カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号

インタビュー
倉庫業の魅力を高め情報発信強化を
東海倉庫協会 会長
尾関圭司 氏

社会インフラとして不可欠な機能

2025/11/27 06:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 インタビュー 団体

自家倉庫スペースの有効活用、議論は慎重に

 

 ――4月に国土交通省が「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」の報告書を公表しました。営業倉庫から見て、物流拠点整備のあり方に望むことは。

 

 尾関 土地や建築費が高騰し、中小物流会社の倉庫の新設・建て替えは非常にハードルが高くなっていると認識しています。倉庫を新たに建てる場合、普通倉庫よりも、定温倉庫、低温倉庫、危険物倉庫といった付加価値を付けた倉庫の方が採算性を確保しやすいと言えますが、そうした倉庫に見合う貨物がふんだんにあるわけではないというのも事実です。

 

 中小企業が倉庫に投資する負担は重く、倉庫税制に関しては廃止されることになっても、助成金・補助金という形で、引き続き国からの支援をいただきたいと考えています。現状、物流総合効率化法(物効法)は倉庫税制と結びついた形になっていますが、それが果たしてあるべき姿なのか――。倉庫業にとって物効法を活用する最大のメリットは、「特定流通業務施設」に認定され、市街化調整区域で開発を行えることです。(税制特例がなくなっても)倉庫業に対する市街化調整区域での開発許可の適用が維持されることを望みます。

 

 ――中部圏でも物流不動産の開発が活発ですが、営業倉庫としてどうとらえていますか。

 

 尾関 マルチテナント型物流施設が増えていますが、関東、関西に比べ空室率が高く、リーシングに苦慮している印象です。中部圏では賃貸用物流施設をお客様自身が借りて、オペレーションを物流会社に委託する――といったケースが多いように感じます。そうなるとお客様からいただけるのは、入出庫などの作業料のみとなってしまいますので、収益的には厳しくなります。お客様が借りた施設で自動化が進むと作業自体がどんどん絞られていき、保管料と作業料を収益源とする倉庫業のビジネスモデルが危ぶまれます。自家倉庫の活用に関する規制緩和の議論も注視しなければなりません。自家倉庫でオペレーションのみを物流会社に委託することが考えられるからです。「自家倉庫のスペースが余っているので有効活用すべきだ」といった議論は慎重であるべきだと考えます。

 

自家発電機メンテナンス費用にも支援措置を

 

 ――協会運営のポリシーをお聞かせください。

 

 尾関 会員の皆さんの意見を聞き、行政に伝えることはもちろんですが、自社の経営や倉庫運営に役立てていただけるよう、倉庫業界でいま何が起きているのか、参考になる取り組み事例を発信していきたいと思います。

 

 足元では法改正に関する周知にも注力します。物流効率化法に盛り込まれた倉庫業に対する規制的措置について、「特定倉庫事業者」の指定基準は「年間の貨物の保管量が70万t以上」とありますが、基準となるのは「在庫量」でなく「入庫量」です。こうしたことが意外とまだ理解されておらず、適切な情報提供に努めていきます。

 

 行政に対する意見の具申については、私は日倉協の副会長として、正副会長と物流行政を担当する国交省の幹部の方との意見交換会に参加しています。9月の会議では、物流会社が熱中症対策のために既存の施設で空調導入など投資を行う場合、国交省として補助金を創設していただきたいと要望を伝えました。また、災害時に民間物資拠点として登録した倉庫に設置した自家発電機について、最初の設置時だけでなく、メンテナンス費用についても補助が必要だと訴えました。

非常用発電機の設置後の補助も必要
倉庫や自動化設備の見学も

 ――各種研修をはじめ人材育成にも力を入れているとのことです。

 

 尾関 日本倉庫協会の研修メニューから生成AI活用セミナーをはじめとしたセミナーを選び、会員に研修機会として提供しています。また、今年度は初の試みとして、先進的な自動化設備を導入している会員の倉庫の見学会を開催しました。会員の倉庫を会員向けに公開するのは画期的なことです。

 

 人材採用の面では、高校の先生を対象とする物流施設見学会を開催しています。2023年には高校1年生向けに職業紹介授業を行い、当社(濃飛倉庫運輸)の物流センターの所長代理の女性が講師を務めました。東海倉庫協会のホームページには「倉庫施設見学・職場体験実施企業リスト」を掲載しています。学生が倉庫業に関心を持ち、就職先の選択肢のひとつとして選んでいただけるように、会員との橋渡し役を協会が担っていきたいと思います。

 

 ――最後に、倉庫業が果たす役割についてお考えをお聞かせください。

 

 尾関 物流というとトラックを思い浮かべる方が多いと思いますが、倉庫はサプライチェーンを“つなぐ”役割を果たしています。安定的なモノづくりのためには、必ずどこかで原材料のストックが必要になります。保管だけでなく、仕分けや流通加工といった、メーカーから消費者に商品を届けるプロセスで必要な機能も倉庫が担っています。このように倉庫は社会インフラとして不可欠な機能です。倉庫で働く人の待遇や職場環境の改善を図り、魅力のある業種として情報発信を強めていきたいと思います。             

 

 

尾関 圭司(おぜき・けいじ) 1969年11月4日生まれ。92年3月富山大学工学部を卒業後、三菱自動車工業に入社。96年濃飛倉庫運輸に入社し、2017年6月から現職。24年5月東海倉庫協会会長、同6月日本倉庫協会副会長、25年5月岐阜県トラック協会副会長に就任

 

高校の先生を対象とした物流施設見学会
2023年の職業紹介授業の様子
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