カーゴニュース 2025年1月16日 第5308号
いすゞ自動車(本社・横浜市西区、南真介社長COO)は8日、物流・交通分野における研究活動を推進するため、東京大学(東京都文京区、藤井輝夫総長)の東京大学基金に10億円を寄付したと発表した。東大はエンダウメント(大学独自基金)型の基金を設置し、基金の運用益などを財源に恒久的な研究組織として、大学院工学系研究科内に「トランスポートイノベーション研究センター」を2月1日に開設する。専任教員を選定し、学部生や院生、研究員を受け入れ、今春から本格的に研究活動を開始する予定。産学共同で物流・交通分野の研究活動を推進していく。
両者はこれまで大学の教育研究機能を活用した物流や交通の社会課題を解決するイノベーションの創出を議論してきた経緯がある。東大は自律的・持続的な創造活動を推進する経営モデルとして「エンダウメント型財務経営」への変革を目指しており、今回、この枠組みを活用し、物流・交通分野に特化したエンダウメント型研究組織を設置することで合意した。この制度による研究組織の設置は東大としては2例目で、上場企業からの寄付をベースとした設置は初の事例だという。
「トランスポートイノベーション研究センター」は本郷キャンパスに開設し、物流・交通インフラに対する技術革新の基盤である社会基盤学、都市工学、機械工学、システム創成学などの領域を軸に、AI、自動化技術、センシング技術など工学の幅広い領域をカバーし、諸課題の解決に向けた研究に取り組む。多分野を横断する公民学の領域とも連携し、新たな交通システムとの社会実験を進め、さまざまな研究分野を接続するネットワーク型交通社会実験の実施、実践展開を図るほか、物流サービスプラットフォーム、共創物流、物流センシングなどの課題にも取り組み、社会経済活動の円滑化を目指した研究活動を展開する。
8日に行われた両者共同の記者会見で藤井総長は「自動走行については、その技術の成熟と、『2024年問題』を背景に本格的な導入が見込まれている。本センターでは、交通と物流、そしてそれを取り巻く情報や金融・投資といった諸分野の課題に対し、学内のさまざまな知を結集して、大きく貢献したい」と抱負を述べた。また、いすゞの片山正則会長CEOは「『運ぶ』のイノベーションを持続的に起こしていくには、いすゞだけの取り組みではなく、より幅広い分野、多面的な視点を取り入れていかなければならないという思いを強く抱くようになった。当社がこの研究センターにかける期待は3つ。1つめは、持続可能なかたちで、物流の効率化や人手不足などの課題をアカデミアの観点から解決する糸口を見つける研究が行われること。2つめは未来の『運ぶ』をかたちづくる研究が行われること。そして3つめは人財育成だ。研究活動にはいすゞの技術者も参加する。世界を進化させるイノベーションリーダーの育成が急務であり、さまざまな研究室に民間からの研究者を受け入れ、新たな知の地平が開拓され続けている東京大学との研究によって、大きな化学反応が起きることを期待している」と語った。
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