カーゴニュース 2025年6月19日 第5348号
日本郵便(本社・東京都千代田区、千田哲也社長)は17日、不適切点呼問題で国土交通省から示されていた一般貨物自動車運送事業の許可取り消しについて、処分を受け入れる方針を固め、同日、国交省に報告した。これにより、18日に関東運輸局で実施予定だった聴聞は行われず、今月内にも許可取り消し処分が行われることが確定した。
同社は17日に都内で記者会見を開き、千田社長は「郵便やゆうパックを利用している皆様に多大なるご心配とご不安をおかけしたことを、心よりお詫び申し上げる」と謝罪するとともに、デジタル点呼の導入など点呼適正化に向けた再発防止策を公表した。
佐川、西濃などへの外部委託に「ほぼメド」
事業許可が取り消されれば、通販など大口顧客からの集荷や比較的短距離の郵便局間輸送(集配局→小規模集配局)などで使用している積載量1t以上のトラックや大型バンなど約2500台の車両が5年間使用できなくなる。同社はこの対応策として、佐川急便や西濃運輸、ヤマト運輸など郵政グループ外の運送会社への委託を進めるほか、約3万2000台保有する軽車両が業務を代行することで輸送力を維持する方針。
具体的には2500台が行っていた月間約11万8200便の運送業務のうち、34%を郵政グループ外の運送会社への委託、23%を子会社である日本郵便輸送を介した外部事業者への再委託、42%を自社の軽車両でカバーする計画。千田社長は「外部委託などによるオペレーションの確保に概ねメドが立った」と述べた。ただ、軽車両についても今後、車両使用停止などの追加処分が見込まれており、「その場合は、外部への委託比率をさらに増やさざるを得ない」という。
5年間使用できなくなる2500台の車両については早期の売却を進める。また、当該車両の運行に従事している4000人超の従業員については、軽車両や2輪車の運転業務などへの配置転換を進め、雇用は維持する方針。
点呼「まったく実施せず」が12万6000件
会見では、社内で実施した点呼の実態調査で、総数57万8000件のうち、必要項目をすべて実施していなかった件数が12万6000件、点呼記録簿に事実と異なる記載を行った「不実記載」が10万2000件にのぼることが明らかにされた。千田社長は「点呼は運送・物流業務の生命線であり基本。物流業界の一員として恥ずかしい」と述べ、「経営への影響も出ると思うが、まずはオペレーションの確保に全力を傾注し、お客様からの信頼回復に努めたい」と語った。不適切点呼が始まった時期については「2007年の郵政民営化から貨物自動車法制の適用を受けたが、相当以前から続いていたことは否定できない」とした。
点呼適正化に向けた再発防止策では、意識改革のための研修を強化するほか、本社・支社・郵便局でのガバナンス強化、点呼のデジタル化、モニタリング態勢の強化――などに取り組んでいく。
なお、日本郵便は今回の事案発覚を受け、千田社長と美並義人副社長が「月額報酬の40%×3ヵ月」、郵便・物流業務部の担当役員が「月額報酬の30%×3ヵ月」などの報酬減額処分を実施すると発表した。
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