カーゴニュース 2025年11月25日 第5390号
ヒューリック(本社・東京都中央区、前田隆也社長)と日本航空(JAL、本社・東京都品川区、鳥取三津子社長)は18日、成田国際空港至近に開発を進めている国際物流拠点「WING NRT(ウイングナリタ)」の現地見学会を実施し、開発の進捗状況を報告した。航空上屋施設(保税蔵置場)と物流施設が一体化した国内初の拠点となり、施設稼働は成田空港の第3滑走路供用に伴う国際航空貨物量の増加に合わせた2029年春頃を予定している。
「WING NRT」は土地面積約45万㎡に上屋棟1棟と物流棟2棟の3棟を開発するもので、総事業費は約1000億円超を見込む。建物面積は約42万㎡で、このうち上屋棟は約15万㎡となり、JALが1棟利用する。
成田空港まで約10㎞、車で約15分の距離にあり、29年3月に予定する北千葉道路の全線開通により、車での所要時間が約10分に短縮される見通し。また、街区前の県道18号成田安食線は来春から拡幅工事が予定され、片側2車線から4車線に拡張されることで利便性が向上する。街区全体の運営・管理については、運営会社をヒューリックとJALによる共同出資で26年中に設立する予定。同社は物流棟から上屋棟への輸配送といった街区内の物流なども手掛ける。
JALは現在、成田空港の北部貨物地区に6ヵ所の上屋を設けているが、拠点の分散による非効率に加え、一部施設は老朽化や狭隘化の状況にあるため、「WING NRT」の上屋棟に拠点を集約することで、通関と検疫を含めた一気通貫のサービスの提供を目指すとともに、マテハン導入などによる自動化・省人化を図る。上屋棟は1階を輸出エリア、2階は輸入エリア、3~4階はロジスティクス事業エリアとしての利用を予定する。
同社は今後の貨物上屋の運用方針として、拠点集約後は29年から30年代にかけて北部貨物地区の一部と「WING NRT」を併用。成田空港の新貨物地区の整備完了以降は「WING NRT」と新貨物地区を併用する体制を構築する計画としている。
輸出貨物の出荷、最速6時間程度まで短縮へ
現地見学会ではメディア向けに、造成工事の最中にある開発現場を公開した。ヒューリックの黒部三樹専務執行役員は「現在JALと連携して物流棟のテナント候補へのタッピングを行っているが、施設については非常に良い評価をいただいている。工事費が高騰している状況で不動産の賃貸業を展開していくことは非常に厳しいが、賃料よりも『WING NRT』で提供できるサービスを含めたパッケージを強みにテナント候補へアプローチしている」と述べた。
JAL貨物郵便本部事業推進部開発グループ事業プロジェクト統括グループ長の藤本俊英氏は「WING NRT」の強みとして「最大のメリットはスピード。例えば輸出の場合、物流棟で保管された海外向け貨物は、顧客から出荷依頼を受信後、最速6時間程度で成田空港での搭載・出国が可能となる。従来ならば飛行機への搭載まで早くても1日から1日半程度かかるため、このスピードは我々のセールスポイントとなる」と説明。輸入貨物についても、従来の上屋と異なり密閉型の拠点とすることで、生鮮品などの取り扱い品質が向上すると語った。
また、新拠点開設後の貨物取扱量の変化については「2024年度における成田空港の航空貨物量は約197万tで、そのうち当社の取扱量は約67万tとなっている。成田国際空港会社は今後、滑走路の延伸・増設により航空貨物量を300万tに増やす計画を立てており、当社は同空港の貨物量の約3分の1を扱っていることから、拠点開設後の取扱量も同程度の割合まで増えると見込んでいる」と述べた。
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