カーゴニュース 2026年10月1日 第5471号

ヤマトHD・櫻井社長会見
次期中計で法人向けビジネス強化へ

AI需要予測でコスト削減に成果

2026/09/30 16:00
全文公開記事 総合物流・3PL 経営計画・戦略 宅配・ラストワンマイル

 ヤマトホールディングス(本社・東京都中央区)の櫻井敏之社長(写真)は9月24日に物流メディアと懇談し、最優先に取り組むテーマを「足元の業績をいかに回復させるか」だとしたうえで、「宅急便を筋肉質にしつつ、法人向けビジネスを伸ばしていくことで成長していく」との方針を述べた。法人向けビジネスの強化を2028年3月期から始まる次期中期経営計画でも明確に位置づける考えを示し、「CL(コントラクト・ロジスティクス)やグローバル物流に注力していく」と表明。具体的には製造業へのアプローチを強め、「メーカーのサプライチェーン(SC)における受託領域を拡大していきたい」と述べた。

 

AI活用とプライシング適正化で業績回復に注力

 

 櫻井氏は、今年4月1日付でヤマト運輸の常務執行役員からヤマトHDの代表取締役社長に就任した。最優先課題に挙げた業績改善については「業務量の増減に合わせてコストを変動費化できていないことが、ここ数年の業績の下方修正につながっている。業務量をきちんと予測できていない、または、予測はしたもののボラティリティに耐えられるオペレーション体制になっていない」と説明。これを受けて現在、大型拠点間の幹線輸送やラストマイル配送において、AIによる需要予測に基づいた配車最適化に取り組んでいる。「これまでは配車担当者の経験に頼っていたが、AIによる理論値に近づけていく取り組みを進め、これが上期で形になってきた。今期の第1四半期では首都圏で幹線輸送の運行台数を3割程度削減することができた」と述べ、オペレーティングコストの削減で成果が出ていると強調した。

 

 また、宅急便事業の増収に向けた取り組みでは、プライシング適正化に注力していると説明。「意識的にプライシングを強化しながら、業務量をコントロールしている」とし、コストに見合わない荷物については断るケースもあるとした。

 

 さらに、将来に向けた成長エンジンとして、CL事業やグローバル物流など法人向けビジネスを挙げ、「次期中計でも明確に位置づけていく」と表明。CL事業については、従来から得意領域である通販関係や医療機器などに加え、製造業での受託領域を拡大していく考えを示した。「当社が(メーカーの物流部門の)窓口となることにより、小型貨物の輸送に加え、大型貨物の輸送を手配することで最適な物流を提供していく。すでに自動車メーカーや建機メーカーの補給部品でサービスを提供しており、今後はメーカーのSCにおける受託領域をさらに拡大していきたい」と述べた。

 

フレイター撤退など「聖域なき軌道修正」を加速

 

 櫻井氏は今年1月に行われた社長交代の会見で「聖域なき軌道修正」を強調。その一環もあり、黒字化の見通しが立たないフレイター(貨物専用機)事業からの撤退を表明した。「円安によりドル建てでの支払いが嵩んだことに加えて、燃料費の高騰が大きく影響した。(フレイター事業に参入した背景には)『2024年問題』で長距離トラックの運賃が上がり、場合によっては航空運賃と逆転すると言われていたが、現状では逆に差が広がっている。一部でフレイター独自の輸送ニーズも発掘できたが、それだけでは当初の事業計画に乗ってこなかった」と説明した。

 

 「聖域なき軌道修正」については、「外部環境の変化に伴って投資やコスト構造のあり方を順次見直している。課題をリストアップし、社長直轄のプロジェクトで進捗を図っている。フレイター事業は分かりやすい例だが、社外から見えにくい取り組みも進めている。例えば、大型拠点については、社内で使い方にメスを入れて見直しを進めている」とした。

 

社会インフラとしてのネットワークは維持する

 

 社会的インフラとしての宅急便ネットワークの役割については、「当社がインフラという立場を捨てて、儲かるところだけやることになれば、ヤマトではなくなる。全国に荷物を確実に届けることは、これからも変わらずに続けていく。ただ、配達やオペレーションの手法は時代に合わせて変えていく」と強調。「お客様や利用者からどう見えているかを大事にしていきたい。(インフラを維持していくためにも)配達や集荷の方法は状況に合わせて変化させ、社員にはより付加価値の高い仕事をしてもらわなくてはならない」と述べた。

 

 このほか、投資については「規律ある投資を行っていく。そのなかで、新たな技術については自動運転に注目しており、今後は拠点間の幹線輸送やラストマイルの領域での実用化が始まるだろう」と展望。「その際に大事になるのはオペレーションの標準化であり、今のうちから検討していきたい」と語った。

 

 外国人ドライバーの採用については、「ラストマイル領域での活用は相当慎重に対応すべきであり、現時点では検討していない。他方、拠点間での幹線輸送では、来年から採用が始まる。(外国人については)まずは大型トラックの分野で活躍していただきたい」と述べた。

 

 櫻井敏之(さくらい・としゆき) 1974年11月21日生まれ、51歳。福岡県出身。慶應義塾大学法学部卒。98年ヤマト運輸入社。EC営業部EC営業部課長、ヤマトWebソリューションズ社長、ヤマトHD経営戦略立案推進機能シニアマネージャー、ヤマトロジスティクス営業統括本部執行役員、ヤマト運輸法人部門法人ソリューションコントロールセンターゼネラルマネージャー、ヤマト運輸コーポレート地域共創部地域共創部長を経て、2024年2月ヤマト運輸執行役員(ネコサポ事業開発、エリアマネジメント推進統括)、25年4月ヤマト運輸常務執行役員(宅急便事業統括)、26年4月現職

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