CTの待機料の収受が進んでいない

カーゴニュース 2024年5月16日 第5242号

FOCUS
海コン車両の待機料、「発注者」に支払い義務

コンテナターミナルでの荷待ちに国交省が見解

2024/05/16 07:00
FOCUS トラック輸送 海運

 東京港大井ふ頭の特定コンテナターミナル(CT)で、海上コンテナ輸送車両の長時間待機が問題となっている。4月からのトラックドライバーの労働時間規制の厳格化により、輸送業務への影響は従来にも増して大きくなっており、「トラックGメン」制度を活用した改善への働きかけを求める声も強まっている。港を起点とした運送には、船社を選定した「荷主」、運送の発注者である「海貨業者」、CTを運営する「ターミナルオペレーター」と複数の主体が関与しており、船の遅れなどに起因する不可抗力の待機もある。待機という現象に対する責任の範疇が明確でないことが、待機料の収受が進まない一因にもなっている。

 

6~7時間の待機、労働時間違反のリスク

 

 東京港のCTの待機時間は近年、おおむね改善傾向にあったが、大井ふ頭の特定のCTで長時間待機が発生している。海コン業者によると、待機時間には日によって山・谷があり、4月は長い日で6~7時間、短い日でも3~4時間があったという。

 

 4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用され、新たな改善基準告示も施行されたことで、長時間待機が発生すると、海コン業者はその日の業務、さらには翌日の業務を削らなければならなくなるなど運行に支障が出る。

 

 今回、特定のCTでの待機の発生はシステムの更新に伴うものとされているが、海コン業者は時間外労働の上限や新たな改善基準告示に違反するリスクを避けるため、当該ターミナルの輸送の受注を敬遠する動きも出てきている。

 

CT長時間待機に対する行政の見解に注目

 

 海コン業者にとって「荷待ち」は、工場や倉庫などで積み込み、荷降ろし時に発生する待機、CTのゲートで発生する待機の2種類がある。このうち工場や倉庫での待機については、「標準的な運賃」で規定する待機料を収受できている会社が多い。

 

 工場や倉庫で一定以上の待機が発生した場合、待機料は運送の「発注者」に請求しており、海貨業者やメーカーなどの真荷主、あるいは運送元請となる大手海コン業者がこれに該当する。

 

 しかしその一方で、CTでの待機料を収受できている海コン業者はほとんどない。待機が発生しているCTのオペレーションには海貨業者や荷主は直接関与していないため、「待機料を請求してもムダだ」という先入観が強い。

 

 CTでの長時間待機について「トラックGメン」に相談した海コン業者もあるようだ。ただ、CTは海コン業者にとって「荷主」や「元請」ではなく、また、海コン業者と受発注の関係にはないため、行政の見解や措置の方向性が注目されている。

 

”責任追及”と”料金収受”を分けるべき

 

 行政サイドも港湾物流には関係するプレイヤーが多く、長時間待機の真の要因が見えにくいと認識しており、「港湾物流の関係者が課題を共有することが第一歩だ」としたうえで「長時間待機についての〝責任追及〟と〝料金収受〟は分けて考えるべきであり、商法に基づき運送業務の発注者が待機料を支払うのは当然だ」と指摘する。

 

 3月に施行された新たな標準的な運賃制度では、30分を超える待機で待機料が発生し、以降30分刻みで加算していくと規定。国交省は同制度に基づき、待機料を確実に収受するためには運送契約の書面化が不可欠であるとし、このほど成立した改正物流効率化法・貨物自動車運送事業法では運送契約の書面交付を義務化した。

 

 担当者は、「これまで多くの現場で待機料が支払われない商慣行が続いていたのは事実」としつつ、「今後は標準的な運賃制度に基づき、取引環境を適正化することが発注者と事業者に共通したビジネス上の義務となる」と強調。双方の交渉を後押しすることを法改正の狙いとして挙げる。

 

 管轄エリア内に国内有数の港湾を抱える地方運輸局は、港湾運送業を所管する部署と連携しながら、トラックGメンが港湾地区における課題調査などを行い、長時間の荷待ちを発生させている関係主体に働きかけを行っていく方針にある。働きかけの対象についての情報は国交省本省のトラックGメンとも共有する。

 

 改善がみられない場合は〝陸側〟と同様、本省のGメンが対象企業の本社に対し、「要請」「勧告・公表」を行う。先月成立した改正物流効率化法・貨物自動車運送事業法が施行された後は、長時間待機を放置する荷主・元請に対する規制措置も実施され、港湾物流関係者も対応が求められる。

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