カーゴニュース 2024年7月11日 第5258号
成田国際空港(NAA、本社・千葉県成田市、田村明比古社長)は3日、「新しい成田空港」構想検討会が取りまとめた「『新しい成田空港』構想とりまとめ2・0」を公表し、国に提出した。新貨物地区は2030年初頭の供用開始を見据えており、航空内外の物流機能集約や自動化・機械化を推進。トランジット輸送の需要創出も強化し、「東アジアの貨物ハブ」を目指して構想の具体化に向けた検討を進めていく。
同社は、航空物流機能の高度化や旅客ターミナル再構築などの課題解決に向け、22年に学識経験者や国、千葉県、地元市町の幹部らで構成する「新しい成田空港」構想検討会を設置。貨物地区においては、新貨物地区を整備することで、施設の老朽化や空港内外における施設分散の解消、トランジット貨物の取り込み、自動化・省人化といった課題への対応を検討している。
今回の取りまとめでは、新貨物地区の候補地として、B滑走路とC滑走路の中間に位置する空港東側エリアで、新規に用地を取得する旨を明記した。同地は、圏央道への利便性が高いことに加え、空港隣接地との一体的運用も見込めるという。圏央道では、NAAと千葉県が空港アクセス向上のため新IC整備を検討。空港周辺地域では、EC・流通加工拠点や機器ストック・メンテナンス拠点、生鮮品輸出拠点などを整備して、新たな価値・需要の創出を図る。
トランジット需要創出に注力、自動化も徹底
新貨物地区では、空港内外に分散している航空物流機能を集約。航空会社とフォワーダーの連携によりトランジット輸送の需要創出を強化することで、「東アジアの貨物ハブ」を目指す。自動化による効率化では、貨物上屋とフォワーダー施設の一体的運用を実現することでコストやリードタイムなどの削減につなげる。現在トラックのピストン輸送が行われているフォワーダー施設~貨物上屋間の輸送を、施設間を自動搬送設備でつなぐことで完全に自動化する。そのうえで、人員をフォワーダー施設での輸出処理などに集中投下し、労働環境の向上を図る。また、上屋に自動高層ラックを導入し、上屋機能の垂直での運用を実現することで、土地の有効活用につなげる。
加えて、今後も増大が予想されるEC需要の取り込みに向け、EMS含む国際郵便の効率的な取り扱い施設の整備やインテグレーターの拠点誘致も検討が必要だとした。このほか、環境への配慮やトラックドライバー不足への対応として、新貨物地区構内にJR貨物のオフレールステーション(ORS)を設置して鉄道モーダルシフトに対応するほか、共同輸配送拠点の整備も検討する必要があるとしている。
NAAでは、30年初頭での新貨物地区の供用開始を見据えており、旅客事業も含め構想全体の事業費を8000億円程度と想定。30年における年間の貨物取り扱い能力は、現在の240万tから350万tへ増加すると見込んでいる。今後は国交省や千葉県などと連携し、構想の具体化に向けてさらなる検討を進めていく。
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