カーゴニュース 2024年12月19日 第5302号
ドライバーの健康問題に真正面から取り組む
睡眠への質に対し関心を強めているのが、トラック運送業界だ。2018年6月1日から、睡眠不足のドライバーを乗務させないため、点呼時にドライバーに対して睡眠の状況を確認することが義務付けられ、安全運行のためにドライバーに良質な睡眠を確保することは、トラック運送会社の果たすべき責務となっている。
ネスレ ヘルスサイエンスマーケティング&メディカルアフェアーズ統括部ヘルス&ビューティーグループの藤原亮太プロダクトマネージャーは、「4月から時間外労働の上限規制が適用となったドライバー、医師、建設業などは他の業種と比べて質・量ともに十分な睡眠の確保が難しい。睡眠プログラムは特にそうした業種の方に役立てたいという思いでサービスを開発、提案している」と話す。
プログラムの立ち上げにあたって、ネスレの取引先企業の健康をサポートできないかと考え、持続的な物流の構築においてネスレと長年協業を進めてきたリクサスに、同プログラムを提案。両社は、同プログラムを活用し、ドライバーのより良い睡眠習慣の確立を目指して協力することとなった。
リクサスグループで主に長距離輸送を担うリクサスカーゴの桝本富也社長は、「ドライバーの長時間労働が社会問題となっている中で、タイムリーに、この睡眠プログラムのお話をいただいた。会社としてドライバーの健康問題に真正面から取り組むきっかけになると考えた」と導入の経緯を話す。
これまでもリクサスカーゴではドライバーの長時間労働抑制や健康管理に関し、独自の取り組みを実施。自社および協力会社の長距離ドライバーにトラックの中でなく、営業所内に新設した専用の宿泊施設で寝ることをルール化したり、責任感の強いドライバー職の性分でもある「早出出勤」をなくすため、適正な出勤時間の厳守を徹底していた。
こうしたドライバーへの健康配慮の取り組みがベースにあって、ネスレの睡眠プログラムの導入に至ったもので、リクサスグループの計4社から自発的に参加を希望した29人のドライバーを対象に9月からトライアルを開始。ネスレ側で1ヵ月間のデータを集計し、解析を行っている。
試験導入から2ヵ月が経過し、ドライバーからは、「今までよりも寝つきがよくなった」「深く眠れている」などの感想が寄せられているという。これについて、マーケティング&メディカルアフェアーズ統括部メディカルアフェアーズグループの鎌田征和グループマネージャーは「感覚的に眠りが深くなった――というのがとても大事」と指摘する。
鎌田氏によると、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」においても、単に「睡眠時間」だけでなく「睡眠休養感」、すなわち朝の目覚めの時に生じる「朝の目覚めた時の「心身が休まった感じ」が健康の維持には重要であるとされている。GABA成分には、寝つきや眠りの深さだけでなく、すっきりした目覚めに役立つ機能が報告されている。
リクサスでは睡眠プログラムにより睡眠を可視化した資料の活用とともに、今後は全社員を対象に導入を目指す。藤原プロダクトマネージャーは、「食品メーカーであるネスレのビジネスは、物流業界なくしては成り立たない。物流に携わる人の健康をお手伝いすることは当社の責務であり、そうした流れをリクサス様とつくっていきたい」と意欲を見せる。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。