カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号
1964年の創業の三鷹倉庫(本社・大阪市生野区、関武士社長)は、「MAKE A GOOD COMPANY さぁ、もっといい会社に」を経営理念に掲げ、倉庫業を核に物流のトータルサポートを提供している。今年2月に、物流システムの自動化、省人化技術に強みを持つシステム会社であるミーチュアルの株式譲渡を受け、経営統合。WMS(倉庫管理システム)の開発などを通じて30年間取引のあるミーチュアルを統合することで、ソフト面でのDX化を加速し、主力とする倉庫オペレーションの競争力を強化する。
アパレル製品メイン、国内外で倉庫を運営
三鷹倉庫では、倉庫事業を中心として、EC事業、海外貿易事業、倉庫リース事業を展開。関西地区に11ヵ所、関東地区に7ヵ所の計18ヵ所の倉庫を保有している。アパレル製品をメインに扱っており、倉庫内に工業用ミシンや検針機を設置し、修理や値札付けなどの流通加工も担うことで、単なる保管にとどまらない高付加価値なサービスを提供している。
機械製品や食品に商材を拡大しながら、17年前にアパレル製品の製造工場が集積する中国へ進出。中国から輸出されたアパレル製品の日本側での荷受けだけでなく、現地での出荷作業も担い、現地で検品や流通加工を行える体制を整えた。その後インドネシアをはじめとする東南アジアにも同様なビジネスモデルを展開し、海外事業の強化も進めている。
7年前からは子会社として三鷹共運を立ち上げ、フォワーディング事業に進出した。新型コロナウイルス感染症が拡大した時期には、かねてより計画していたeコマースへの対応を開始。3年前からは通関業にも進出を果たした。サービスメニューを充実させ、物流全体の計画、輸送・倉庫の運用管理と業務改善を連携して行う「4PL事業」に力を入れている。
同社では営業倉庫のみならず、倉庫のリース事業も手掛ける。「倉庫の供給が増えている中、価格(賃料)以外の面で選んでもらえるように」という方針から、JR尼崎駅から至近の都市型倉庫「MAKE A GOOD LOGI尼崎」や、大型の平屋倉庫である「ひょうご東条センター」などユニークな特色を持った倉庫ラインナップをそろえる。自社で物流業務も行っているため、テナントが決まらなくても自社で運用できる強みもある。
システム会社を経営統合、RFIDに強み
今年1月に三鷹倉庫は初のM&Aを実施し、ミーチュアルを経営統合した。同社は、RFIDを活用した製品管理を強みとするシステム会社で、ユニフォーム管理システムや入退室システムなどソフトとハードの両領域にまたがる開発を行っている。
三鷹倉庫とは30年以上、WMSの開発で取引があった。以前から後継者不足の問題を抱えており、関社長がミーチュアルの前社長と話し合いながら、3年ほどかけて検討し、株式の譲受に至った。経営統合後は、関社長が同社の代表取締役社長に就任。両社間で営業部の情報共有を行うなど連携を強めている。4月からは本格的に協業を開始し、両社の相乗効果を検証している。
ミューチュアルのWMSでは、三鷹倉庫の中心商材であるアパレル製品特有の膨大なSKU数に伴う複雑な業務に対応。量販店との連携や、値札の自動発行、返品データの集計などを実現し、顧客の管理目的に合わせたシステムを提供する。
関社長は、同社との経営統合の背景として、倉庫の大量供給と競争の激化を挙げる。「価格や立地面で競合他社と争うのではなく、独自の強みを強化する方向に舵を切った。当社は長年、アパレル製品を扱ってきた豊富な経験があり、在庫管理や流通加工など倉庫内のオペレーションに強みがある。今回ミーチュアルを統合することで、ソフト面でのDXを推進し、オペレーションの競争力を高めていく」と意欲を見せる。
DX化の推進により、荷主との連携も強化。「eコマースの需要が高まる中で、入出庫や在庫を数値データとして可視化し、荷主に連携・共有できることは、他社が真似できない強みになる」(関社長)。物流作業現場の生産性、収支の管理ツール「ロジメーター」を導入し、生産性、収支の可視化による、問題点・課題の早期発見、早期対応に加え、現場の収支意識向上を推し進める。
DX化を絡めた荷主との連携の一環として、食品工場向けのセキュリティ関連システムも開発。耐洗ICタグ付きの作業着を活用した、個人ごとの入退室管理や、災害時の所在管理などを実現した。ミューチュアルがノウハウを持つRFID技術を駆使し、物流以外の分野でも事業拡大を図る。
対等で相互利益のあるM&Aを
三鷹倉庫では今後も積極的なM&Aを検討。主に倉庫やトラックを保有している企業を中心に、自社が拠点を有する関西・関東圏の物流系企業をターゲットに据える。関社長は「トラックや倉庫を自社で仕入れることに比べると、他社が保有している資産を活用する方がリスクは小さい」と説明。一方で、M&A先の選定については、「長年取引があり、社内体制を知っているミーチュアルですら、経営統合後に体制を整えるのは大変だった。今後も、自社のネットワークに近いところを中心に検討していく」方針だ。
関社長はM&Aについて、「単純な収益拡大ではなく、成長戦略の一環として、相互の利益になるM&Aを行っていきたい。一方的な関係ではなく、対等な関係を築くことを第一に考えている」と話す。「当社が本拠とする大阪は万国博覧会の開催などを含め全体が盛り上がっているように思う。2034年にはリニア中央新幹線も開通し、関西地域が物流の起点となる可能性もある。その流れにしっかりと乗れるよう、成長を続けていきたい」と語った。
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