・第三国貨物(トランジット貨物)を、「第7貨物ビル」では従来通り輸出貨物および国内貨物、郵便をそれぞれ取り扱う。

 

 「ANA Cargo Base+」には、これまで貨物地区内で分散していたANAの6ヵ所の上屋を集約し、貨物の受け渡しを1ヵ所のエリアで完結できるようにした。また、三国間を経由するトランジット貨物の発着作業も同一上屋で行えるようにするなど、オペレーションを効率化。トランジット貨物の接続時間を、従来の300分から180分へ、最大40%短縮した。

「ANA Cargo Base+」が入る第8貨物ビル

輸出エリアに60台のAGV、自動化を徹底

 

 「第8貨物ビル」の輸出エリアでは、Photxerが提供する自動搬送車(AGV)を60台、搬送棚を842台運用し、上屋内の搬送作業の一部で自動化・省人化した。AGVは1回の充電で8時間稼働し、バッテリー残量が少なくなると、自動で充電する仕組みを採用。充電ステーションは12台を整備した。なお、生鮮品や医薬品、半導体製造装置など、より繊細なハンドリングが求められる貨物はAGV搬送の対象外となる。

 

 

AGVで搬送作業を自動化
輸入エリアのAGFと自動高層ラック

 成田空港で顧客から預かった貨物や国内外空港から成田空港に到着した貨物の照合作業終了後、上屋内の蔵置エリアまでAGVが自動搬送。その後、ULD(ユニットロードデバイス)に積み付けるため、作業員の指示で、指定された貨物を蔵置エリアから積み付けエリア至近まで自動搬送する。コンテナなどのULD(ユニット・ロード・デバイス)へ仕向地別に積み付けられた貨物は、計量後に航空機まで搬送される。ULDを200台保管できる自動ULDラックの活用により、ULDの搬送・蔵置作業も自動化した。

 

 輸入エリアにはANA Cargoから輸入貨物のオペレーションを委託されているIACT(国際空港上屋)が入居。同エリアには、無人搬送フォークリフト(AGF)5台を空港のハンドリング業務として世界で初めて導入した。さらに最大2040台のパレットを格納できる自動高層ラックも導入。AGFと自動高層ラックを連携させることで迅速かつ効率的な貨物の搬出入を可能とするとともに、人為的なミスの抑制につなげる。航空機から取り降ろされた貨物は輸入エリアでブレイクダウンが行われ、専用パレットに積み付けられる。専用パレットを所定の位置に搬送すると天井のカメラが貨物を認識して、AGFが自動高層ラックへ搬送。なお、AGFと自動高層ラックの連携は空港以外の倉庫でも国内初の事例だという。

 

医薬品専用庫など温度管理施設を5倍に拡張

 

 「ANA Cargo Base+」は医薬品や生鮮品などの温度管理が必要な特殊貨物の取り扱いにも対応する。上屋内には、温度管理施設として「医薬品専用庫」と「温度管理庫」を整備。温度管理施設の面積は1644㎡となり、従来の5倍に拡張した。

 

 「医薬品専用庫」は、15℃~25℃(365㎡)、2℃~8℃(202㎡)、マイナス20℃(54㎡)の3温度帯に対応。前室(111㎡)も設置することで、厳格な温度管理を行う。「温度管理庫」は輸入用の25℃の中温庫(185㎡)のほか、5℃の冷蔵庫が輸入用(381㎡)、輸出用(204㎡)の2室。輸出用の冷凍庫にはマイナス5℃(44㎡)、マイナス20℃(98㎡)の2室を設けた。

 

 ANAは国際航空運送協会(IATA)が策定する医薬品輸送品質認証「CEIV Pharma」や生鮮品輸送品質認証「CEIV Fresh」を取得しており、両認証に準拠した温度管理施設の運用により、高品質な温度管理サービスを提供する。

 

 このほか、上屋内には動物専用の保管施設も設置し、ANA Cargoが提供する国際動物貨物輸送サービス「PRIO LIVE ANIMALS」に対応。室内には小窓が設置され、外から動物の状態を確認でき、外界の光や人・モノの動きに影響されにくい環境で動物のストレスを軽減する。適温を維持する空調設備に加え、犬・猫への給餌、給水、写真撮影なども行うことができる。

 成田空港が北部貨物地区におけるトラック車両の長時間待機の解消に向けて導入したバース予約システム「トラックドックマネジメントシステム」は、「ANA Cargo Base+」にも採用されている。バース予約システムにはシーイーシー(CEC)の「LogiPull(ロジプル)」を運用。また、「ANA Cargo Base+」に近接する場所に新たに「北部貨物ゲート」が開設され、空港外部から貨物地区へのダイレクトなアクセスが可能となったことで、交通利便性が向上した。              

温度管理施設は従来の5倍に拡大
「北部貨物ゲート」開設でアクセスが向上
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