「N―PORT新座」外観

カーゴニュース 2024年12月17日 第5301号

日販
ロボティクス導入した新物流拠点が本稼働

“出版物+書店”で文具・雑貨の取り扱い強化

2024/12/16 16:00
荷主・物流子会社 倉庫・物流施設 DX・システム・新技術

 日本出版販売(日販、本社・東京都千代田区、奥村景二社長)は「物流再編プログラム」の第1弾となる新たな物流拠点「N―PORT新座」(埼玉県新座市)を10月7日に開設し、本格稼働させた。「汎用性」「柔軟性」「高い生産性」をコンセプトとし、最新のロボティクス技術を導入し、持続可能な物流を実現。コアである出版物だけでなく、文具・雑貨など書店に並ぶ多様なアイテムを扱うことで業量の拡大を図る。

 

省人化や保管効率アップで生産性を飛躍的に向上

 

 今月10日、「N―PORT新座」を報道関係者に公開するとともに、大熊祐太物流企画部部長が「N―PORT新座」の概要や「物流再編プログラム」の進捗を説明した。

 

 「N―PORT新座」は出版物、文具、雑貨などあらゆる商材を書店の売り場のニーズに応じて届けることを目指した次世代の物流センター。名称の「N」には、「NIPPAN」に加え、「New(新しい価値)」「Notice(気づきや好奇心をもたらす)」「Normal(サステナブルな物流を当たり前に)」という意味を込め、その「PORT」(港やコネクター、運び手など)となる拠点運営への思いを表現した。

 

 最大の特徴は「マルチファンクション化」だ。出版物のみならず、文具・雑貨など様々な商材の出荷に対応する。持続可能な物流を実現するため、ロボティクス技術を導入し、省人化や保管効率アップにより生産性を飛躍的に向上。半径3㎞以内に日販グループの拠点が集中するため、拠点間輸送の短縮や人員の融通も可能となる。出版社の倉庫も多く近接し、将来的な物流連携の検討も開始している。

 

 取り扱いアイテム規模は3万7000SKU。業界最大級の在庫規模となり、従来は3ヵ所に分散していた日販グループの文具・雑貨商材の拠点を「N―PORT新座」に統合。新たにグループ共通の倉庫管理システムを導入し、フリーロケーション方式、棚・パレットでの管理が可能。ハンディターミナルを用いたアイテム別のトータルピックを行うことで作業工数を3割削減し、従来からのオーダーピックにも対応できる。

定番品は棚管理を行う

「ラピュタASRS」、高速のループ式ソーターを導入

 

 ロボティクス技術では、高い保管効率とピッキング生産性を実現した、ラピュタロボティクスの自在型自動倉庫「ラピュタASRS」を導入。段数は9段(約5m)、ロボット数は90台、保管数は9000ビン(保管6000、出荷3000)で、ピッキングステーションを3ヵ所設けた。多品種少量アイテムでも効率のよい作業が可能で、物流効率の悪いロングテールアイテムや、BtoC向けアイテムの保管に利用する。

自在型自動倉庫「ラピュタASRS」

 従来は作業者が棚ごとに周回してピッキング作業を行っていたが、「ラピュタASRS」の導入により、人が歩くのでなくロボットが棚を搬送し、モノの方から人に向かって移動してくる「GTP(Goods To Person)」を実現。搬送のような単純作業はロボットが担当し、様々なサイズのアイテムのピッキング・格納といった複雑な業務を人が担いながら、誰でも均一なスピードと精度で作業が行える。

ループ式のソーター

 書店別の仕分けでは、椿本チエインの「リニソート」を導入。ソーターがループ式になっていることにより、一般的なストレートソーターに比べ、効率よく商品を仕分けられる。仕分け能力は1時間あたり最大5000個でシュート数は100。新商品などを対象にデジタルアソートシステム(DAS)も導入し、間口数は500で、最大30人の作業で500方面への仕分けが可能となっている。

間口数500のDAS

出版物配送ネットワークで「オールインワン納品」

 

 輸配送サービスも「N―PORT新座」の強みのひとつ。文具、雑貨などの商材も出版物配送のネットワークで「オールインワン納品」が行えるため、書店側では納品の手間が一度にまとまるメリットがある。また、北海道から沖縄まで全国40社を超える出版物配送のネットワークの活用に加え、状況に応じて路線便、宅配便など大手キャリアを選択し、最適なコストで配送が可能となる。

 

 大熊氏は、「物流は業量を増やすことが重要であり、当社にとっては書店様がキーになる。書店様の店頭にある在庫をすべて扱えるようになれば、おのずと上位との連携機会が増える。これにより配送の業量が増え、積載率が上がっていく」と展望する。出版社の倉庫誘致や書店の売り場に納入しているメーカーの誘致のほか、ラピュタロボティクスとの顧客の相互送客にも意欲を示した。

 

 なお、日販では取次事業において業量の減少や物流拠点の老朽化、1冊あたりの物流コストの上昇といった課題に対応するため、市場の変化に合わせた拠点の集約のほか、同業他社との協業を進めてきた。今後の「物流再編プログラム」の取り組みでは、25年夏に雑誌送品の拠点をより機能的な浮間流通センターに統合。トーハンとの協業では、同年夏から秋にかけて書籍返品をトーハンの桶川の物流拠点に移管する計画だ。

続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。