カーゴニュース 2024年6月4日 第5247号
国土交通省の鶴田浩久物流・自動車局長(写真)は5月28日に専門紙記者会見を開き、4月26日に「流通業務総合効率化法および貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(改正物流法)が成立したことを受けて「改正物流法と新たな標準的な運賃と組み合わせ、トラック運送業への支援に取り組んでいく」と表明。荷主・物流事業者に課す物流改善の努力義務に関連する判断基準や、規制対象となる企業の規模を定める審議会を6月にも立ち上げ、施行に向けて関係法令を整備していくとした。
国交・経産・農水3省で「判断基準」会議立ち上げ
鶴田局長は、昨年3月31日に物流を支える環境整備について政府一体となって総合的な検討を行う「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」が立ち上がり、1年が経過した4月26日に「ようやく物流革新の実現を図る法律が成立した。物流の持続的成長を図るための様々な好機がそろってきた」と述べ、荷主・元請に対する規制的措置を盛り込んだ改正法と、3月22日に告示した新たなトラックの標準的な運賃を組み合わせて活用しながら「関係省庁が連携のもと施策を推進し、物流改善を実現する」と述べた。
改正物流法では、発荷主だけでなく着荷主も含めたすべての荷主と、トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫など物流事業者に対し、物流効率化に取り組むよう努力義務を課す。その取り組みが、物流効率化に適切なものかを判断する基準は国が定める。実際の取り組みの進捗状況は、国が定めた判断基準に基づき、指導・助言を行い、実態を調査し、調査結果を公表することとしている。また、一定規模以上の荷主と物流事業者を「特定事業者」に指定し、物流改善のための中長期計画の作成や定期報告を義務付ける。中長期計画に基づく取り組みの実施が不十分な場合、勧告・命令を行う。そのため、判断基準づくりや、一定規模以上の事業者を指定するための線引きを行う必要がある。
鶴田局長は「すべての荷主・物流事業者に適用される判断基準を策定するため、国交省と荷主を所管する経済産業省、農林水産省の合同審議会を6月にも設立し、詳細の検討を行う」と明かした。なお、審議会は有識者による委員とオブザーバーの関係省庁で構成する予定。荷主・物流事業者など民間の意見を適宜ヒアリングしたうえで、判断基準を策定することになりそうだ。
荷主は時間の観点から商慣行を見直すべき
物流分野では従来ほとんど規制対象にならなかった荷主を法的に規制する枠組みができたことについて「荷主は目の前にある『運べなくなるかもしれない危機』を今だけやりすごしさえすればいいとするのではなく、運送事業者と長期的に〝WIN‐WINの関係〟を築いていただきたい。WIN‐WINが成り立てば、ひいては物流が効率化し、社会全体の生産性が向上する」と期待感を示した。また、物流効率化に取り組む際は、時間を軸とすることも重要だと提言。「4月に適用されたドライバーの労働時間規制というのは、まさに時間に関わる問題だ。法令によって拘束時間が定められ運行時間には上限があるということ、輸送力は無尽蔵に使えるものではないことが明確になった」とし、一例として「翌日納品を厳守するといった運び方ではなく、リードタイムに余裕を持たせることで共同輸配送や混載などを行い、積載率を高める工夫もできる」と述べ、納品リードタイムの見直しなど、荷主が商慣行の見直しに積極的に取り組むべきとの考えを示した。
「水屋」問題など今後の課題を真摯に検討
国会で改正物流法が成立する際、衆参両院国土交通委員会は17項目の附帯決議を付し、その中で「いわゆる専業水屋についても実態を把握し、規制措置の導入も含め必要な措置を講じること」としている。また、全日本トラック協会は「水屋は元請と同様に、依頼元である運送事業者等から運賃とは別に利用運送手数料を確保し、実運送事業者に適正な運賃を支払うべき。国交省等が適切な事業の実施をチェックする仕組みを設けるべき」と今年3月に提言していた。これについて鶴田局長は「水屋あるいは利用運送事業者の問題はトラック業界とともに考えるべきだと認識している。標準的な運賃の考えを踏まえ、物流生産性向上にも責任を持つような利用運送事業者を『いい水屋』だとするならば、たんに運送委託を右から左に振って、運賃から手数料を抜く業者は『わるい水屋』だと言える」と述べ「水屋問題」にとどまらず附帯決議の各項目を真摯に検討する意欲を示した。
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