コンテナの洗浄が最も多い

カーゴニュース 2025年8月7日 第5362号

国際物流のラストワンマイル ドレージ問題の解決に迫る!

FOCUS
名古屋港コンテナ洗浄問題、根本解決へ前進か

「付帯作業」巡る法制度整備が追い風に

2025/08/06 17:00
全文公開記事 FOCUS トラック輸送 海運 団体

 名古屋港で長年の懸案となっている、返却コンテナの清掃・洗浄問題――。荷主や船社の代わりに、海上コンテナを輸送するドライバーが返却前のコンテナの清掃・洗浄を行い、過度な負担となっている問題で、「悪しき商慣習」と認識されながらもいまだ解決には至っていない。愛知県トラック協会海上コンテナ部会(山本敦部会長)では、ドライバーの「付帯作業」に対する契約の明示や適正な対価を求める昨今の法制度整備を“好機”ととらえ、今秋以降、行政、港運、荷主、海貨など関係者による新たな協議の場の設置を目指す。コンテナの汚れはドライバーに責任がないことを論拠に、バンプールでの全コンテナ引き取りを求めていく考えだ。

 

ローカルな商慣習、ドライバーの過度な負担に

 

 国際複合一貫輸送約款ではコンテナについて、「荷主は、汚れがない状態で返却する責任を負う」ことが規定されている。つまり、貨物に起因する汚れについては本来、荷主が清掃・洗浄の責任を負う。しかし、名古屋港では何十年も前から、海コンドライバーが貨物に起因する汚れかどうかに関わらずコンテナの清掃・洗浄を“代行”しており、ドライバーの過度な負担となっていることが、かねてから問題視されていた。

 

 これには名古屋港特有の事情がある。名古屋港は輸出が多く、輸入で使ったコンテナは海外に戻すことなく輸出に転用される。日本の荷主は基準が厳しいことから、コンテナの返却先であるバンプールは、汚れや固縛の残り、ラベルなどを取り除いた状態でなければ受け取らないため、貨物に起因するしないに関わらず、ドライバーが清掃・洗浄して返却するというローカルな商慣習が根付いてしまっている。

 

 問題の改善に向け、中部運輸局では2012年に名古屋港関係者による「返却コンテナの清掃・洗浄問題勉強会」を設置し、17年までに計11回開催。14年には、荷主に対して文書を発出し、適切な洗浄方法の伝達や洗浄コストの負担について理解と協力を要請した。こうした周知活動により、コンテナの清掃・洗浄やその他付帯作業についてなくなりはしないものの、有償化は徐々に進んでいた。

 

 「2024年問題」をきっかけに、ドライバーの労働時間の短縮、負担軽減を図るため、ドライバーの付帯作業を見直す動きが高まっている中、付帯作業の一種であるコンテナの清掃・洗浄もあらためてクローズアップされた。中部運輸局では1月、7年ぶりに第12回目となる勉強会を開催。愛知県トラック協会海コン部会が行った、コンテナの清掃・洗浄問題に関するアンケートの結果を共有した。

 

ドライバーに洗浄義務なし、無条件で引き取りを

清掃(上)やラベル剥がしも行っている

 アンケートによると、海コンドライバーが行っている付帯作業としては洗浄(水洗い)、清掃(拭き掃除)、残留不要品の除去(ヒモ外し、ラベル剥がし、リング外し)などがある。なかでも洗浄が圧倒的に多く、ドライバーの負担が大きい。また、ドライバーの40%以上が付帯作業で何らかの体調不良の経験があり、熱中症や粉塵を吸い込んだり薬品臭で体調が悪くなった例も報告されている。

 

 付帯作業や清掃作業についてそれぞれ90%以上、85%の事業者が荷主と取り決めをしておらず、ドライバーが清掃作業の要・不要を判断している実態がある。ドライバーの負担が大きい洗浄作業は名古屋港のみの運用と言われており、自社施設などで作業を実施。洗浄作業時間は15分以内とする回答が最多だが、洗浄できる施設に移動する往復の時間も含めるとおよそ1時間30分のタイムロスになるケースもあると試算した。

 

 洗浄作業が多い理由としては、「洗浄すれば受取拒否がない」「洗浄することが当たり前になっている」「バンプールから洗浄を指示される」が上位3位だった。バンプールの受取拒否を避けるためにドライバーが洗浄を行っていることになるが、そもそも、汚れがない状態で返却する責任を負っているのは荷主であり、ドライバーに洗浄の義務はない。バンプールは無条件で引き取り、荷主等に費用請求すべきとの意見もある。

洗浄施設までの往復でタイムロスも

 なお、物流改正法により4月からは、返却コンテナの清掃・洗浄等の付帯作業がある場合、荷主が契約時に書面に記載して事業者に交付することが義務化された。また、標準的運賃では「運賃」とは別に付帯作業の料金を収受できることが規定されている。ただ、コンテナ清掃・洗浄について十分な対価を収受できているとは言えず、いまだに無償のサービスとして行っているケースもあるという。

 

 荷主の多くは洗浄施設を持たないため、「明日から洗浄をやめます」というわけにはいかず、貨物に起因するコンテナの汚れの洗浄については、荷主との契約に基づき、適正な対価を収受し行うことが現実的だ。一方で、汚れの責任はドライバーに起因しないため、海コン部会としてはすべてのコンテナをバンプールに引き取ってもらうことをゴールと定め、関係者との折衝・調整を行うための協議体の設置に向け準備を進めている。

愛ト協海コン部会が作成したパンフレット
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