カーゴニュース 2026年5月14日 第5434号

貨眺富営317 
「野球のために東大に入る」
中田信哉
(神奈川大学名誉教授)

2026/05/14 06:00
全文公開記事 コラム・寄稿

森のおわり塀に球打つ少年いて 兜太

 

 テレビ・キャスターの大越健介さんが、ある時「私は野球をするため東大に入った」と言った。周りは「強烈な嫌味だ」と笑ったが、僕は「案外、本当だったのではないか」と思った。大越さんは高校時代、野球で活躍し、1浪で東大に入った。体も大きくなく、有名大学の野球部に入っても試合に出る可能性は低い。東大なら神宮球場で野球ができる。そして、東大時代8勝を挙げた(27敗)。その後NHKに入った。京都大学はアメリカンフットボール(ギャングスターズ)の強豪だった。フットボールをするため京都大学に入りたい、という若者のため水野さんという京大のヘッドコーチが自ら学外で受験塾を開き、1浪・1留年で京大を出るコースを作っていた。

 

 多くは将来の明確な目標があるわけではない。東大は受験の最高峰である(のか)。受験勉強をして頂上を目指すのは最高の目標だろう。これは高校球児が甲子園を目指すのと同じである。将来、プロ野球選手になれるのは0・3%程度であるから、目標は甲子園で活躍することである。その後は普通の社会人となる。甲子園に出ることと東大に入ることは同じである。東大が受験のテッペンであり、甲子園は高校野球のテッペンである。テッペンを目指すのはどの世界でも常識である。その後はどうするかは、また別問題ではないだろうか。

 

 現在、ちょうど入学・入社から1ヵ月たった。これからどうなるか、会社や大学も不安だろうが新人たちも不安だろう(五月病という言葉があった)。そのなかで立ち止まってしまう者がいる。新入生ならともかく新人社員はそうはいかないので退職をする。「会社の社風や仕事が合わない」「キャリア・アップに役立たない」などが理由であろうが、会社に退社を申し出る勇気がない。そこで「退社代行業」なるものが登場する。本人に代わって会社に退職を通知し、処理してくれる商売である。なんでも代行業と言って「墓参り代行」とか「父母代りにPTAに出席する」「還付金を請求してあげる」など、多くの場面で代行屋さんが出てくる。こういうのを「コンシェルジュ・ビジネス」という。アメリカでは病院の予約代行などもある。コンシェルジュはフランス語で「特定の分野の案内や手配を行う接客業」でホテルやデパートに見られるが、客の代わりに何かを行いそれで収入を得る商売を言うようだ。いわゆる代行サービスである。アメリカでは以前から自分が持っているノウハウやシステムを使って他人に現場作業をさせてそれを金にするビジネスが発展していた。フランチャイズ・システムがその代表だ。ある先生が「アメリカ人は他人に仕事をさせてその上前を撥ねて金を稼ぐ商売が得意だ」と言った。

 

 物流業界でいうならフォワーダーがそれである。顧客に代わって、適切な輸送業、倉庫業などを選択し、高度な物流サービスを提供する。トラック業の産業化は広域ネットワーク混載ビジネス(特積み)に始まり、そこから宅配便事業が生まれ、ついで、ロジスティク事業(かつて3PLと言われた包括受託業)など元請け事業が続いた。いずれもトラック業が自ら物流活動を行うものだが、今、この元請けから自ら物流活動は行わず、フォワーディングを専門とするものが生まれようとしている。アメリカにおけるドメスティクス・フォワーダーであり、日本では昔、ミズヤというのがあったがヤマトの行おうとするものはこのフォワーディング専門の物流代行事業と言えるかもしれない。第5番目のトラック産業化の道でもあるのだろうか。物流コンシェルジュ・サービスである。

続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。
  • バックナンバー

日付で探す

* 毎週火曜日・木曜日発行。(祝日は休刊)

第一倉庫株式会社 日本通運 uprのピーアール。 鉄道貨物協会 第一工業株式会社 アライプロバンス ジェイエスキューブ プロテクティブスニーカー協会 A-TRUCK 富士物流のホームページにニュースを提供中!! 日通NECロジスティクス提供 物流用語集