カーゴニュース 2024年11月14日 第5292号
三菱ケミカル物流(MCLC、本社・東京都港区、相川幹治社長)では、全社的なDX推進体制を強化する。全社員を対象としたDX教育により社員のITリテラシーを高め、各種ITツールを活用した“市民開発”を推進。IT専門人材も養成し、大規模なシステム開発でも外注依存の割合を減らす。DXにより生産性の向上とサービスの差異化を図り、化学品業界の構造変化や物流危機に対応できる強靭な経営体質の構築を目指す。
ケミカル品物流分野で最もDXが進んだ会社に
同社は、陸運、海運、倉庫、タンクターミナル、フォワーディングなど化学品物流分野では国内トップクラスの事業基盤を有する。一方で、化学品業界の事業構造の変化や「2024年問題」をはじめとする物流危機に対応するため、さらなる差異化につながる新たな強みを持つことが求められている。
将来を見据えた成長戦略に位置づけたのがDXだ。「ケミカル品物流のリーディングカンパニーになる」というビジョンの達成に向け、経営体質の強化を図るため、全社を挙げてDXを推進。社員のITリテラシー、サービスの質と提案力、労働生産性を高め、ケミカル品物流分野で最もDXが進んだ会社を目指す。
相川社長自らが経営側でDX推進の役割を担う「デジタル推進担当役員」に就任。DX・IT関連組織も整備し、基幹システムや大規模システム開発を担当する部門とは別に、DX推進やDX教育、ICT方針の立案・周知、情報セキュリティを含むICT管理を専門的に担当する組織として、技術戦略部門に「ビジネストランスフォーメーション(BX)部」を設置した。
ITツールを使いこなし社内開発の比率を向上
業種間でIT人材の獲得競争が激しくなっている中、エンジニアの新規採用だけでなく、社内でDX要員を養成する。現業職も含めて全社員を対象にDX教育を実施。IT関連の基礎知識とスキルを測る国家試験「ITパスポート」等の資格取得を支援し、2025年度までに300人の取得を目標とする。
さらに、オンライン学習やグループ勉強会を通じて各種ITツール(マクロ、Python、Power Apps等)の知識を習得。次のステップではこれらのツールを使いこなし、BX部や各支社に配置した「DXコーディネーター」のサポートのもと、簡単な業務の効率化・自動化システムを社員自らが“市民開発”できるようにし、社内開発の比率を向上させる。
21年から24年9月末までに、市民開発の累計稼働本数はRPA(Robotic process automation)も含めて219本にのぼる。事例やノウハウを共有するため、社内のDXポータルサイトに「DX玉手箱」を設置。モチベーションを高めるため、DXの成果に対する報奨制度の創設も検討している。
「ビジネスアーキテクト/デザイナー」の養成も
社内基幹システムやWTMS(倉庫実務管理システム)、自動配車システムなど大規模プロジェクトに参加し、社外関係者と協働でシステムを構築する専門人材も養成する。プロジェクト管理、システム要件定義、設計、開発、リリース、改修、保守・運用について、ベンダー任せにせず、社員が主体性をもって実施できるようにする。
9月には、高度DX人材に位置付けられる「ビジネスアーキテクト/デザイナー」の養成コースをスタートさせた。システムの運用・保守を内製化するための「セミエンジニア」、「DXコーディネーター」も併せて養成し、これら3種の人材が全社的なDXをリードする役割を担う。
一連の取り組みにより、25~30年に外部に支払うIT関連経費を19~24年比で15%削減を目指す。川守田潤平BX部長は、「課題解決を自分事としてとらえ、業務を可視化し、どの工程で自動化・システム化が必要か自分たちで考えることが重要。ITスキルを身に着け、まずは自分たちの手で解決にチャレンジできるようにしたい」と話す。
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