カーゴニュース 2024年9月24日 第5277号
トランコム(本社・名古屋市東区、神野裕弘社長)は17日、米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBO(経営陣が参加する買収)を実施し、株式を非公開化すると発表した。MBOの一環としてベインキャピタルが行うTOB(株式公開買い付け)の総額は1000億円規模となる見通し。TOB後はベインキャピタルが出資する買収目的会社が親会社となった上で、創業家である武部篤紀会長と親族が引き続き大株主として、同社株式の3割を間接保有する。
ベインキャピタルの完全子会社である買収目的会社、BCJ‐86が公開買付者となり、トランコム全株式の取得を目指すTOBを実施する。期間は今月18日から10月31日まで。買付価格は普通株式1株につき1万300円で、公表前終値7120円に対して44・66%のプレミアムとなる。TOB成立後、東証プライム市場および名証プレミア市場への上場は廃止となる。
同社の現在の持株比率は、武部会長が全株式を保有する資産管理会社AICOHが28・69%、武部会長が1・91%、取締役最高顧問の清水正久氏が0・54%、米投資ファンドのダルトングループが18・09%、そのほかの株主および新株予約権者が50・77%。TOB後は、公開買付者のBCJ‐86が37・37%以上、AICOHが28・69%、そのほかの株主および新株予約権者が33・94%以下となる状態を目指す。
その後、スクイーズアウト手続きなどを経て、来年1月中旬までにBCJ‐86とAICOHがトランコム全株式を保有する状態へ移行。同1月下旬にはダルトングループおよび創業家による再出資と優先株式の引き受けを行い、武部会長と、武部氏の親族による資産管理会社の合計で30・7%、ベインキャピタル完全子会社のBCPE Nexusが69・3%の株式を間接保有するとともに、ダルトングループがBCPE Nexus株式の14・40%を保有する。
トランコムは株式非公開化後、M&Aや海外展開、新ビジネスなどを加速させ、事業のさらなる成長を図る。具体的には、①サプライチェーンの変化を的確にとらえた主体的な物流提案と実行②物流情報サービス事業の高度化③業界ごとの物流プラットフォーム構築④ASEAN地域での事業拡大⑤他社との協業⑥DX化の推進⑦人材・組織強化――などの経営課題に対して、長期的な視点による事業戦略と資本政策を展開する。
同社ではさらなる成長と企業価値向上に向けた抜本的な施策の必要性を協議する一方で、短期的な収益やキャッシュ・フローの悪化、株価下落などの可能性もあるとして、昨年9月ごろより、MBOと株式の非公開化の検討を開始。同時に、自社の経営資源のみでは人材やノウハウ面で限界があり、外部の経営資源の活用が有益と考え、今年2月から同5月下旬にかけて複数のプライベート・エクイティ・ファンドと協議を行った結果、今年6月中旬に、武部氏がトランコムとの資本関係を一定程度維持し、同社経営に関与することを前提に、ベインキャピタルと共同でMBOを実施する考えに至った。
MBO後はベインキャピタルから取締役数名の派遣を検討するが、原則として現経営体制を維持する方針。武部会長は2022年4月に社長に就任した後、昨年6月の臨時取締役会で代表権のない会長に退いているが、「これまでの豊富な経験をもとに、中長期的かつ大局的な視点で当社の経営方針や資本政策、海外戦略の策定・推進などに関わることに加え、重要取引先との連携・取引関係の深耕においても責任のある役割を担いながら、MBO後も取締役会長として引き続き、同社事業成長に向け経営全般に関わる」(トランコム)という。
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