カーゴニュース 2024年6月13日 第5250号
川西倉庫(本社・神戸市兵庫区、川西二郎社長)は物流DXを加速させる。国土交通省の「物流施設におけるDX推進実証事業」にこのほど採択され、多様な貨物を扱う内陸型物流センターで、RFIDを活用した貨物探索システムの開発などに取り組む。同社が中期経営計画で掲げる「スマート倉庫」「スマートロジスティクス」のモデルケースと位置づけ、成功事例を水平展開していく方針だ。7日に東京都内で開催された2024年3月期決算説明会で、川西社長が「次世代プロジェクトチーム」の活動の進捗として報告した。
川西倉庫では30年までの長期ビジョンの第1フェーズにあたる中期経営計画(22~24年度)において、物流センターの機能拡充や「スマート倉庫」「スマートロジスティクス」構想、次世代型荷役機器装置や業務効率化、第2フェーズ以降に想定する次世代型倉庫の建設地・規模などの検討を進めている。
また、総合的な次世代の新たなビジネスモデル構築に向けた企画・調査・研究等を推進するため、「次世代プロジェクトチーム」を21年6月に発足。DXおよびSDGs、カーボンニュートラルの取り組みを推進し、このうちDX関連では、自動倉庫や自立型ゼロエネルギー倉庫、次世代型荷役機器、RPA等の導入を検証している。
今年5月には、国交省が公募した「物流施設におけるDX推進実証事業」(一次公募)に採択が決定。コーヒー豆など専用倉庫も多い同社の拠点の中でも、比較的多様な貨物を扱っている京浜支店関東物流センター杉戸営業所を対象に、6月1日から来年2月28日まで事業実施を行う。
具体的には、無人化・省人化を見据え、コンテナから垂直搬送機までの流れを効率化するマテハンシステムを導入。RFIDリーダーによるICタグ情報の読み取りを活用した貨物探索システムを開発し、作業の属人化からの脱却と作業時間の短縮を図る。また、荷待ち・荷役時間を削減するため、トラック予約受付システムを導入する。
これまでの物流DXの取り組みでは、京浜支店関東物流センター加須営業所で昨年10月、バラ積みのコンテナから貨物を取り出し、パレットに積み替える作業に「デバンダー」(荷降ろしロボット)を導入。「簡単に設置でき、高さを自由に変えられる利点があり、作業負荷の軽減につながっている」(川西社長)。
同営業所では12月には、固化した商品を、袋を破くことなく中身だけ砕く作業について粗砕機を導入。大阪支店大東営業所では22年9月から、トラック予約受付システムを運用。受付・配車業務のデジタル化により、トラックの待機時間削減とともに、配車業務のデジタル化により作業員の残業を3割減らすなどの効果があり、全倉庫での導入を目指す。
4月からの人事制度改定も報告。「従業員のモチベーションを高める人事評価の仕組みを導入し、多様な働き方、キャリアパスの選択肢を提供する。服装の自由化や男性も含めた育休の取得推進、復職しやすい環境整備を進めている」とし、4月にはインドネシア人を採用するなどダイバーシティ・インクルージョンの取り組みも説明した。
なお、25年3月期は国内物流で堅調な貨物の取り扱いが見込まれ、インドネシア倉庫事業、米国現地法人の本格稼働も増収に貢献する見通し。一方、動力費や人事制度改定に伴う人件費の増加を想定し、売上高260億円(前期比4・0%増)、営業利益12億円(3・5%増)、経常利益12億8000万円(3・8%増)、純利益8億円(0・4%増)を計画する。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。