議連の加藤会長

カーゴニュース 2025年2月20日 第5317号

トラック更新制
許可有効期間は5年、悪質事業者を排除

白トラ利用を荷主の違反原因行為に

2025/02/19 17:00
トラック輸送

 自民党トラック輸送振興議員連盟(会長=加藤勝信衆議院議員)は17日に総会を開催し、トラック運送業の健全化に向け、事業認可の更新制などを盛り込んだ貨物自動車運送事業法の改正法案と制度運用に伴う新法の骨子を明らかにした。有効期間を5年間とする許可更新制度を導入するとともに、更新制度を運用する公的機関として「適正競争推進機関(仮称)」を新設する考え。また、新制度と実施機関が運用を開始するまで3~5年程度の猶予期間を設ける。

 

 当日の総会には、全日本トラック協会(坂本克己会長)国土交通省物流・自動車局の幹部らが出席。坂本会長が貨物自動車運送事業法の一部改正と新法にもとづく制度を創設することで、悪質事業者を市場から退出させることが急務だと訴えた。出席した議員は改正法案の骨子案を了承し、今国会での成立を目指すことで一致した。

 

悪質事業者の排除と収受運賃引き上げを目指す

 

 貨物自動車運送事業法の改正骨子案では、事業許可の有効期間を5年間とし、一定のチェックを行い、悪質な事業者と認められた場合は許可を延長せず、5年超えて事業を行うことができないようにする。また、事業者が標準的運賃を収受できるよう法的根拠を付与する。併せてトラック運送業の多重下請構造の適正化を図るため、下請への委託を原則として2次までにとどめる措置を講じる。加えて、荷主に対する新たな規制として、荷主が自社車両ではない白ナンバートラック(営業トラックではないトラック)を利用した運送委託を行うことを荷主の違反原因行為に追加することとした。

 

 許可更新制度を導入し、適切なチェック機能を果たすには現行の運輸局・支局体制では人員面でも不十分との考えに立ち、制度運用を担う公的機関として「適正競争推進機関(仮称)を新設することとし、新たに特別措置法を設ける。

 

 これまでも悪質なトラック事業者を排除するための規制的措置は貨物自動車運送事業法に設けられていたが、現行制度は十分に機能しているとは言えなかった。一方で、昨年に改正物流法が成立・公布され、荷主に対して物流改善に取り組む努力義務を課し、大手荷主には改善計画の策定・報告や物流統括管理者の選任を義務化する規制的措置が適用されることが決まった。一方で、改正物流法では大手トラックなど元請事業者への規制が実施されるが、コンプライアンス違反や不当に安い運賃で輸送を行う中小事業者への規制は設けられなかった。この点を問題視した全日本トラック協会は、業界が〝自ら襟を正す〟ため、新たな制度の創設を目指すことを決めた。

 

 同日の議員総会で挨拶に立った議連の加藤会長は「物流なくして国民生活と経済発展は成り立たない。物流が血液だとすれば、トラックは人体のすみずみに血液を運ぶ血管のような役割を担っている」と述べ、トラック運送業の持続可能性を維持するには、改正法と新法を成立させ、新制度によって運送業界を適正化することが不可欠だ」と述べ、議連が一丸となって今国会での成立を図るよう呼び掛けた。

労働環境改善へ、業界適正化をやりぬく

 

 全ト協の坂本会長は「トラックの世界で『悪化が良貨を駆逐する』ことがあってはならない。エッセンシャルワーカーであるドライバーの賃金を引き上げるには、法令違反を行い、不当に安い運賃で運送を請け負う悪質な事業者を市場から退場させることだ」と述べ、更新制の導入により一部の事業者が排除される可能性について「同じ業界の仲間に対して忍びない思いもある。とはいえ、ここで業界の適正化を図らない限りドライバーの労働環境は改善されず、賃金の引き上げも実現しない。血を流す思いで業界の適正化をやりぬくべきだ」と力を込めた。また、「賃金引き上げの原資となるのは適正運賃の収受だ。標準的運賃を収受できるよう法的な根拠を与えることが重要だ」と強調。加えて「荷主が緑ナンバー(営業トラック)ではなく、不適切に白トラ(自家用トラック)を使っていることも運賃水準の引き下げにつながっている。法改正による取り締まりが必要だ」と訴えた。

全ト協の坂本会長
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