カーゴニュース 2025年6月10日 第5345号
トラック運送業の許可更新制や委託次数の制限、適正原価の制度化などを規定する「トラック事業適正化関連法」(トラック新法)が4日、参議院本会議で可決・成立した(写真)。同法は「貨物自動車運送事業法」の改正法と事業適正化の「体制整備推進法」から成るもの。法案は5月27日に衆議院で賛成多数により可決され参議院に送付。参議院では投票総数234のうち賛成232票、反対2票で可決した。トラック新法は、①5年ごとの事業許可更新制の導入②運送委託を2次請けまでに制限③「適正原価」を下回る運賃・料金の制限④運送事業者以外の有償運送(「白トラ」行為)の禁止⑤労働者の賃金など適切な処遇の確保――などを規定。運送業界に新たな規制を課すことで、業界の適正化や取引環境改善を目指す。公布から3年以内に施行する。
更新業務は独立行政法人が実施
新法の目玉と言えるのが事業許可の更新制導入だ。事業者は5年ごとに事業許可の更新を受けることが義務化され、更新を受けない事業者は許可を取り消される。更新業務や事業適正化への支援業務などは新設の独立行政法人が行うこととした。業務実施に要する費用は国が負担するが、その財源は事業者の更新手数料による収入を活用する。なお、法律の施行後3年以内に独立行政法人による体制の整備と財源措置を講じることが定められ、そのための体制整備や、物流施策の推進を図るため、国土交通大臣、経済産業大臣、農林水産大臣、厚生労働大臣その他関係する国務大臣と公正取引委員会委員長によって構成する「物流政策推進会議」を設置することを定めた。併せて、実務者レベルでの連絡調整などを行うため、国交省が事務局となり「物流政策推進関係者会議」を設置することも規定した。
「2次下請」までの制限が努力義務に
多重下請構造の是正も新法の主眼のひとつ。元請けの運送事業者は、運送委託を2次請けまでに制限することを努力義務とする。荷主から運送業務を受託し、他の事業者に再委託する回数を2回以内にとどめるよう努めることが法令で明確化された。
荷主と運送事業者の取引環境を改善するため、国が告示する「適正原価」を下回る運賃・料金を継続的に下回らないことも義務化した。適正原価を下回る運賃・料金を支払う荷主に対しては、国が是正指導を行い、改善が見られない場合は勧告し、社名を公表する措置を行う。なお、「適正原価」には、燃料費、全産業の労働者1人当たりの平均賃金を踏まえた人件費、減価償却費、輸送の安全確保のために必要な経費、委託手数料、事業を継続して遂行するために必要不可欠な投資の原資、公租公課その他の事業の適正な運営の確保に必要な費用などが算入される。国交省は諸費用を的確に反映した「適正原価」の原案を定め、運輸審議会での審議を経て告示する。告示された後、運送事業者は荷主から運送業務を受託する際に運賃・料金が「適正原価」を下回らないようにすることが求められる。
「白トラ」荷主には勧告・社名公表も
許可や届出を行わずに自家用トラックを用いて有償で貨物運送を行う行為(いわゆる「白トラ」行為=無許可経営等原因行為)も禁止事項として明確化した。国は「白トラ」行為を行っているおそれのある荷主に対し、法令によって行わないよう要請し、従わない場合は勧告・社名公表を行う。都道府県トラック協会が国から受託して実施する適正化事業実施機関が荷主の「白トラ」行為を把握した際は、国に対して通知する。
さらに、トラックドライバーなどの待遇改善も規定。運送事業者は、ドライバーやその他の労働者に対し公正な評価に基づき適正な賃金を支払うなど適切な処遇を確保して経営を行うよう定めた。
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