カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号

インタビュー
倉庫業の魅力を高め情報発信強化を
東海倉庫協会 会長
尾関圭司 氏

社会インフラとして不可欠な機能

2025/11/27 06:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 インタビュー 団体

 自動車関連をはじめ電機、工作機械、半導体など幅広い製造業が集積する東海地区。営業倉庫は地区のモノづくり産業を支えるインフラとして重要な役割を担う。東海倉庫協会(尾関圭司会長)は、愛知県、岐阜県、三重県下の営業倉庫会社で組織するブロック組織として精力的な活動を展開。営業倉庫の役割と直面する課題、協会の重点活動について尾関会長(濃飛倉庫運輸)に聞いた。  (インタビュアー/石井麻里)

 

今年も猛暑、営業倉庫の熱中症対策が課題に

 

 ――地区の物流の特徴と足元の荷動きについてご紹介いただけますか。

 

 尾関 東海地区は製造業が集積しており、製造業の動向が倉庫・物流施設の稼働に与える影響が他の地域と比べて大きいという特徴があります。東海倉庫協会会員の2025年1~7月の荷動きを見ると、入庫量はほぼ前年並みですが、保管残高が減っています。回転率が前年同期比3ptプラスになっており、貨物が入ってきても在庫として積み上がっていかない状況です。その要因としては、米国の関税政策への不安から、製造業の輸出が前倒しされたことが考えられます。一方、財務省の貿易統計を見ると、米国への輸出は金額ベースでここ数ヵ月連続前年割れが続いています。猛暑により飲料や一部の家電の荷動きはありましたが、こうした季節要因を除くと、景気が好調でモノの動きが活発という風には感じられません。

 

 ――倉庫業が抱える課題についてのご認識をお聞かせください。

 

 尾関 人手不足や「2024年問題」に対応するためには、倉庫オペレーションの効率化が不可欠です。それには自動化やIT化を進めていく必要があります。ロボットをはじめとした自動化機器やITツール、それらを導入する際に会員が利用できる補助金・助成金について日本倉庫協会(日倉協)および東海倉庫協会のホームページで紹介し、活用を呼びかけています。また、日倉協からの要望を踏まえ、外国人材の特定技能制度および技能育成就労制度の対象職種に倉庫内作業が追加される方向で調整が進んでおり、人手不足の緩和を期待しています。

 

 新たな課題も浮上しています。2025年6月から労働安全衛生規則が改正され、職場における熱中症対策が義務化され、営業倉庫でも対応が求められています。マルチテナント型の物流施設にはカフェテリアのような休憩施設が整備されていますが、従来型の営業倉庫では空調のきいた休憩所のスペースは限られています。今年のような猛暑が来年以降も続くとなると、スポットクーラーや大型送風機だけでなく、庫内への空調の導入などもいよいよ考えていく必要があるかもしれません。

関税不安で輸出の前倒しも?

荷待ち、荷役時間の可視化→短縮に取り組む

 

 ――「2024年問題」がスタートして1年半が経過しましたが、営業倉庫として何か影響は見られますか。

 

 尾関 「2024年問題」はトラックドライバーの長時間労働を是正するため、ドライバーの残業時間に上限規制を設けたことに端を発しています。ドライバーが運転業務に従事する時間をできるだけ確保するため、荷物を積み降ろす際の「荷待ち」の解消が必要ですが、倉庫や物流センターは荷待ちが発生している“現場”でもあります。

 

 倉庫での荷待ちを解消するツールとして、トラックバース予約システムの導入が進んでいますが、運用面では課題も報告されています。たとえば、倉庫側としてはバースや作業体制の制約により、「午前中は入庫」「午後は出庫」とオペレーションを分けたいのですが、トラック側で午前中の出庫を希望し、入庫と出庫の作業が重なって倉庫側の負荷が増しているケースもあるようです。

 

 ただ、バース予約システムの導入により待機時間や荷役時間が可視化されることで、物流現場で起きている問題をお客様(荷主)と共有し、パレット化やオーダー締切時間の前倒しといった改善策を倉庫から提案できるようになります。このように、「2024年問題」が物流に関わる諸条件の見直しのきっかけとなり、お客様に交渉のテーブルについていただけるようになったことは、倉庫会社にとってもメリットであるととらえています。

 

 26年4月から施行される改正物流法の「1運行2時間ルール」では、原則として荷待ち・荷役等の時間を2時間以内に収めることを求めています。「2024年問題」は実際には「2024年から問題」であり、可視化された待機時間、荷役時間を短縮していく取り組みを、お客様の協力も得ながら着実に進めていくのはこれからだと思っています。なお、倉庫での待機時間を発生させないために、お客様が委託先の物流会社の倉庫内作業のログを取ったり、オペレーションの改善にまで踏み込むケースも一部では見られます。

 

 ――「トラックGメン」が「トラック・物流Gメン」に改組され、倉庫からも情報聴取ができるようになりました。

 

 尾関 トラックについては、各都道府県のトラック協会に「適正化事業調査員(Gメン調査員)」も配置され、情報収集のためのスタッフが充実している印象です。一方、倉庫を担当するGメンは、トラックに比べて体制がやや貧弱な印象です。ただ、倉庫での困り事について行政に情報提供する窓口できたことは、荷主に対する注意喚起にもつながります。たとえばある特定のお客様の倉庫の運営で荷待ちが発生している場合、「倉庫だけの問題ではなく、お客様にも影響が及ぶ可能性がある」ということを説明し、改善につなげることができます。

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