カーゴニュース 2026年5月7日 第5432号
国土交通省はトラック運送業界の再編に向けた検討を開始する。業界の9割以上を占める中小事業者の経営基盤を強化するため、M&Aや事業協同組合による協業化や事業継承を促進する仕組みづくりを検討する。中小事業者が過当競争を繰り広げている業界構造が、安値受注や多重取引、対荷主での立場の弱さにつながっているとの指摘を踏まえ、2028年度に予定している、5年ごとの事業許可更新制の導入と並行し、業界の構造転換を後押しすることで、健全な業界環境を整備する。国交省は今年度にも、具体的な施策を検討するため、実態調査を実施したい考え。
リソース共有・スケールメリットの享受も有効
3月31日に「総合物流施策大綱(2026年度~30年度)」が閣議決定された。その中で、「トラック運送業の事業基盤の強化」として、「わが国の物流を担うトラック運送事業者の大宗を中小事業者が占めていることを踏まえると、中小トラック運送事業者がより活躍できる環境の整備が必要」と指摘。
「中小トラック運送事業者が事業経営の維持・継続や法令遵守に向けた体制の確保、荷主等に対する価格交渉力の向上等を図っていくためには、協業化によるリソースの共有・スケールメリットの享受や事業承継・M&A等による事業規模の拡大も有効」とし、事業協同組合等による協業化、事業承継・M&A等の促進に向けた実態調査を行うとした。
昨年6月に公布されたトラック適正化二法では、中小トラック運送事業者の経営基盤を強化するため〝最低運賃〟の考え方を盛り込んだ「適正原価」を導入し〝ダンピング行為〟の解消策を打ち出した。また、多重取引を是正するため、下請次数を2次までに制限する努力義務を導入し、今年4月から施行している。
5年ごとの事業許可更新制も導入する。事業者数が約6万3000者に上る業界の大多数が中小零細事業者であることから、経営基盤が盤石とは言えず、コンプライアンス遵守や安全対策を実施する体制が強固ではないことも課題となっている。そこで、事業許可更新制により〝新陳代謝〟を進め、適正な競争をつくる構えだ。
国交省は〝ポスト事業更新制〟を見据え、「物流大綱」の方針に基づき、中小事業者が経営の維持・継続やコンプライアンス遵守に向けた体制を確保し、価格交渉力の向上を図りたい考え。実現に向け、協同組合などによる協業化や、事業承継・M&Aによる事業規模の拡大を促進する。今後、基礎資料となる実態調査を実施し、必要な措置を検討する方針。
付加価値を高めるには一定の事業規模が必要
1990年12月に貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法(物流二法)が施行され、事業者数は当時の4万者から6万3000者まで6割増加した。国交省担当者は「資本金1億円超の企業は全体の1%未満で、業界の大多数は中小事業者が占めている。付加価値の高い運送サービスを提供していくためには、一定程度の事業規模が必要」と指摘する。
また、業界の課題となっている多重取引構造についても、荷主・大手元請事業者に起因するものではなく「運送業界全体で長年にわたって蓄積されてきたもの」との見方から、業界自身の体質改善を進めることで、官民双方で業界の構造転換に取り組み「業界の健全化を図っていく必要がある」との認識を示す。
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