カーゴニュース 2024年9月19日 第5276号
斉藤鉄夫国土交通大臣(写真)は13日、閣議後の定例会見を開き、JR貨物の車両の車輪と車軸をはめ合わせる輪軸組み立て時に不正行為があったことへの対応を説明した。斉藤大臣は「10日にJR貨物から車両の輪軸組み立て時に不正行為があった旨の報告があり、11日には安全確保の観点から、一時すべての列車が運行停止となる事態が生じた。輪軸組み立てでの不正行為は鉄道輸送の安全確保の仕組みを根底から覆す行為であり、極めて遺憾だ」と声を高め、「すべての貨物列車が運行停止となったことは、物流の『2024年問題』への対応や、カーボンニュートラル実現への貢献が期待されている貨物鉄道に対する信頼を大きく損なうものだ」と事態の深刻さを訴えた。
その上で「JR貨物に対し、全車両の輪軸の緊急点検と不適切な取り扱いがされた車両の使用停止を指示した。また、鉄道事業法に基づく特別保安監査を行い、安全管理体制等を確認している」と報告。加えて「12日に全国の鉄軌道事業者(民間の鉄道会社や自治体が運営する鉄道事業体など)に対して輪軸の緊急点検を指示した。国交省としては引き続き、鉄道の安全輸送の確保と不正行為の再発防止の徹底等について厳正に対処していく」と表明し、強い姿勢を示した。
輪軸の緊急点検では、①輪軸組み立て時の圧入力値の記録を至急確認し、不正があった場合は報告する②不正により安全な運転ができない状態の車両が特定されたときは使用を停止する――の2点を指示し、点検結果を報告するよう求めた。点検結果は、JR貨物は今月20日まで、全国の鉄軌道事業者は30日までに報告を要請した。
物流への影響を最小限にくい止める
斉藤大臣は物流への影響について「11日に一時すべての貨物列車の運行が停止されたことから、宅配便の配達に遅れが生じるなど物流において全国的な影響が生じた。同日夕方から順次列車の運行が再開されたが、物流への影響は一部で続いている」と説明し、JR貨物や通運事業者などに対し「関係者が連携してトラックなどの代替輸送手段を確保し、物流の正常化を早急に進めるよう要請した」と述べ、物流への影響を最小限にくい止める姿勢を示した。また、JR貨物に特別保安監査を実施する過程で「同社全体の業務体制や企業風土などの問題も確認を行い、その結果を踏まえ厳正に対処していく」と繰り返した。
斉藤大臣は会見の締めくくりに、自身が清水建設で技術者として17年間働いた経験に言及し「技術者は、安全が最も大切な事項であることを心がけなければならない」と強調。「技術の世界でも技術者の倫理が問われる。各企業に技術者倫理を身につけた技術者が企業の中で活躍することが重要だと考えている」と語った。
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