集約した荷物を地域の事業者が受け取る

カーゴニュース 2024年6月6日 第5248号

ヤマト運輸/ゼンリン
秩父の山間地域で共配サービスを開始

ヤマト・西濃・福通の荷物を地域事業者が配送

2024/06/06 13:16
トラック輸送 宅配・ラストワンマイル

 ヤマト運輸(本社・東京都中央区、長尾裕社長)とゼンリン(本社・北九州市戸畑区、髙山善司社長)は3日、埼玉県秩父市で、各物流事業者の荷物の配送状況を一括管理する「共同配送システム」を活用した宅配サービス「おむす便」の提供を開始した。ヤマト、西濃運輸、福山通運の荷物を物流拠点に集約し、地域の事業者が住民宅にまとめて配送する。山間地域の物流課題解決に向けて開始したもので、今後は全国を対象にサービスの水平展開を目指す。


 ゼンリンでは、秩父市生活交通・物流融合推進協議会と共同で、秩父市の山間地域の少子高齢化に伴うヒトやモノの移動に関わる地域課題を解決するため、物流・公共交通ネットワーク「秩父モデル」の構築を推進。その一環として、複数の物流事業者の荷物を地域の物流拠点に集約し、地域の事業者がまとめてラストマイル配送を行う「共同配送」の実現を目指している。荷物の集約・共同配送により配送効率を向上することで、山間地域でのトラックの積載率低下や環境負荷といった物流課題に対応する。


 今回、秩父市の大滝地域で共同配送サービス「おむす便」の提供を開始した。具体的なサービスの流れは、ヤマト、西濃、福通の大滝地域あての荷物をヤマトの「影森営業所」(埼玉県秩父市)に集約。地域の配送事業者が荷物を受け取り、地域住民の自宅まで配送する。

「おむす便」のオペレーションの流れ

「共同配送システム」を開発配送状況を一括管理


 荷物の受け取りや配送には、ゼンリンが独自開発した「共同配送システム」を利用する。ヤマトとゼンリンは2022年9月、複数の物流事業者の荷物をヤマト運輸が配達する形で「共同配送」のプレサービスを開始。その結果、荷物の配送管理システムが各物流事業者で異なることから、日々の配達状況の管理や配達結果をアナログで管理しなければならず、各物流事業者や配送を担う事業者の業務負担が増加するという課題が判明した。課題解決に向け、サービスの全体統括を行うゼンリンが、配送管理システム構築に関する運用ノウハウを持つヤマトの協力のもと、パナソニックコネクトの「配送見える化ソリューション」をカスタマイズし、各社の荷物の配送状況を一括管理できる「共同配送システム」を開発した。


 「共同配送システム」は地域の事業者が専用端末で荷物に貼り付けられた配達伝票のバーコードをスキャンし、各種情報をシステムに登録する仕組み。物流拠点に届いた荷物を受け取る際は、端末上で該当する物流事業者を選択して、荷物の情報をシステムに登録。荷物を配達車両に積み込むときは、車両ごとに配送する荷物を登録し、配達先での受け渡し時には、配達完了や不在時の持ち帰りなどの配達結果を登録する。各種情報はクラウドを通して共有され、物流事業者各社は荷物の配送状況をブラウザ上でリアルタイムに確認可能。同システムは、既存の基幹システムを改修せずに導入できる設計を採用した。両者は今後、共同配送サービスおよび「共同配送システム」の全国への水平展開を目指す。


 なお、「秩父モデル」ではこのほか、医療提供機会の維持や医療従事者の訪問業務の効率化を目指す遠隔医療サービス「そばいる」や、秩父市内でのヒトやモノの活動情報を収集・分析・可視化する市民・行政向けダッシュボードシステムの提供を開始した。

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