フリーランス保護法の適用も

カーゴニュース 2024年10月10日 第5282号

ズームアップ
10月からの制度改正、物流への影響は?

処罰強化やコスト負担増の懸念も

2024/10/09 17:00
行政

 2024年10月から、物流にも関連する制度改正が実施された。自動車運送事業者に対する行政処分の罰則強化や郵便料金の値上げのほか、労務関係ではアルバイト・パートタイマーの社会保険加入対象企業の拡大、新たな最低賃金の適用などがある。物流業界でも安全やコンプライアンスの再チェックが求められ、コスト負担増も懸念される。

 

自動車運送事業者の行政処分厳格化

 

 国土交通省は自動車運送事業者に対する行政処分等の基準を1日から引き上げた。酒酔い・酒気帯び運転に対する処罰を強化し、勤務時間等に関する告示の遵守違反や、点呼の未実施に対する処分量定を上げる。当初、2025年1月の施行を予定していたが、3ヵ月前倒しでの実施となる。

 

 「指導監督義務違反」の量定が定められ、酒酔い・酒気帯び運行が行われ、飲酒が身体に与える影響、飲酒運転、酒気帯び運転の禁止に係る指導が未実施の場合、初違反は100日車、再違反は200日車の処分となる。「点呼の実施違反」も新設され、酒酔い・酒気帯び運行が行われ、点呼が未実施だった場合、初違反は100日車、再違反は200日車の処分が科せられる。

 

 トラックでは、勤務時間等告示の遵守違反に対する処分量定を引き上げる。「未遵守計16件」という上限をなくし、未遵守計6件以上で、初違反未遵守1件当たり2日車、再違反は未遵守1件当たり4日車の処分とする。点呼の未実施についても上限を撤廃し、未実施20件以上で、初違反は未遵守1件当たり1日車、再違反は未遵守1件当たり2日車に引き上げる。

 

郵便料金、安定的な提供維持のため値上げ

 

 郵便料金も1日から変更となった。「郵便サービスの安定的な提供を維持していくため」で、おもな改定では、定形郵便物は従来25gまでは84円、50gまでは94円だったのを、重量区分を統合し、50gまで110円とする。通常はがきは63円から85円に、レターパックは、プラスで520円から600円に、ライトで370円から430円に引き上げる。

 

 インフォマートが郵送業務に携わる20~50代の会社員を対象に郵便料金値上げに関する調査を行ったところ、8割以上が値上げを認知し、うち半数が値上げ対策に取り組む予定があると回答。8割以上が値上げを機にデジタル化を推進したいと答えており、電子請求書導入など一層のペーパーレス化が進む可能性がある。

 

パートの社会保険適用事業者が拡大

 

 10月から社会保険が適用される事業者が拡大した。22年10月から、「従業員数101人~500人」の企業等で働くパート・アルバイトが新たに社会保険の適用になったが、今年10月から従業員数が「51~100人」の企業等にも対象が広がる。中小の物流会社でパートを多く使う企業では、企業側が負担する社会保険料が増える。

 

 対象となるパート・アルバイトの要件は、「週所定労働時間が20時間以上30時間未満(週所定労働時間が20時間の場合)」「所定内賃金が8・8万円以上(年収換算で106万円以上)」「雇用期間が2ヵ月超となる見込み」「学生ではない」こと。社会保険の加入を避けるため、パートが就業調整する場合、人手の確保という別の課題も生じる。

 

新たな最低賃金適用、「運輸業」は負担?

 

 10月からは新たな最低賃金が適用される。7月25日の中央最低賃金審査会では、24年の最低賃金は全都道府県一律50円の引き上げが目安とされた。8月29日にすべての都道府県で地域別最低賃金の改定額が発表され、全国の加重平均額は1055円となり、引き上げ額は過去最高となる。

 

 日本商工会議所の調査によると、昨年年10月の最低賃金引上げにより、「最低賃金を下回ったため、賃金を引上げた」企業は38・4%と4割近かった。業種別にみると、「運輸業」では最低賃金引上げの直接的な影響を受けた企業の割合が47・7%、現状の最低賃金が「負担になっている」との回答が73・5%を占め、今年も影響が懸念される。

 

11月からはフリーランス保護法が施行

 

 10月以降では、フリーランス保護法が11月1日から施行される。軽貨物運送事業者が個人事業主のドライバーに仕事を委託する場合などで、同法の適用となる。違反した場合、発注事業者は行政の調査を受け、指導・助言や、必要な措置をとることを勧告されたり、勧告に従わない場合には、命令・企業名公表、さらに命令に従わない場合は罰金が科される。

 

 新法では、書面などによる取引条件の明示、報酬の支払日の設定と期日中の支払いを求め、1ヵ月以上の業務を委託した場合、減額や買いたたきといった7つの禁止行為が定められている。このほか募集情報の的確な表示や、育児介護等と業務の両立に対する配慮、ハラスメント対策なども規定されている。

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