CLO提言書を手渡す森理事長(左)と経産省の平林氏

カーゴニュース 2024年9月10日 第5273号

JPIC
「CLO協議会」を初開催

荷主3社が要件めぐり活発な意見交換

2024/09/10 07:00
荷主・物流子会社 トラック輸送 2024年問題

 フィジカルインターネットセンター(JPIC、森隆行理事長)は2日、東京国際フォーラムで第1回「CLO協議会」を開催した。荷主企業、物流事業者、マテハン機器メーカー、システムベンダーなど45社と経済産業省、国土交通省、農林水産省など行政から、約100人が出席した。森理事長が、CLO(チーフ・ロジスティクス・オフィサー)に求められる役割と必要な職能を説明。経産省商務・サービスグループ消費・流通政策課長兼物流企画室長の平林孝之氏が改正物流効率化法に基づく物流統括管理者(CLO)の業務内容を解説した。


 その後、ベンダー2社が改善のソリューションを紹介した。続いて開かれたパネルディスカッションでは、メーカー3社の物流部門責任者がサプライチェーン改革におけるCLOの意義を話し合った。「CLOは物流の専門家である必要はない」「企業ガバナンスの観点からCLO設置は有意義」「開発部門も巻き込んだ取り組みが必要」などの意見もあり、参加者は熱心に聴き入っていた。

 

CLOの設置で〝SCMの恩恵〟を得られる

 

 協議会では初めに森理事長が7月にJPICが取りまとめた「CLOに求められる要件」の提言書に基づき、CLOの定義や役割、職能について説明。「CLOを設置することは物流部門の改善にとどまらず、顧客・取引先を含めたサプライチェーン全体の改革につながる。CLOがサプライチェーンの全体最適を図ることで、企業は真の意味でサプライチェーンマネジメントの恩恵を得ることができる」と強調した。


 経産省の平林氏は、改正法に基づき「CLOは自社の物流全体を統括管理する立場であり、役員・執行役員など経営層から選任されることが必要」と述べ、「物流効率化のための取引の相手方のCLOなどの関係者との連携・調整業務を担当する」と説明。現在、26年4月の施行に向け、経産省・国交省・農水省の3省合同会で詳細を検討中だとした。


 続いてNECソリューションイノベータとHacobuの担当者が、物流改善に有効なソリューションをそれぞれ紹介した。NECソリューションは、輸配送コストの削減と物流品質向上を実現するシステムや、労働時間管理を効率的に行えるソリューションを紹介した。


 トラック関連ソリューション「MOVO(ムーボ)」シリーズを提供するHacobuは、トラック予約受付システムの「MOVO Berth」、トラックの動態管理を効率化するクラウド型サービスの「MOVO Fleet」、荷主・元請・実運送の各社のデータ連携により受発注や管理業務を効率化するクラウド型サービスの「MOVO Vista」を紹介。社内外でデータ連携を推進することが、サプライチェーン全体最適やビジネスモデルの創出につながるとした。


メーカーは「発荷主・着荷主」の視点を持つべき


 パネルディスカッションは、YKK AP執行役員CLOの岩﨑稔氏、ダイキン工業物流本部長の生地幹氏、日清食品常務取締役SC本部長の深井雅裕氏がパネリストとなり、JPICの森理事長が司会を務めた。登壇者3人が物流改善の状況をそれぞれ説明した後、意見交換を行った。


 YKK APの岩﨑氏は物流改善の進め方について「メーカーは発荷主だが素材・原料の着荷主でもある。両方の視点を持ち、納品先や物流事業者と双方向のやり取りをしながら改善を行うことが必要だ。物流改善では商慣習の見直しが重要ポイントとなるため、社内の販売部門との連携が不可欠だ」とした。


 これを受け、日清食品の深井氏は「企業は時代に合わせて構造改革を行うが、その際にはサプライチェーン改革が有効な切り口となる。社内の各部門がそれぞれに進める取り組みに〝横串〟を差すことがCLOの役割だ。社外に向けては、SCは協調領域という観点から関係者を包摂しながら共同物流による全体最適を目指すことが重要だ」と述べた。


 ダイキン工業の生地氏は「当社が共同物流をやりはじめた契機は、ドライバー不足を背景にこれまで通り製品を運べなくなってきたからだ。物流網を見直した結果、多くのムダが見つかった。ムダをはぶくには共同物流が有効策になるとの発見があった」と述べた。加えて「社内に対しても〝デザイン・フォー・ロジスティクス〟の考えを示し、開発部門と連携しながら物流改善を進めている。物流単独の取り組みだけでなく、開発・生産部門を巻き込んだ取り組みが非常に重要だ」とした。これを受け、深井氏も「社内の他部署と意識の上でも連携していくことが改善を進捗させる」と述べた。

森理事長と岩﨑氏(右)
生地氏と深井氏(右)

CLO選任はガバナンス強化にも有効


 生地氏が物流改善の動機となったのは「運べなくなってきた」ことだと述べたのに対し、岩﨑氏は「コンプライアンスを遵守し、企業のガバナンスを確保するという観点も重要だ」と提起。今年4月からドライバーの長時間労働が法規制の対象となったことから「法令違反の事態が生じないように物流改善を進めることはリスクコントロールであり、企業ガバナンスの一環でもある」と指摘。「コンプライアンス違反のない物流を実現するために、パートナーである物流事業者との関係性をしっかりとつくり、お互いの考え方のよりどころを確認していくことが大事だと考えている」と述べ、具体的な取り組みとして「社内にリスク管理委員会を設置し、そのメンバーにはCLOも加わっている。リスク管理の視点を持つこともCLOには必要だ」とした。これを受け、司会を務める森理事長は「CLOは物流オペレーションの専門家である必要はないということだ」と補足した。深井氏は「最も大切なことはCLOが経営者の目線を持つこと」と述べ、「自社を超えて異業種や物流事業者と連携し、課題の解を得ることがCLOの重要な役割だ」と強調した。

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