カーゴニュース 2025年5月8日 第5336号
4月1日付で日本運輸倉庫から社名変更したJR貨物ロジ・ソリューションズ(本社・東京都中央区、野村康郎社長)。JR貨物が長期ビジョンや中期経営計画で掲げる総合物流戦略を担う会社として新たなスタートを切った。
1949年に設立された老舗倉庫会社として、貨物駅構内の駅ナカ倉庫や貨車が直接入線できる側線倉庫の運営などJR貨物グループの経営を主に倉庫事業から支えてきた同社だが、今回、荷主企業など顧客が抱える物流課題を解決に導く「元請け」としての役割が強く求められることとなった。
野村社長は今回の社名変更について「JR貨物は当社を総合物流戦略の中核企業だと説明しているが、私自身はJR貨物グループの『フロント会社』だと理解している」と語る。「フロントには2つの意味があり、ひとつはお客様の前面に立つということであり、もうひとつはグループの代表(フロント)ということ。元請けの立場からグループが持っている様々なリソースを使って、お客様の問題解決のお手伝いができる会社を目指したい」と強調する。
社名変更を機に自社の「強み」を再検証する中で、見えてきたのは同社だけが持つオンリーワンの機能。「貨物鉄道という機能を優先的に使うことができ、さらに貨物駅構内に駅ナカ倉庫や側線倉庫を持っている物流会社は当社だけ。その強みを加えて、オペレーション品質を磨きあげることで、輸送と倉庫を組み合わせた付加価値の高い提案が可能になる」と意気込む。
元請けとして顧客との契約主体に
JR貨物ロジ・ソリューションズが誕生することで、JR貨物グループの総合物流戦略はどのように変わるのか――。JR貨物本体にある総合物流部が主体となっていた時には、仮に荷主との商談がまとまった場合でも、JR貨物自体は利用運送の資格がないために、最終的な契約主体は利用運送事業者となり、JR貨物は鉄道運賃を収受するのみだった。だが、JR貨物ロジ・ソリューションズが前面に立つことで、元請けとして顧客との契約主体となり、価格交渉も行うことが可能になる。「当社が〝頭をとる〟ことで、文字通りのソリューション提案と実行ができる体制が整う」という。
総合物流企業として、将来的にはトラックや海上、航空などすべての輸送モードと連携することを目指すが、まずは強みである鉄道を中心とした新規営業に力を入れていく。社内に総合物流部を新設し、JR貨物本体の総合物流部から4人が出向。近く出向者が5人に増える予定で、同社プロパーの営業マンを含め営業体制の強化が着々と進んでいる。
新規営業のターゲットに据えているのは、JR貨物の営業部隊が取り込めていなかった中堅企業。「JR貨物の営業部門はどうしても大手企業とのお付き合いが中心となる。そうした顧客層とバッティングすることがないよう、JR貨物本体では手が回らなかった中堅企業などの案件をきめ細かく取っていきたい」と野村社長。また、利用運送事業者の既存顧客とバッティングすることも避ける。「これまで鉄道を利用してこなかった企業を中心に営業し、コンテナ集配業務はグループの日本フレートライナーだけでなく、他の利用運送事業者にもお願いすることでWIN―WINの関係を構築したい」と説明する。
鉄道コンテナ輸送を拡大していく上で課題のひとつとなるのが、緊締車と呼ばれるコンテナ集配車両の不足。このため、貨物駅まで一般トラックで貨物を運び、駅構内でコンテナに積み替える取り組みを増やしていく。「JR貨物が設置に力を入れている積替ステーションに加え、積み替え作業も受託可能な当社の駅ナカ倉庫を積み替え拠点として活用していきたい。駅構内や近隣に数多くの倉庫を運営している当社の強みが活かせる」と強調する。
将来的にはあらゆる輸送モードと連携
将来的には鉄道だけにとどまらず、トラックや船舶、航空などすべての輸送モードと連携強化していくことを目指す。「お客様のニーズに寄り添って、いちばんよい輸送モードを提案していくことがソリューション営業のあるべき姿。鉄道だけにこだわることはしない」と語る。
そのためにはトラック輸送力の強化や内航・フェリー会社などとの連携が不可欠。「JR貨物グループ各社が持っている緊締車両に加え、一般トラックでは求荷求車システムも活用していきたい。今後、取扱量が増えてくれば、グループ会社で車両を増やしてもらうこともお願いしていく。海上輸送では、すでに近海郵船と提携しているが、さらに利用できる選択肢を増やしていく」という。
営業面では今後、JR貨物の営業マンが人事ローテーションで総合物流営業に従事することも検討していく。「JR貨物本体の営業は、どうしてもキャリアとしての鉄道貨物輸送が主体になってしまう。当社で総合物流としてのソリューション営業を経験することで、人材を『育てる場』にもなる」とビジョンを描く。
同社の2025年3月期の売上高は約63億円で、今期は66億円を計画。「増収の相当分で総合物流の新規獲得を見込んでいる。まずは着実に実績を積み上げて新たな挑戦を軌道に乗せたい」と語る。
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