カーゴニュース 2025年8月26日 第5365号
国土交通省は今秋、国が定める倉庫業の標準約款である「標準倉庫寄託約款」と「標準冷蔵倉庫寄託約款」を44年ぶりに改正する。現在、改正案を準備中で、9月上旬にもパブリックコメント(意見公募)を行った後、所要の手続きを経て秋頃に改正、即日施行する。「標準倉庫寄託約款」は1959年、「標準冷蔵倉庫寄託約款」は60年に制定。その後、双方とも81年に軽微な改正を行ったものの、大筋は制定時の内容のまま継続されており、時代の変化に伴い商慣行やデジタル技術の進展との乖離が指摘されていた。
手荷役、仕分けなど
作業料金請求を明記
今回の改正のおもな目的は、近年のデジタル化や自動化技術の急激な発展などにより、物流を取り巻く環境は大きく変化したことに対応するもの。たとえば、寄託者(荷主)が提出する寄託申込書や、貨物受取書または入庫通知書について、FAXや電磁的記録を含めることを明記する。
また、倉庫内で行う作業の多様化を踏まえ、通常の保管・入出庫以外の手荷役、仕分け、検品、ラベル貼付など業務について料金を請求できることを明記するほか、情報システムのトラブルや自動倉庫の故障が発生した際には、寄託引受を制限できることを約款で明確化する方向で調整を進めている。
約款の改正に対する業界からの要望が高まるきっかけになったのが、2020年4月の民法改正だ。この改正では寄託契約は「諾成契約」とされ、寄託申込の承諾時点から契約効力が発生する。しかし、業界の慣習として実際に貨物を引き渡した時点で契約が成立する「要物契約」が太宗を占めており、民法上の解釈との齟齬が生じていた。
また、寄託が「諾成契約」になると、様々なトラブルが生じるリスクもあった。例えば、輸入の遅延などにより入庫予定だった貨物の入庫が遅れた場合、寄託申込書の提出時点で契約が成立しているとなると、当該貨物が来るまで「スペースを空けておかなければならない」など非効率が発生する可能性も指摘されていた。
寄託を「要物契約」
とする条項を新設
そこで今回の約款改正では、貨物の引き渡しを受けることで寄託契約が成立するとする条項を新設し、標準約款の中で寄託契約が「要物契約」であることをあらためて明確化する。そのほか、現行の標準約款では規定していないものの、現状で広く運用されている「在庫証明書」に関して規定を設けるなど、実際の商慣行に即した内容に改正する。
標準約款の改正に関しては、民法の改正を見据える形で先行して日冷倉協が検討を開始。23年に最終的な協会案を取りまとめ、国交省に改正を要望した。翌24年には日倉協も事務局による改正案を作成し、協会内で合意が得られたことから、国交省に正式に改正を要望し、今秋の改正にこぎつけた。
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