カーゴニュース 2026年5月14日 第5434号
高市早苗首相が掲げる「労働時間規制の緩和の検討」を巡って、自民党が労働基準監督署の指導の運用見直しを提言するなど動向が注目されている。トラックドライバーには2024年4月から、「年960時間」を上限とする時間外労働規制が適用されたが、労働時間の短縮が売り上げの減少やドライバーの手取りの減少と離職につながっているとの報告もあり、企業からは規制の見直しに期待する声も聞こえてくる。一方で、働く時間を増やしたいというドライバーは少ないとの調査結果もあり、企業とドライバーの意識ギャップもうかがえる。
「働く時間増やしたい」労働者は1割
厚生労働省がこのほど発表した「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の調査結果によると、「運輸業、郵便業」の労働者は、労働時間について「このままでよい」が59・7%と6割を占めた。「減らしたい」(13・4%)と「やや減らしたい」(16・4%)も依然として3割近くに達する。これに対し、「増やしたい」(3・7%)と「やや増やしたい」(6・7%)は合計で1割程度しかなく、もっと働きたいという意向は読み取りにくかった。
企業ヒアリング調査では、「人材確保の観点からも労働時間が長いと求職者から敬遠される」として時間外労働規制の現状維持に肯定的な意見がある一方、「ドライバーからも『もっと稼ぐために働きたい』という声が上がっている」「募集しても労働者が集まらず、若くて健康で働きたい労働者には上限規制の枠を超えてもっと働いてもらいたい」など見直しへの期待もうかがえる。
「年960時間以内」、5割弱が対応困難
人手不足が深刻な中小企業は、労働時間規制の見直しへの要望が強い。東京商工会議所が12月に公表した「働き方改革に関する緊急アンケート調査」によると、働き方改革の見直しが必要との意見は6割超にのぼる。時間外労働上限規制で事業運営に「支障が生じている」企業は運輸業で(54・7%)と5割を超えた。また、「年間の時間外労働の合計が960時間以内」について対応が困難とする割合は48・3%と半数近くを占める。
働き方改革に伴う悪影響として、「長距離輸送や時間のかかる作業の依頼を自ら断る事態になっており、売り上げ減少につながっている」などが挙げられた。時間外労働規制について、「物流事業は労働集約型産業のため、拘束時間が長い。従業員数や人的リソースの多さが事業の成否を左右するため、事業の特性や重要性を考慮した制度設計をしてほしい」と見直しを希望する意見も寄せられた。
ドライバーの6割は規制に「不安なし」
昨年5月に発表された、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「時間外労働960時間規制に対するトラックドライバーの意識調査」では、24年4月以降のドライバーの労働時間は「減少した」(47%)、「変わらない」(45%)、「増加した」(9%)の順に多い回答だった。80時間以上の時間外労働を行っているドライバーは12%で、規制前の27%と比べ、時間外労働は大きく改善していることがわかる。
規制前に感じていた不安が規制後どうなったかについては、「収入が減った」(24%)という回答があったものの、全体の63%は「不安はなかった」と回答していた。規制前に感じていた期待が規制後どうなったかの回答では、「余暇の時間が増えた」(34%)と「積み込み先や届け先での待ち時間や荷役時間が短くなった」(32%)が多い。企業よりも、ドライバーの方が規制についてポジティブに受け止めていることが考えられる。
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