カーゴニュース 2024年10月17日 第5284号
食品業界向けの総合展示会「FOOD展2024」が9~11日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催され、中日の10日には、メーカー・卸・小売の3層が取り組む加工食品分野の物流改革をテーマとしたパネルディスカッションが開かれた。パネリストには、加工食品物流のキーマンが選ばれ、メーカーから日清食品常務取締役サプライチェーン本部長兼Well-Being推進部長の深井雅裕氏、卸から日本加工食品卸協会(日食協)専務理事の時岡肯平氏、小売からライフコーポレーション首都圏物流部部長の渋谷剛氏が出席した。コーディネーターは流通経済研究所特任研究員の堀尾仁氏(前・味の素物流企画部長)が務めた。加食サプライチェーンの関係者が多数参加し、熱心に耳を傾けていた。
「従来の延長線上ではない改革」が不可欠に
はじめに堀尾氏が、ドライバー不足と労働時間規制に起因する物流の「2024年問題」を受け、加工食品物流が〝危機〟に直面している状況を報告。今年5月に公布された改正物流法に基づき政府が推進する施策に対応しつつ、加工食品物流に関わるメーカー・卸・小売(製配販)が連携することで「これまで当然のように行われていた作業は〝常識〟を根本的に見直し、従来の延長線上ではない改革が必須となる」と訴えた。
これを受け、日清食品の深井氏が同社の物流改革の現状を報告した。標準化ガイドラインに基づき、伝票のフォーマットは昨年変更を完了し、外装表示を来年度末までに切り替える。輸送では「12型パレット」によるパレット化を100%実現しており、コード体系はJANコード運用に加え、ITFコード運用を検討するとした。また、ビール・飲料メーカーや製紙メーカー、JA全農との業界を超えた共同物流を実施し、トラックの台数削減や積載率向上、CO2排出量の削減を図り、持続可能なサプライチェーンを実現する考えを示した。
物流は「競争領域」から「協力領域」へと進化
日食協の時岡氏は卸が進める物流改善について説明した。メーカー・卸間の協議により納品リードタイム(LT)の延長に取り組み、今年8月現在、日食協の賛助会員となっているメーカー120社のうち90社が受注日の翌日納品(LT1)から翌々日以上の納品(LT2~)へ納品リードタイムを変更するなど、トラックへの負担軽減が一定程度進んでいる現状を報告。また、次世代標準EDI「流通BMS(ビジネスメッセージ標準)」を利用し、卸・小売間と比べて遅れている卸・メーカー間の物流と請求・支払業務の高度化を促進し、事前出荷情報(ASN)を活用することで検品レス・伝票レスなど物流効率化を図るとした。
ライフコーポレーションの渋谷氏は、物流は「競争領域」から「協力領域」へとあり方が変わりつつあることを踏まえ、持続可能な食品物流の構築を図るため、昨年3月にサミット、マルエツ、ヤオコー、ライフコーポレーションのスーパーマーケット4社が物流分野での協力・連携を図るため「首都圏SM物流研究会」を設立。現在は、SC全体の物流改善を図る「SM物流研究会」を全体会とし、「首都圏SM物流研究会」をエリア部会とする体制で課題の解決策を検討。今年度の全体会は、①パレット納品の拡大②共同配送や空きトラックの有効活用③生鮮品物流の課題解決④チルド物流の課題解決――に注力するとした。
軽量製品のパレット化は「もう少し時間を」
製配販それぞれの立場からの発表の後、意見交換を行った。渋谷氏はパレット納品の拡大が最重要項目のひとつだとした上で「菓子・ラーメンのメーカーでパレタイズが進まないが、どうすれば進むのか」「加食メーカーと菓子・ラーメンメーカーで、荷役作業範囲など運用ルールが統一されていないが、統一するつもりはあるのか」と問いかけ、それに対し、深井氏は「現在のパレット化のルールは、加工食品の中でも比較的重量のある製品を中心に考えられていると思われる。菓子や即席めんなど容積勝ちで軽量な製品のメーカーにはルールのハードルが高いのではないか。軽量製品のメーカーのパレット化は、もう少し時間をいただきたい」と答えた。
運用ルールに関して深井氏は「作業を変えればいいことであり、統一ルールを決めてもらえれば、菓子・ラーメンの各社はそのルールに従う」と応じた。また、渋谷氏は「小売とメーカーまたは小売と卸による共同配送を行うとすれば、どのようなやり方があるか」と問い、時岡氏が「共同配送は物流効率化の究極の姿だ。実現するにはコードの標準化が前提になる」と述べ、製品マスタなどの標準化が急務だとした。
製配販で「商慣習の見直し」に挑戦
コーディネーターを務める堀尾氏は、労働生産人口の減少が続くことや、物流の担い手の高齢化、時間外労働上限規制が最終的には「960時間」から「720時間」となることが想定されるなど「物流環境を取り巻く状況は今後ますます厳しさを増していく」と述べ、さらなる改革が必要だと指摘。「メーカー・卸・小売が協力しながら、これからも商慣習の見直しに積極的に挑戦することが必要だ」と会場の参加者に呼びかけた。
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