車座になって活発に意見交換

カーゴニュース 2025年3月25日 第5325号

石破首相
ドライバー・事業者らと車座で意見交換

賃上げ実現へ、価格転嫁・適正取引を推進

2025/03/24 17:00
行政 トラック輸送 人材・働き方・賃金

 石破茂首相は14日、総理大臣官邸でトラックドライバーや運送事業者など関係者と車座で意見交換を行った。石破首相は「トラック運送業界の構造的な賃上げを図るためトラック・物流Gメンにより強力に荷主などへの是正指導を行うとともに、物流改正法や下請法改正法案を契機に、荷主などに対する一層の価格転嫁や取引の適正化を推進する」と表明した。ドライバーらからは「若い世代や女性が働きやすいよう免許取得やキャリア形成を支援する体制を業界全体で整える必要がある」「計画的な輸送体制を荷主に構築してほしい」などの意見があった。

 

商慣習の見直しや休憩施設の拡充を訴え

 

 意見交換会にはトラック側から全日本トラック協会の坂本克己会長、マキタ運輸の牧田信良社長、フジトランスポートの松岡弘晃社長、ボルテックスセイグンのドライバー加藤研一氏、福山通運のドライバー田中咲衣氏が出席。政府からは石破首相をはじめ、赤澤亮正新しい資本主義担当大臣、中野洋昌国土交通大臣、古賀友一郎経済産業副大臣、橘慶一郎内閣官房副長官、青木一彦内閣官房副長官、矢田稚子内閣総理大臣補佐官、古谷一之公正取引委員会委員長、鶴田浩久国土交通省物流・自動車局長らが出席した。

 

 牧田社長が「現在は価格転嫁がさほど進展していない。堂々と価格交渉ができる環境を整備していただきたい」と要望したうえで「今年はトラックの新車更新を遅らせてでも、ドライバー賃金をより一層引き上げることを考えている」と述べた。また、「ドライバーが着荷主からフォークリフトで荷降ろしを指示されることがある。不慣れな場所で普段乗り慣れないフォークリフトで荷降ろしを命じられるのは安全上問題がある」と指摘し、商慣習の見直しが必要だと強調した。

 

 ドライバーの加藤さんは「かつての長距離ドライバーは〝稼げる仕事〟だった。現在は労働時間規制に伴い長距離の乗務が減少し、実質的には給与水準が下がっている」と実態について触れた。加えて、「納品時間指定を受けた場合、遅れないよう納品時間前に待機する場所が少なく、離れたPAで待機せざるを得ない。待機場所の拡充をお願いしたい。また、待機せずにすむよう、計画的な輸送体制を荷主に構築していただきたい」と要望した。

 

人材確保に「SNSの積極的活用」も重要

 

 労働力不足のなかでの担い手確保について、松岡社長は「大型車のドライバー採用が難しいことから、10年前からYouTubeなどSNSの活用を積極的に行い、求人に力を入れている。当社の社員にはユーチューバーが15人いて、乗務の様子をアップしている。それを見た若い人や女性からの応募が増え、昨年1年間で従業員650人、ドライバーは499人採用できた」と述べ、SNSの活用に効果があると説明。加えて「最終的には自社HPに求人情報を見やすくわかりやすいように掲載することで応募者は来てくれる」と語った。

 

 女性ドライバーの田中さんは「若い世代や女性が働きやすい職場とするには、免許取得やキャリア形成を支援する体制を業界全体で整える必要があると考えている。また、柔軟な勤務体系や育児支援制度を充実させることで、とくに小さな子どものいる家庭の女性が働きやすくなる。SAなどに女性専用の休憩室や仮眠施設を整備することも女性が安心して働くために必要だ」と指摘した。田中さんは入社後に会社の援助で中型免許を取得したことを説明し、「27年4月から大型車にオートマチック(AT)限定の免許を導入することは大変ありがたいことだ。この制度によりAT限定免許を持っている若い世代や、免許取得費用が心配な方々が気軽に業界に入れるきっかけになると考えている」と述べた。

田中さん、石破首相、加藤さん(左から)

全ト協・坂本会長、「強力な荷主対策」を要望

 

 石破首相が「ドライバーが充実して働けるように賃上げをするにはどうすればいいか」と質問すると、坂本会長は「運送会社が荷主から適正な運賃・料金を収受できる環境を整備することが最も重要だが現状は道半ばだ。業界としても努力しており、18年に荷主対策や標準的運賃の告示を盛り込んだ改正貨物自動車運送事業法が議員立法によってなされた。昨年は内閣提出法案として貨物自動車運送事業法が改正されたが、今年は議員立法により事業許可更新制など業界改善を柱とした改正事業法の成立に向けた活動に邁進している」と述べた。そのうえで「ドライバーが誇りをもって働けるようにすることが重要だ。業界も自助努力で懸命に頑張るが、やはり賃上げの原資は荷主による運賃・料金の引き上げだ。政府による荷主への働きかけを強力に実施していただきたい」と訴えた。

 

 この発言を受け、石破首相は「政府も賃上げと価格転嫁のために必要な施策を行う。商慣行は根深いものがあるが、荷主の意識改革や行動変容を強力に進めていく。トラック運送事業の魅力を広める取り組みを支援していきたい」と述べたうえで、当面の物流政策について「トラック・物流Gメンによる荷主に対する強力な是正指導を進めるとともに、4月から施行される物流改正法、下請法改正法案などによる施策により、荷主などに対する一層の価格転嫁と取引の適正化を推進することで構造的な賃上げを図る」と表明。また「今春をメドに省力化投資促進プランを策定し、荷主・物流事業者の設備投資を後押しする。さらに、物流全体の抜本的イノベーションに向けて政府の中長期計画の見直しを反映した総合物流施策大綱の検討を早急に開始する。物流の常識を根本から変えていくための施策に迅速に取り組んでいく」と力を込めた。

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