カーゴニュース 2025年7月15日 第5355号
トラック適正化二法で定められる「適正原価」に、海上コンテナドレージ業界が注目している。海コンドレージでは、国が“目安”として告示した「標準的運賃」の活用が進んでおらず、実勢運賃との乖離が目立つ。海コンドレージは車両や輸送の特性上、一般のトラックに比べて原価が高く、国が示した「適正原価」が“義務化”されることによって、コストに見合った運賃を収受できるようになるとの期待が強まっている。
「標準的運賃」、割増運賃は浸透せず
5年ごとの事業許可更新制や適正原価の義務化などを盛り込んだトラック適正化二法が6月4日に成立した。トラック運送事業の健全な競争環境の実現を目指すもので、なかでも「適正原価」については、トラック運送業界の持続可能性やドライバーの待遇改善へのカギとなる施策と位置付けられている。
従来、適正運賃の収受に向けては、国交大臣が20年4月に「標準的運賃」を告示し、24年3月には物価高を反映し改定が行われた。ただ、全日本トラック協会の調査によると、「標準的運賃」を価格交渉で活用した割合は7割にのぼっているが、「標準的運賃」には強制力がないため、「標準的運賃」の7割以下の運賃水準にとどまっている事業者が5割を超えていた。
「標準的運賃」において、「海上コンテナ車両」は輸送原価が高いことから「トレーラの4割増」という特殊車両割増運賃が定められている。しかし、近畿トラック協会が今年1月に発表した調査では、輸送形態別にみて「海上コンテナ(ドレージ)」の運賃水準は、「標準的運賃」よりも低いことに加えて、「乖離は40%以上50%未満」と乖離度が高くなっている。
そもそも、「標準的運賃」を活用していないケースもある。「実勢運賃とまったく違うレベルなので参考にならない。1~2割の差ならともかく、3~4割の差があるため、荷主との間でも話題にすらならない」と京浜地区の海コンドレージ会社は実情を話す。なお、「運賃水準は昭和のタリフの4割程度の水準で、満額収受はとても無理」という。
トラック適正化二法では、国交大臣が「適正原価」を定め、トラック運送事業者に運賃・料金が適正原価を下回らないことを義務付けた。「適正原価」を「継続的に下回らないこと」という補足があるものの、原価割れ運賃は「法令違反」と見なされるため、「標準的運賃」よりも強制力があり、海コンドレージでも浸透する期待がある。
一般のトラックと比べ高い輸送原価
海コンドレージは一般のトラックと比べて輸送原価が高く、「原価」があらためてフォーカスされたことを業界では歓迎的に受けて止めている。まず、海コンドレージはトラクタ(ヘッド)に加え、コンテナ積載用のシャーシを用意しなければならず、その分、車両費、車両関係税、整備費、車庫費がかかる。
海上コンドレージのドライバーは大型・けん引免許が必要であるため、給与水準も高く、人件費も高い傾向がある。また、コンテナヤードの混雑により長時間待機が発生するなど輸送効率が悪く、横転防止や安全への配慮から平均速度も遅いため、燃料費も含め運送にかかる費用は割高になっている。
港を発着とする海コンドレージを円滑に遂行するには、おおよそトラクタ1台につきシャーシ3台が必要。トラクタの車庫とは別に、コンテナから切り離したシャーシを一時的に仮置きしておくスペース(シャーシプール)も用意しなければならず、その賃貸借料金も発生する。一連の費用を積み上げた「適正原価」が強制力をもって適用されることへの期待は大きい。
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