カーゴニュース 2024年4月2日 第5230号
全国通運(本社・東京都中央区)の永田浩一社長は3月26日に本社で会見し、2023年度の輸送実績と24年度の事業方針などについて語った。永田社長「かつてないほど貨物鉄道に対する期待が高まっており、この期待に応えることが我々通運事業者としての使命だと思っている。鉄道の輸送量を今後10年程度で倍増させるという国の方針は、またとないビジネスチャンスでもあり、しっかりと活かしていきたい。もし期待に応えられず、輸送量を大きく伸ばすことができないことになれば、鉄道という輸送モードの復権はしばらくあり得ないという強い危機感と覚悟を持って、『2024年問題』の本番に対してJR貨物と一緒になって対応していきたい」と強い決意を述べた。
23年度の全通系鉄道コンテナの輸送実績は、746万7000t、前年比98・5%となり、前年実績を下回った。年度の動きを振り返ると、上期は前年実績を下回る月が多かったが、下期に輸送量が回復傾向に転じ、12月から2月は3ヵ月連続で前年実績を上回るなど「モーダルシフトの動きが徐々に表れている」(永田社長)という。24年度は「2024年問題」の本番を迎える中で、貨物鉄道
への期待感が非常に高まっていることを踏まえ、徹底した営業活動の展開と経営改革の推進による経営基盤の強化を図ることを基本方針に据えた。
営業面では、「モーダルシフト推進協議会」活動を基軸とした営業活動に引き続き力を入れ
ていくとともに、10tトラックとの親和性が高い31ftコンテナ輸送拡大を図っていく。営業元請で使用している31ftコンテナ(温度管理、ウイング、オートフロア)の保有数を3年間で72個から141個に倍増、10年間で5倍の350個に増やす。このうち24年度は、温度管理を6個増備して46個に、ウイングを10個増備して41個に、オートフロアを3個増備して6個にしていく。
また、各代理店からの集配料金やトラック運賃などの値上げ要請を踏まえ、荷主に対する値上げ交渉を推進。JR貨物が貨物駅内に整備を進めている積替ステーションや駅チカ倉庫の活用を進めていくほか、「2024年問題」で輸送力不足が顕在化すると言われている中距離帯(輸送距離600㎞前後)の輸送需要拡大にも注力していく。激甚化する自然災害への対応では、鉄道寸断時でも輸送力を確保・継続するため、山陽線と並行する船舶輸送力を確保することで「フェーズフリー」を進めるほか、代行輸送費用保険の導入を検討していく。
一方、経営改革の推進による経営基盤の強化では、①機動的で継続可能性の高い営業体制の構築②安全の確立に向けた取り組みの強化③ガバナンス、コンプライアンスの強化・徹底④人材の確保・育成と活力ある企業風土の確立⑤先進的で効率的な業務運営体制の確立⑥業務基盤の整備とSDGsの取り組み強化――を進めていく。
会見で永田社長は、24年度のコンテナ輸送量について「対前年110%程度を目指したい。今後1
0年程度で倍増という政府目標を踏まえると、年平均で10%前後伸ばさないと追いつかない」と述べた。また、会見に同席した小野善明専務取締役は「最低限800万tは超えたい」としたほか、「2024年問題」による輸送需要の動きについて「個人的な見解だが、4月からいきなり増えることは考えにくい、(対応策などが)徐々に浸透していって下期ごろから本格的に増えていくのではない
か」との見通しを語った。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。