カーゴニュース 2025年5月8日 第5336号
国土交通省は、法令が定めた最低車両数5台に満たないトラック台数で事業を行っている〝5台割れ事業者〟の取り締まりを強化する。トラック事業許可にあたっては、1営業所あたり最低でも車両を5台保有しなければならないと定めており、5台割れの改善指導に従わない場合は事業許可を取り消すことができるとする通達を1日に施行した。これにより、事業計画として届け出た台数を意図的に守っていない悪質なトラック事業者を市場から排除し、健全な競争環境を整備する狙いがある。
5台以上に引き上げ不可なら廃業も
物流・自動車局長名で「貨物自動車運送事業法第8条第2項に基づく命令の発動基準について」と題した通達を4月18日付で発出し、1日に施行した。通達では、トラック運送事業者が提出した事業計画に記載された車両数と実際の車両数が異なる場合、事業計画を変更するよう命令することを規定。
具体的には、運輸支局は事業者を呼び出し、事業計画に従って事業を行うよう指導し、事業計画の変更などを命令する。命令の日から3ヵ月以内に改善報告を提出し、報告内容に応じて事業計画を変更する認可申請や変更届を行う。期間中に報告や申請が行われない場合や、変更申請が認可されなかった場合は、命令違反として取り扱い、行政処分を行う。
事業計画に従って事業を行うよう再度命令を発動し、それでも従わなかった場合は事業許可を取り消す。事業許可は1営業所につき最低車両数5台と定めていることから、事業を継続するには車両数を5台以上に引き上げる必要があるが、それができない場合は、許可が取り消され、廃業することになる。
命令に従わない事業者は市場から退出
貨物自動車運送事業法第8条は、届け出た事業計画に従って業務を行うよう事業者に対し命令を発動できると規定しているが、これまでは命令を発動する基準が明文化されておらず、法令違反の事業者を認識していながらも、重大な違反でない場合は「見過ごされる」ことにつながっていた。
都道府県トラック協会が委託を受けて実施している適正化事業実施機関による巡回指導や、国による監査の結果、事業計画の届出と異なる車両数で事業を行っている事業者を確認した場合も、事業計画の変更命令や、法定の車両数への引き上げを命令することが行われないままとなっていた。
今回の通達により〝5台割れ事業者〟に対し、事業計画通りの車両数で事業を行うよう指導し、それに従わない場合は事業許可を取り消すことができるようになった。国交省関係者は「法令違反の事業者を取り締まりやすくなった。改善命令に従わない悪質な事業者は市場から退出していただくことになる」としている。
なお、〝5台割れ事業者〟は事業コストが相対的に低いことから、相場を大きく下回る運賃で受注するなどして、値崩れを招く元凶だと指摘されるケースも多く見られた。事業許可を受けた後、意図的に届け出台数を減らす「参入後減車」の事業者があることも問題視されていた。
こうした事態に対し、トラック協会など業界団体は、違法事業者は運送業の市場健全化を阻害するものとし、国による取り締まり強化を要望していた。国交省は今回、地方機関とも慎重に協議を行ったうえで、命令の発動基準を定め、悪質事業者の許可取り消しへの道筋をつけた格好だ。
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