カーゴニュース 2025年7月1日 第5351号
公正取引委員会は6月24日、令和6年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果および優越的地位の濫用事案の処理状況を公表した。独占禁止法に基づく物流特殊指定の遵守状況や荷主と物流事業者との取引状況を把握するため、荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた調査を実施し、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為を行った荷主646者に対し注意喚起文書を送付した。
荷主3万者、物流事業者4万者を調査し、現下の労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコスト上昇分の取引価格への反映の必要性について協議をすることなく取引価格を据え置く行為等が疑われる事案に関して、荷主100者に対する立入調査を実施した。
令和6年度の調査では、「不当な給付内容の変更およびやり直し」に係る質問とは別に、「荷待ち」に係る質問を設けた。荷待ちによって、物流事業者に運転手の人件費、待機時間料等の追加費用が生じたにもかかわらず、荷主が当該費用を負担しない場合に独占禁止法上問題となるとみなした。
独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為を行ったとして注意喚起文書を送付した荷主646名の上位3業種は、「協同組合」、「飲食料品卸売業」、「建築材料、鉱物・金属材料等卸売業」の順。行為類型別にみると、「不当な給付内容の変更及びやり直し」、「代金の支払遅延」、「買いたたき」の順に多かった。
おもな事例のうち、「不当な給付内容の変更およびやり直し」では、「荷主Aは、物流事業者に対し、定期便として発注した運送業務を集配送当日にキャンセルしたが、そのような突然のキャンセルに伴い物流事業者が負担した車両の手配に要した費用を支払わなかった」(飲食料品卸売業)などが挙げられた。
「代金の支払遅延」では、「荷主Eは、物流事業者に対し、自社の担当者が経理部門に請求書の回付を失念していたことを理由に、あらかじめ定めた支払期日を超過して運賃を支払った」(総合工事業)など、失念に起因する支払遅延も問題につながるおそれのある行為の対象となった。
「買いたたき」では、「荷主Hは、物流事業者に対し、自社の電子部品の保管を委託しているところ、労務費等のコスト上昇局面にあることを認識しながら物流事業者から保管料の引上げを要請されなかったため、エネルギーコスト等のコスト上昇分の反映の必要性について、価格交渉の場において明示的に協議することなく保管料を据え置いた」(機械器具卸売業)など、保管料の据え置きも問題とされた。
「不当な経済上の利益の提供要請」では、「荷主Jは、物流事業者に対し、自社工場で用いる機械部品を海外事業者から購入するにあたり、当該部品の荷揚げ港から自社工場までの運送を委託しているところ、当該運送業務に附帯して輸入通関業務を委託する際の関税・消費税の納付を立て替えさせた」(生産用機械器具製造業)など通関業者による関税等立替払いも問題視された。
このほか、「荷主Oは、物流事業者に対し、自社のグループ会社が運営する給油所で運送車両の燃料を購入させた」(鉱業、採石業、砂利採取業)ことも「物の購入強制・役務の利用強制」とみなされた。
なお、令和6年度は荷主と物流事業者との取引に関する優越的地位の濫用事案について、1件の法的措置(橋本総業に対する確約計画の認定)、1件の警告(イトーキに対する警告)、29件の注意を行った。
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