「標準的な運賃」は延長と見直しが実施された

カーゴニュース 2024年5月7日 第5239号

FOCUS
「標準的な運賃」告示から4年、実効性は道半ば?

3月には8%引き上げ、荷役対価も加算

2024/05/07 17:09
FOCUS 行政 トラック輸送

 トラック運送事業者の健全な経営や賃上げドライバーの賃上げの原資となる「標準的な運賃」が2020年4月に告示されてから4年が経過した。当初は24年3月末までの時限措置だったが、昨年6月の法改正で「当分の間」に延長され、さらに今年3月22日には、運賃水準を8%引き上げるとともに、荷役の対価等を加算した新たな「標準的な運賃」として国土交通省により告示された。業界の要望を汲む形で延長かつ見直しが実現したが、業界団体の調査では「適用が難しい」との回答が4割にのぼるなど、実効性はまだ道半ばだ。

 

24年3月末までの時限措置が「当分の間」に延長

 

 24年4月から働き方改革法に基づき、トラックドライバーの時間外労働の上限規制(年間960時間)が適用される「2024年問題」への対応として、事業者がドライバーを確保し、法令を遵守した事業運営を継続できるよう、貨物自動車運送事業法を改正。20年4月24日に健全な事業運営の目安となる運賃として「標準的な運賃」が告示された。

 

 「標準的な運賃」は、「2024年問題」を迎える前、すなわち24 年3月末までに運賃水準の底上げを図る狙いがあったが、浸透が遅れており、業界からは延長を求める声が上がっていた。このため標準的な運賃の告示制度を延長する改正法が昨年6月14日に成立し、24年3月末だった期限は新たな期限を設けることなく「当分の間」と改められた。


 さらに昨年6月に政府が策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」では、非効率な商慣行の見直しの一環として、トラックの「標準的な運賃」制度の拡充・徹底が打ち出され、「標準的な運賃」および「標準運送約款」について所要の見直しを図ることとし、24年3月22日に新たな「標準的な運賃」が告示された。

 

水準引き上げ、個建運賃、速達割増なども設定

 

 具体的な見直しでは、運賃表を改訂し、平均8%の引き上げを行い、算定根拠となる原価のうちの燃料費を120円に変更、燃料サーチャージも120円を基準価格に設定した。また、荷待ち・荷役等の対価について標準的な水準を提示。現行の待機時間料に加え、公共工事設計労務単価表を参考に、荷役作業ごとの「積込料・取卸料」を加算した。


 荷待ち・荷役の時間が合計2時間を超えた場合は、割増率5割を加算。さらに、標準運送約款で「運送」と「運送以外の業務」を別の章に分離し、荷主から対価を収受する旨を記載。「有料道路使用料」を個別に明記し、「運送申込書/引受書」のひな型にも明記した。また、「下請け手数料」として運賃の10%を別に収受することも設定した。

 

 従来は貸切運賃のみを対象としていたが、共同輸配送等を念頭に「個建運賃」を設定。リードタイムが短い運送の際の「速達割増」、逆にリードタイムを長くした場合の割引、有料道路を利用しないことによる運転の長時間化を考慮した割増を設定。従来からの冷蔵・冷凍車に加え、海上コンテナ車、ダンプ車等5車種の特殊車両割増を追加した。

車種が追加された特殊車両割増

6割が届出済、「適用が難しい」事業者も4割超

 

 「標準的な運賃」の浸透は必ずしも順調ではない。新運賃を届け出た事業者の割合は、24年2月29日時点で58・5%と約6割。一方、東京都トラック運送事業協同組合連合会のアンケートでは「標準的な運賃」を「適用したいができない」(28・8%)、「適用できるかわからない」(17・8%)との回答が合わせて46・6%にのぼる。

 

 トラック運賃の値上げ交渉は行政も強く後押ししている。公正取引委員会と中小企業庁は昨年11月に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表。経産省は価格転嫁に後ろ向きな企業名を公表する。荷主や元請けへの行政の監視強化も後ろ盾に、トラック運送事業者が「標準的な運賃」を活用した交渉を前進させるか注目されている。

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