会見する高野氏(左)と福田氏

カーゴニュース 2024年5月23日 第5244号

FOCUS
ヤマトHD 共同輸配送のオープンPF新会社を設立

標準パレット単位で混載・中継輸送を推進

2024/05/23 16:13
FOCUS トラック輸送 効率化・改善

 ヤマトホールディングス(本社・東京都中央区、長尾裕社長)は21日、共同輸配送のオープンプラットフォーム(PF)を提供する新会社「Sustainable Shared Transport(サステナブル・シェアード・トランスポート、SST)」を同日付で設立したと発表した。標準パレット単位での混載・中継輸送を進めることで「2024年問題」を克服し、持続可能なサプライチェーンの構築を目指す。2024年度中の事業開始を予定する。

 

24年度中に1日40便の運行開始を予定

 新会社であるSSTの事業内容は、標準パレットを中心とした輸配送サービスの提供と、共同輸配送オープンプPFの管理・運用。資本金は3億5000万円で、当初はヤマトHDの100%出資だが、24年度中に第三者割当増資を行い、荷主企業や物流事業者など幅広いステークホルダーからの出資を募ることで公益性を高める。すでに、複数企業から出資の意思表示を受けているという。

 

 デジタルPF上で、荷主企業の出荷計画や荷姿、荷物量などの情報と、物流事業者の運行計画をつなぎ、需要と供給に合わせたマッチングを行う。輸配送はヤマトグループだけでなく、リソース情報を登録した物流事業者も担う。基盤システムの構築は、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)で「物流・商流データ基盤」を構築した富士通と共同で進め、24年冬ごろからの利用開始を見込む。同業他社からの閲覧や外部からのアセセスを制限することで、安心して利用できる共同輸配送を実現する。

 

 実際の運行では、①標準パレットの使用②定時運行③セミトレーラやダブル連結トラックなどの高積載車両の活用――により、効率的かつ安定した幹線運行を行う。また、中継拠点を介した輸送を行うことでドライバーの負担を軽減する。24年度中に東京~名古屋~大阪間で1日40線便の運行を予定する。

 

 すでに4月から特定の荷主企業を対象に標準パレットを使った厚木~京都間での輸送サービスを試験的に開始しており、そこで得られたノウハウなどを本運行に活かしていく。

 

将来的には鉄道や船舶とのマルチ連携も

 

 事業開始2年目の25年度末には、1日80線便まで運行を拡大するほか、GHG排出量についても従来比で42・5%減を見込む。また、積載率改善などにより省人化率を従来比で65%高める。

 

 さらに、共同輸配送PFが一定程度の効果を上げた先には、鉄道や船舶など輸送のマルチ連携にも取り組んでいくほか、将来的には自動運転や水素トラックなど再生可能エネルギーの活用も視野に入れていく。

新会社「SST」が目指す姿

荷主が商慣行を変えやすいサービス提供を

 

 21日に国土交通省内で開かれた会見には、ヤマト運輸の福田靖執行役員とSSTの社長に就任した高野茂幸氏(ヤマト運輸グリーン物流事業推進部長を兼務)が出席。

 

 福田氏は「パートナーのビジネスも含めてグリーン物流への転換をともに創造していきたい。グリーンという基盤の上にビジネスを構築していく必要があると考えており、その目的を実現する会社としてSSTを設立した」と新会社の目的と意義を強調した。

 

 高野氏は「BtoBの企業間輸送ではパレットをはじめとする標準化の取り組みが遅れている。ヤマトグループには宅急便で培った約160万社の法人顧客に加え、4000社以上の物流事業者と日常的にお付き合いがあり、社会課題をスピーディーに解決するために当社が取り組む意義がある」と語った。また「物流業界が抱える課題を解決するためには、荷主に商慣行を変えてもらう必要があるが、単にお願いしただけでは変わらない。物流事業者側が商慣行を変えてもらいやすいインフラサービスを提供していくことが大事だ」と強調した。

 

 今年度中に運行開始する40線便については「当初はヤマトグループが主体になるが、むしろ物流事業者に運行を担ってもらいたい」として、幅広く参加を呼び掛けていく。新会社の収益については、「1日200線便の運行で黒字化が見込めるが、利益はまずはドライバーの処遇改善に充てていきたい」として3年目での黒字化を想定しているとした。

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