カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号
物流総合効率化法(物効法)が施行されてから10月で20年が経過した。環境問題、労働力不足、物流DXなど時代のニーズを踏まえて、総合効率化計画の認定制度を活用した各種支援の対象や認定要件を見直し、2025年4月の改正では、荷主や物流事業者に対する規制的措置を盛り込んだ。当初は効率的な物流拠点の整備を支援することに主眼が置かれていた物効法がどのような変遷をたどって規制法に行き着いたのか。物効法と最もかかわりの深い「倉庫」の視点から、その歴史と現在地を読み解いてみた。
市街化調整区域で物流施設開発が可能に
2005年10月に施行された物効法は、企業の物流効率化に寄与する計画(総合効率化計画)を国が認定し、倉庫業や貨物運送の事業許可、物流施設の税制特例、物流施設の立地要件について配慮を行うもの。運送、倉庫などを包括して受託する総合物流、いわゆる「3PL」が日本でも普及し始めていた時期でもあり、物効法の認定を受けると、「物流の効率化」という〝お墨付き〟が与えられ、運送や倉庫に関する事業許可の一括取得が可能になったり、一定の要件を満たせば、土地の値段が安く、まとまった規模の用地である市街化調整区域で物流施設を建設できるようになった。
市街化調整区域では原則、物流施設関連の施設を建設することはできない。ただ、従来から、特別積合せ貨物運送事業を行う事業者の一時保管倉庫は建設が可能とされていた。つまり、市街化調整区域で物流関連の施設を建てることができるのは、物流事業者のなかでも特積事業者のみで、一般のトラック事業者や倉庫事業者は建てることができなかった。物効法により、同法の認定を受けた「特定流通業務施設」については「都市計画法の処分の配慮」として特定流通市街化調整区域でも開発許可を取得して、物流施設を建設できるようになり、一般のトラック事業者や倉庫事業者にも開発の道が開かれた。
「物流拠点の整備」から支援対象が拡大
当初の物効法の認定要件は、おもに立地、設備、環境の3つ。立地要件としては、「IC、貨物駅、港湾・空港、流通・工業団地等の5㎞以内」、環境要件としては「CO2削減に効果があること」が挙げられた。この要件からして、物効法がもともと支援対象としてフォーカスしていたのは物流拠点の整備であったことがわかる。法の趣旨に変化が見られたのは、16年の10月の改正からだ。物流拠点の整備に輸送効率化やドライバー不足への対応という色合いが強まった。物流拠点の整備は「輸送網集約事業」との名称となり、物流施設へのトラック営業所の併設、あるいはトラック予約受付システムの導入が認定要件に加わった。
もうひとつの変化は、物効法の支援対象が大きく拡大したこと。物流拠点の整備を含む「輸送網集約事業」のほか、「地域内配送共同化事業」「モーダルシフト推進事業」と主に3つのカテゴリーを設け、海運・鉄道へのモーダルシフト、中継輸送、鉄道やバスを利用した貨客混載輸送、オープン型宅配ボックス導入による共同配送や大規模施設などでの館内物流の共同化にまで対象が広がった。また、この改正は「連携」がキーワードとなっており、物効法の認定には2者以上での連携による事業であることが要件とされ、物流事業者同士のみならず、荷主と物流事業者の連携の促進も期待された。
倉庫税制とのセットで認定要件が厳格化?
物効法といわゆる倉庫税制とがセットになったことも大きな転換点だった。倉庫税制とは、法人税・所得税の割り増し償却を受けるための特例措置を受けることができるというもので、2年ごとに見直しが行われる。特定業種を対象とした税制特例の延長が年々困難になる中で、特例措置の対象を営業倉庫の中でも物効法の認定を受けた「特定流通業務施設」に限定することで、延長を実現してきた。22年4月には物効法の施行規則の一部が改正され、「特定流通業務施設」の設備要件に「物流業務の自動化・機械化関連機器」の整備を追加。要件を厳しくすることで倉庫税制特例の延長が繰り返されてきた経緯がある。
しかし、要件が厳しくなったことも背景に、物効法の利用件数が伸びず、倉庫税制特例の延長が危ぶまれている。倉庫会社からは、「中小の倉庫会社が新規に倉庫を建てるのは至難の業だ。物効法の利用が伸びないために、倉庫税制が廃止されようとしているが、利用できるような制度に変えていくことが必要ではないか」との声が聞こえてくる。一方、「各種設備の導入に際しての国交省の補助金はとてもありがたいと感じている」、「倉庫を対象としたDX投資補助金のような制度は活発に使われている。ニーズがあるところへの支援にシフトしていく必要もあるのでは」という意見もある。
物効法は昨年5月に改正法が成立し、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から「物資の流通の効率化に関する法律」に名称変更。25年4月からすべての事業者に物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務が課せられ、26年4月からは一定規模以上の荷主・物流事業者に中長期的な計画の作成を、一定規模以上の荷主には「物流統括管理者(CLO)」の選任を義務化する。従来、物効法は物流効率化に取り組む物流事業者や荷主を支援する法律という色合いが濃かったが、今回の改正により、物流効率化を強力に進めるために規制的措置が盛り込まれ、支援法から規制法に法の趣旨が変わりつつある。
倉庫業界の関係者は「この20年で法律としての内容や性格が大きく変わったが、もともと物効法という名称自体が大きな構えになっていることもあり、その時々の物流におけるニーズを柔軟に反映してきたことは評価できる」との声も聞かれる。
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