カーゴニュース 2025年6月26日 第5350号
ファッションEC「ZOZOTOWN」を運営するZOZO(本社・千葉市稲毛区、澤田宏太郎代表取締役社長兼CEO)の基幹物流センターである「ZOZOBASEつくば3」(茨城県つくば市)は、アパレル業界では難しいとされていた自動化物流拠点として、同社の事業成長を支えている。将来的な人材不足に対応し、国内初導入となる吊り下げ式の自動仕分けシステムをはじめとした多くの自動化機器を導入。既存拠点と比較して3割の省人化を実現している。また、休憩スペースの充実や作業の定点化を高めるなど、働きやすい職場づくりにも注力。本格稼働から2年目を迎え、今後もより効率化を加速させていくとともに、自動化機器の他拠点への展開も視野に入れる。
従来比約4倍の約100億円を投資した自動化拠点
ZOZOのメイン商材であるアパレル商品を中心に、全国に向けて商品を発送する「つくば3」は、同社の物流拠点「ZOZOBASE」として全国で5拠点目となる。プロロジスがZOZO専用に開発したBTS型施設の「プロロジスパークつくば3」で2023年11月に本格稼働した。延床面積約13万7000㎡の5階建てで、同社の物流拠点として最大規模を誇る。
同拠点の立ち上げにあたっては、従来拠点の約4倍にあたる約100億円を投入し、様々な自動化機器を導入している。これにより、既存拠点と比較して3割の省人化を実現した上で、1時間あたり約1万件の出荷能力を備えた。また、同拠点の開設により「ZOZOBASE」全体の在庫保管能力を約1・3倍に引き上げた。
ZOZOフルフィルメント本部オペレーションデザイン部ディレクターの桐山慎一郎氏は拠点設計について「コンセプトは効率化。将来的な人手不足を見据え、国内初となる最新機器などの設備投資を積極的に行い、自動化を推進した」と説明する。
主に取り扱うアパレル商品は多品種小ロットであるうえ、荷姿が多様であるため、物流拠点のオートメーション化が難しい分野と言われている。最適な自動化機器を選定して実運用につなげるため、あらかじめ導入する自動化機器やオペレーションの流れを入念に再評価したうえで緻密な設計を行った。
導入した自動化機器は各オペレーションに応じて合理化を追求し、複数のベンダーから選定。これによりWCS(倉庫制御システム)の数が増えて複雑化するリスクはあったものの「立ち上げ時の調整など大変な作業もあったが、経済合理性などを含めメリットがあり、チャレンジする意義があった」(桐山氏)と振り返る。
「ポケットソーター」で複数注文の仕分けを効率化
導入した自動化機器の中で「つくば3」の最大の特徴となるのは、出荷エリアに整備した吊り下げ式の自動仕分けシステム「Pocket Sorter(ポケットソーター)」だ。国内初導入となる同システムは豊田自動織機のオランダ子会社であるVanderlande製となる。複数商品の配送先が同一であるマルチオーダー(複数注文)向けの仕分けシステムで、ポケットに商品を1点ずつ投入すると、全長約7㎞にわたるレーンを走行しながら自動で商品の仕分けを行い、配送先別に荷揃えした状態で梱包エリアへと運ぶ仕組みだ。約2万6000個のポケットを備えており、1時間で約1万5000点の仕分けを可能とする。
既存の「ZOZOBASE」におけるマルチオーダーの仕分け作業は、2台の仕分け機を使用して行っていた。「ポケットソーター」の導入により仕分けと荷揃えが1段階で済むようになり、大幅な省人化につながっている。
ZOZOは2020年から「ポケットソーター」の導入検討を開始。同システムは海外の物流センターでは導入事例が多かったものの、折悪しくコロナ禍に見舞われたため、海外での稼働現場の視察が難しく、国内にある豊田自動織機の拠点での実機確認にとどまった。また、既存拠点で導入して運用や効果を検証するとしても建物の制約上、難しかったことから、シミュレーションソフトによる検証を何度も重ねたうえで全体設計につなげていくなど、導入までの道のりは課題も多かったという。
500基の「t―Sort」で高速仕分け
「つくば3」における入荷から出荷までのオペレーションの流れとして、5階の入荷エリアには、「ZOZOBASE」で初導入となる豊田自動織機がインテグレートしたMujin製のAGV(無人搬送車)と、パレットを自動でAGVに積み付けるリフトアップ装置(ZOZO専用設計)が稼働している。
各ブランドから入荷された段ボールを積載したパレットは、ハンドフォークリフトでリフトアップ装置へと運ばれる。その後AGVが接車すると、リフトアップ装置がパレットを AGVに自動で積載する。その後AGVはパレットを入荷検品エリアへ通じているコンベアへと自動搬送する。デパレタイズされた段ボールはコンベアを通じて同階の入荷検品エリアへと運ばれる。
同エリアには検品作業卓を152ヵ所、仕分け口数は60口を整備しており、プラスオートメーションが展開するLibiao Robotics製の自動仕分けロボット「t―Sort」が約500基稼働している。
検品後、「t―Sort」に商品を投入すると、ハウスコードの情報をもとに、商品カテゴリに応じた保管先ごとにコンテナへと自動で仕分けていく。検品を定点作業化して省力化につなげるとともに、1時間あたり約3万2000点の仕分けを可能とするなど高速仕分けを実現している。加えて、人手での仕分け作業で発生していた仕分け先の判断などにおける属人化も解消された。仕分けられた商品を積んだコンテナはコンベアで2階から4階の保管エリアへと搬送される。
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