カーゴニュース 2024年7月9日 第5257号
キユーソー流通システム(本社・東京都調布市、富田仁一社長)は昨年末に全国70社ある協力運送会社への支払い運賃を平均5%引き上げ、その効果が表れ始めている。半期が経過して、協力運送会社から「安心感が得られた」と歓迎されるとともに、荷主企業との交渉でも概ね理解を得られているという。当時、社長として施策を断行した西尾秀明会長は、「今回の運賃引き上げは“第1ステップ”」と話し、今後のさらなる取り組みも示唆する。
支払い運賃の引き上げはこれまで個々の案件に対して判断しており、会社として大きく方針を打ち出したのは昨年末が初の試み。「従来は傷口に絆創膏を貼るようなもので、抜本的な解決にはなっていなかった」(西尾氏)として、協力運送会社70社に対して、トラック1台当たりの運賃を平均5%引き上げた。
その意図を、西尾氏は「『2024年問題』を控えた協力運送会社が安心感を持って当社の業務に当たってもらえるようにするためだった」と説明する。同時に、支払い運賃引き上げの事実をメディアにも公開することで、荷主企業への周知と社員の意識喚起につなげる狙いもあった。「運賃の引き上げには何億円という原資が必要となり、社員にも危機感を持って荷主企業との運賃交渉に当たってもらいたかった」と話す。
実際、この半期で約7~8割の荷主企業に「運賃交渉に応じていただいている」(同)。また、同社が展開する共配便では「適正な運賃をいただいている荷主企業様の荷物を優先せざるを得ない」という。
その上で、昨年末の引き上げはあくまで“第1ステップ”との位置づけにあり、“第2ステップ”としての運賃引き上げも見込む。「この4月のトラックドライバー残業時間の罰則付き上限規制開始を前に、まずはドライバーの残業を減らしても賃金水準を維持できる原資を協力運送会社に保証した。しかし、現在“他の業界よりも2割多く働いて5~10%賃金が安い”運送業界にドライバーが集まるようにするにはより魅力ある賃金水準とする必要があり、さらなる運賃引き上げは欠かせない」との考えからだ。
“第2ステップ”としての運賃引き上げは具体的な方法や条件、時期を検討中にあるが、これに併せて、これまで荷主企業と行ってきた運賃交渉の効果も検証していく。
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