カーゴニュース 2026年4月21日 第5429号

インタビュー
〝未曽有の物流危機〟にどのように対処したか
アサヒロジ 代表取締役社長
児玉徹夫氏

人材育成と知見の継承が「BCPの極意」

2026/04/20 17:00
全文公開記事 FOCUS 荷主・物流子会社 インタビュー 安全・BCP

 アサヒグループは2025年9月末、ランサムウェア攻撃を受け、ほぼすべてのシステムが機能障害に陥り、物流関連システムの機能も停止。通常方式による受注や出荷・配送が不可能になった。物流が完全に停止することも懸念された未曽有の事態に直面し、グループの物流機能会社であるアサヒロジ(本社・東京都品川区)は〝物流危機〟をどのようにして乗り越えたのか。同社の児玉徹夫社長に話を聞いた。(インタビュアー/吉野俊彦)

 

事態発生の翌日にはBCP方針を策定

 

 ――昨年9月末にランサムウェア攻撃によるシステム障害が発生しました。事態発生後の対応についてお聞かせください。


 児玉 9月29日月曜日、アサヒグループ内で大規模なシステム障害が発生したことが判明しました。当日直ちに、国内事業を統括するアサヒグループジャパンと事業会社であるアサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品の3社、物流機能会社である当社が参画する対策本部を設立しました。翌日30日に第1回対策会議を開催しました。システムの復旧には一定の時間を要することがわかりましたので、その会議で当面のBCP方針を決めることとしました。物流システムが機能しない中で、どうすれば出荷を継続できるのか、考えられる限りのBCP対応を会議室のホワイトボードに書き出して検討した結果、「これならば物流を止めずに済む」という基本方針と業務フローを決定しました。物流システムが機能不全になった直後には一瞬頭が真っ白になったものの、やるべきことと今できることを書き出していくことで様々な知恵が浮かび、物流BCPを決定することができました。

 

アサヒロジ社内緊急対策本部会議の様子

――その会議ではどのような方針を決めたのですか。


 児玉 出荷する製品の優先順位を定め、品目に合わせて出荷ロットやリードタイムなど受注・納品の条件を考え、実現可能なスキームを構築しました。アサヒビール社は「スーパードライ」など8品目、アサヒ飲料は24品目の主力製品など、アサヒグループ食品は乳幼児ミルク、ベビーフードや「ミンティア」を優先して出荷しました。そのうえで卸や大手小売などお客様のご理解を得て、受注単位を最低限パレット単位とし、リードタイムは営業日ベースで受注日の3日後(N+3)以上とするなど受注・出荷要件を定めました。流通各社様には事業会社の営業担当者が回り、システム障害の影響の中で可能な出荷対応について丁寧に説明し、出荷ロットやリードタイムについてご理解とご協力を得ることができました。一部では、予約システムを導入しているお客様の納品指定時刻を解除していただくようなケースや、納品をお客様のメインの物流センターのみに限らせていただくなどの対応もしていただきました。 


 並行して暫定的な受注・出荷システムの立ち上げを図り、事態発生の2日後には運用を開始しました。事業会社の営業部門が受注した品目・出荷数をフォーマットに手入力し、それをもとに出荷伝票や積み込み指示書を作成して各拠点にメールで転送するというシステムです。また、システム障害を受け、全国に約80ヵ所ある出荷拠点のすべてを動かすことは不可能だと判明しましたので、出荷拠点を集約することにしました。ビールは工場併設の6拠点に限り、飲料は8拠点、食品は5拠点、ワインは1拠点とし、合計20拠点を出荷拠点に定めました。製品はこれら20拠点のいずれかに集約した後、全国に配送する形態にしました。こうしたスキームを組み立てたうえで、10月3日届けから出荷を再開すると発表しました。その後は徐々に出荷拠点を増やしていきました。9月29日以降の初動対応はこのような流れでした。

障害発生直後は紙に記録して棚卸を実施
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