カーゴニュース 2024年12月24日 第5303号
化学系専門商社の長瀬産業(本社・東京都千代田区、上島宏之社長)は12日、東京都内で「第3回化学品共同物流オフラインコミュニティ」を開催した。このイベントは、長瀬産業が提供するコミュニティサービス「化学品AI共同物流マッチングサービス」を通じて、化学品物流における「2024年問題」の解決に向けた機会創出を目的としており、2月の東京開催、8月の大阪開催に続く3回目の開催。講演や、共同物流をスタートした企業によるパネルディスカッションのほか、参加者同士で情報を共有するフリーディスカッションが行われた。
開会に先立ち、長瀬産業の機能化学品事業部・樋口増生事業部長が登壇し「『2024年問題』が始まり共同物流への注目が高まっている。国土交通省と経済産業省が開催する化学品ワーキンググループでも業界の垣根を越えた議論が交わされており、オフラインコミュニティを通じて横のつながりが強化され、課題解決のきっかけになれば幸いだ」と挨拶した。
最初のプログラムでは、矢野経済研究所の田中里奈氏が、物流市場の最新動向と共同物流の現状および今後の方向性について解説した。田中氏は、物流業界は荷主を含めた商習慣の見直しが求められており、労働条件の改善や生産性の向上、環境負荷低減の取り組みが必要だと指摘。共同物流は効率化につながる一方で、コスト配分や情報共有の難しさなどの課題があると説明した。
続いて、高末の事業推進運送グループ・後藤尚紀グループ長が、中継輸送を活用した「2024年問題」対策について講演した。後藤氏は、現在の物流をとりまく環境について①リードタイムの維持②輸送の多様化③コスト増――が課題であるとした上で、同社が提供する中ロット(1~3t)混載輸配送サービス「タカスエロット便」を紹介した。
長瀬産業からは機能化学品事業部の仲吉陽祐氏が「化学品AI共同物流マッチングサービス」の推進状況について紹介した。現在、会員企業は70社となり、2件の共同物流が成立、今後さらに73件が成立する見込みであると報告した。また、来年の2月より、静岡の拠点を活用した東京・大阪間の中継輸送を実証する「中継輸送コミュニティ」を立ち上げると発表し、参加を呼びかけた。
「化学品AI共同物流マッチングサービス」を利用して12月から共同物流を開始した企業によるパネルディスカッションも行われた。成立した共同物流は、石川から大阪へ年間240本の製品輸送を行っている物流事業者と、大阪から富山に年間87本の製品輸送をしている化学品メーカーによるもので、大阪への輸送を終えた物流事業者の10tトラックが、化学品メーカーの製品を富山まで輸送するというもの。化学品メーカーは、「発荷主として『2024年問題』の対策を考えていたが、社内に物流を主幹する部署がなく調整など難しい点もあった」と振り返り、「ルートデータを『化学品AI共同物流マッチングサービス』に登録しないと、マッチングは成立しない。荷主企業も物流事業者も、会員企業は積極的にデータ登録してほしい」と呼び掛けた。物流事業者は、「大阪からの帰り荷を安定して得ることは重要だと考えていた。共同物流に違和感はなく、スムーズに参加できた」と話した。
プログラムの最後には、参加者を複数のグループに分けてフリーディスカッションが行われ、各社の物流課題や、取り組みに対する活発な意見交換が行われた。
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