開発に参入するデベロッパーも増えている

カーゴニュース 2024年4月23日 第5236号

ズームアップ
賃貸型コールドストレージが浸透

マルチ型物件、26年に20棟規模

2024/04/23 13:44
倉庫・物流施設 物流データ・統計・調査

 CBRE(本社・東京都千代田区、辻貴史社長)はこのほど、「コールドストレージの今―新しいマーケットを拓く」と題するレポートを公表した。従来、コールドストレージは自社開発またはBTS型の物件が圧倒的多数で、複数テナントに賃貸するための開発は難易度が高いと考えられてきたが、不足感が年々強まる中で、開発に取り組むデベロッパーや投資家も増えて来ている。CBREでは「企業の間で、賃貸型コールドストレージの利用は今後少しずつ浸透する」と予想している。

 

 主要都市でひっ迫、施設の老朽化、雇用確保も課題

 

 コールドストレージについて、収容可能なスペースに対する貨物量を示す庫腹占有率をみると、主要都市では100%に近づいており、収容能力に余裕がない。とくに、横浜では104・1%とひっ迫度が最も高く、次いで東京が99・1%、神戸が94・8%と続く。これらの都市には国内有数の国際貿易港があり、大型コンテナ船で日本に到着する輸入食材の多くを扱っている。これら貿易港には検疫所があるため、港の近くに大容量の保管倉庫が必要となる。国際的な価格変動や政情不安等による物流の停滞など、近年は保管量の増加を促すような事情も多く、コールドストレージの利用増につながっているとみられる。

 

 施設の老朽化について、築40年以上の物件は東京都ではコールドストレージの全容積の45%を占め、兵庫県では43%、千葉県では48%。全都道府県の中で最もコールドストレージの容積が大きい神奈川県でも、築40年以上の物件の比率こそ11%と他県に比べて低いものの、築30~40年は33%と10都道府県の中で最も多い。これらの都道府県で建て替えが進んでいないのは、庫腹占有率が上がってきたことで荷物の移管先が限られていることも理由のひとつとなってる。冷凍冷蔵設備の耐用年数は25年程度で、何らかの設備交換を経た上で使い続けられるが、設備に支障はなくとも、建物が適切に更新されないことには、耐震性能やBCPの観点から問題となる可能性がある。


 物流業界の雇用不足の要因のひとつとして、労働環境の劣後が挙げられる。コールドストレージの場合、作業環境は5℃以下がほとんどで、場合によっては零下もあり得ることから、物流業界の中でもとくに雇用確保が難しい。従業員の高齢化も課題で、雇用不足は年々高まることが想定される。そのため、冷凍冷蔵食品を扱う物流企業の多くは、庫内作業の機械化を進め、過酷な環境での人的作業を減らすことを目指しており、建物の老朽化対策とも相まって、機械化に適した新しいコールドストレージへのニーズは少しずつ高まるとみられる。

 

 建築費高騰、ドライよりも高めの賃料に期待

 

 コールドストレージの更新需要はあるが、利用者である物流企業にとっては、単価や利益率が低い食品を扱う設備の新設や建て替えの投資負担は相対的に重い。そのため、これまでは自社施設やBTS型専用センターが圧倒的多数であったコールドストレージ市場でも、施設を賃借する事例がみられるようになった。22年から23 年にかけて竣工した4棟のコールドストレージはいずれもテナントが確定済みとなっている。

 

 テナント未決定の状態で開発がスタートしたマルチテナント型のコールドストレージとしては、18年の竣工物件が最初の一棟で、その後、22年以降に開発は本格的に増え始め、首都圏と近畿圏を合わせると、26年までにマルチテナント型のコールドストレージは20棟が数えられるまで拡大する見通し。計画地をみると、湾岸部が多数を占め、湾岸部はもともとコールドストレージが集積しており、既存施設の代替や増床のニーズを捉えやすく、比較的大容量の施設が求められる。一方内陸部は、最終消費地に近いことから高い配送効率を目指したニーズが中心となる。


 コールドストレージの開発が増えてきた背景には、建築費の高騰の影響もある。物流施設の運用利回りが圧縮される中で、コールドストレージは通常の物流施設(ドライストレージ)に比べて高めの賃料が期待できるとして、デベロッパーや投資家の関心が高まった。マルチテナント型のコールドストレージ開発に参画する企業は26年竣工物件まで含めると10社を超える見通し。テナントに好まれる機能としては、①近年の技術革新によって可能になった可変温度帯仕様(マイナス25℃~+10℃)②賃借面積の柔軟性が高い物、③自然冷媒を使用した冷凍冷蔵設備――を挙げる。

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