カーゴニュース 2024年9月5日 第5272号
「企業の価値」を実現するロジスティクスへ
――経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート」でも経営戦略と人材戦略の連動が重要であるという記述がありました。人材の重要性を裏付けた主張だと感じます。
北條 「伊藤レポート」の意義のひとつは「企業価値」と「企業の価値」が異なることを示唆した部分だと考えています。企業価値とは一般的に財務価値のことを指しており、株主にこの会社の株を買おうという気にさせるような情報です。これに対し、企業の価値というのはロジスティクスの目標でもある社会的課題の解決に関わる部分です。ESG(環境・社会・ガバナンス)など「企業の価」に関連する活動です。最近は利己だけではなく利他も必要だと指摘されるようになりましたが、環境負荷の低減のためにリードタイムを1日伸ばす、そのためには消費者への説得もできる人材が必要になってきます。日本の社会的状況に対応しなければならないということも含めて、「企業の価値」を考えることが求められます。財務指標だけではなく、非財務指標の部分も重要になるということです。加えて、23年度から人的資本情報の開示の義務化が施行されていますが、自社にどのような人材がいるのかという点も位置づけられてくると考えています。JILSの法人会員の中には、資格認定講座の受講者・合格者数を人的資本開示において報告している企業もあります。例えば、JILSの法人会員は現在1000社弱ですが、そのうち荷主企業は約300社となっています。一方、物流統括管理者の設置が義務化される規模の企業は約3000社とされているので、今後はJILSの荷主会員の約10倍の企業が経営戦略であるロジスティクスと向き合うことが必要になります。
今回の「国際物流総合展2024」はそうした流れの中で開催するのですが、「物流」という活動を含んだ「ロジスティクス」という戦略的見地に立ち、機器・ソリューションを戦略実現のための投資対象として把握することも重要になるでしょう。その意味で4月の法改正とこの度の「国際物流総合展」の開催は、ちょうどいいタイミングで重なったと考えています。2018年に米国のロジスティクス関連団体が開催した全国大会を視察した際に驚いたのは、大学が出展していたことです。話を聞くと、これらの大学では先進的なロジスティクス教育を行っていることをPRし入学を呼びかけており、非常に感動したのを覚えています。将来的には日本でも大学や教育機関などが「国際物流総合展」に参加する環境になることを期待しています。
――最後に来場者の方々へメッセージをお願いします。
北條 現在、物流が社会で非常に重要なトピックになっています。ビジネスパーソンはもちろん消費者の方々にも物流のニュースが届くような時代になってきました。我々としてもこれをチャンスと捉えており、当然出展者や来場者の方々もビジネスチャンスだと考えていると思います。これまで物流展を贔屓にしていた方々はもちろん、まだ一度も足を運んだことがない方々も含め、ぜひ多くの方々にご来場いただきたいと思います。物流展の規模や中身、様々な出展物を体感していただき、会期中の4日間で物流課題解決のヒントを見つけていただければと願っています。
北絛 英(ほうじょう・まさる)
東京都立大学理学部物理学科卒。日本能率協会総合研究所社会環境研究所を経て2002年日本ロジスティクスシステム協会JILS総合研究所に入所。物流・ロジスティクスに係る調査研究に従事。政府の有識者会議委員なども務める
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