カーゴニュース 2024年7月30日 第5263号
国土交通省は5月31日、トラック業界に対し、自動点呼機器を利用した業務前自動点呼について、先行的実施を認めた。これを受け、業務後の自動点呼を実施中の事業者は先行実施に前向きな意欲を示したが、7月23日現在、実施を国に申請した事業者はゼロだった。その理由は自動点呼機器メーカーの開発の遅れにあった。国が定めた要件を満たす機器・システムが1種類も存在しないため、事業者は申請できない状況にある。事業者は国が認定した機器を導入し、実施申請を行う必要があることから、実際に業務前自動点呼が本格化するのは来年春頃になりそうだ。
業務〝後〟の自動点呼はすでに制度化
昨年1月、自動車運送業の点呼業務について、自動点呼機器を利用した乗務後の自動点呼を可能とする制度を開始した。併せて、運行管理者の負担軽減と人手不足への対応を図るため、業務前での自動点呼の実施に向けて具体的検討を開始。年明け頃に実施に必要な機器や環境について要件を定め、安全確保の見通しが立ったことから、国交省は5月31日に全日本トラック協会と地方トラック協会に対し通達を発出し、業務前自動点呼を先行的に実施することを認めた。事業者は一定期間、実証的な位置づけで実施できるようになった。業界では以前から業務前自動点呼への期待が高かったこともあり、先行実施を歓迎する意向を示した。複数のトラック事業者は「乗務終了後の自動点呼を実施中。『業務前』もすぐに始めたい」「運行管理者の長時間残業をなくすため、完全自動点呼を導入したい」などの声があがっていた。
ところが7月23日現在、業務前自動点呼の先行実施を申請したトラック事業者はゼロの状況だ。その理由は実施要件に対応した機器・システムが、現時点で存在していないことにある。国が昨年1月に業務後の自動点呼を制度化した際、業務前自動点呼実現についても実現に向けた方向性を示していたものの、実施要件と機器・システムの性能との間ですりあわせが進まなかったこともあり、機器メーカーの開発に遅れが生じた結果となった。トラック事業者が利用できる機器・システムは、国が認定する必要があるが、認定を受けた機器・システムが1機種もないため、事業者は申請したくてもできない状況だ。
「どうしようもない」と不満の声も
トラック業界関係者からは「スタートと思ったら使える機器がないのだから、どうしようもない」「機器メーカーの対応が遅すぎる」「早急にニーズに対応していただきたい」などの不満の声があがっている。これに対し、複数の機器メーカーは開発の遅れを認めたうえで「要件をクリアしたシステムは夏の終わりか秋の始まりには販売したい」「アプリケーション開発を急いでいる」「来年度早期をメドにリリースしたい」など対応を急いでいる。運行管理者の負担軽減や、ドライバーの健康状態チェックや酒気帯び有無の確認などの確実性向上など、業務前自動点呼に対する期待が大きいこともあり、早期の開発が待たれている。
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